ライティング講座(照明講座)
照明計画資料
スポーツ照明 - スキー・スノーボード場照明
ゲレンデ照明においてはスキーヤー及びスノーボーダー同士の衝突を防ぐ明るさを確保するだけではなく、雪面の凹凸を発見しやすいように適度な影を作ることも重要です。ジャンプ競技場照明においては、競技者が安全で快適な視環境のもとで競技を行えるだけではなく、競技者の動作が審判員や客席からよく見えるように照明計画をすることが重要です。リフト照明においては、監視者より利用者の姿が確認できる十分な照度を確保することが重要です。
(1)ゲレンデ及びラングラウフコースの照明
1.1 照明範囲
照明範囲は、ゲレンデ及びラングラウフコースにおける照明計画区域全体とします(リフトなどの輸送に関する場所は除きます)。ちなみに、ラングラウフコースとは、スキー複合競技における距離競技のコースのことです。
1.2 照明要件
ゲレンデ及びラングラウフコースの推奨照度、照度均斉度、グレア制限値などの照明要件は、運動競技区分ごとに決定します(表6.20)。
| 区域 | 運動競技の区分 | 推奨照度 (ℓx) |
照度均斉度 (Min/Ave) |
グレア制限値 GRL注2 |
平均演色評価数 Ra |
計算間隔 (m) |
測定間隔 (m) |
基準面の高さ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ゲレンデ | Ⅲ注1 | 20 | 0.2 | 55 | - | - | - | 雪面 |
| ラングラウフコース | Ⅲ注1 | 10 | 0.1 |
- 注1 観客のいない特定地域の運動競技会。学校体育又はレクリエーション活動。一般のトレーニング。
- 注2 GRLは、「JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法」に基づきRGLと表記されることもあります。
(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))
1.3 照明方式及び照明器具の配置
照明方式は投光照明方式とします。原則と追跡照明とし、照明器具は図6.19に示すように、片側配置、千鳥配置、向合せ配置、又はそれらを組合せた配置とします。また、利用者の衝突を避けるため、曲線部では内側に配置することが望ましいとされています。
片側配置
千鳥配置
向合せ配置
曲線部の配置
- 備考:図内の●印は、照明器具の設置位置
図6.19 照明器具の配置例
1.4 照明器具の取付高さ及び取付間隔
照明器具の取付高さ及び取付間隔は、図6.19に示した照明計画幅\( W \)によって決定します(表6.21参照)。また取付間隔は器具の取付高さより決定します。
| 配置 | 取付高さ(m) | 取付間隔(m) |
|---|---|---|
| 片側配置、千鳥配置 | \( H \geqq W/5 \) | \( S \leqq 10H \) |
| コーナー配置 | \( H \geqq W/10 \) |
- \( H \)
- 最下段の照明器具の雪面上の取付高さ m
- \( W \)
- 照明計画幅 m
- \( S \)
- 照明器具の取付間隔 m
(参考文献 JIS Z 9124:スキー場及びアイススケート場の照明基準(1992))
1.5 照明器具の選定
主に投光器を使用し、照明器具を設置する場所1か所当たりの灯数によって配光の種類を選定します。灯数が3灯以下の場合は、主に広角形を選定します。4灯以上12灯以下の場合は、中角形の投光器を選定します。13灯以上の場合は、狭角形を選定します(表6.22参照)。
| 照明器具設置場所1か所当たりの灯数 | 3灯以下 | 4灯以上12灯以下 | 13灯以上 | |
|---|---|---|---|---|
| 配光の種類 | 狭角形 | ○ | ○ | ● |
| 中角形 | ○ | ● | ○ | |
| 広角形 | ● | ○ | ○ | |
- 備考 ●:主に用いるもの。○:必要に応じて用いるもの。
(参考文献 JIS Z 9124:スキー場及びアイススケート場の照明基準(1992))
(2)ジャンプ競技場照明
2.1 照明範囲
照明範囲は、アプローチ、カンテ、ランディングバーン及びブレーキングトラックとします。
2.2 照明要件
ジャンプ競技の推奨照度、照度均斉度、グレア制限値などの照明要件は、運動競技区分ごとに決定します(表6.23)。またテレビジョン撮影を行う場合は、表6.3の照明要件も満たすことが必要です。
| カメラを通して見た場合の被写体の速度 | |||
|---|---|---|---|
| 比較的緩やか注1 | 中程度の速度注2 | 比較的速い注3 | |
| 撮影距離 25m | 500ℓx | 700ℓx | 1000ℓx |
| 撮影距離 75m | 700ℓx | 1000ℓx | 1400ℓx |
| 撮影距離 150m | 1000ℓx | 1400ℓx | - |
(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))
- 注1 比較的緩やかに動く競技:
ビリヤード、ダーツ、射的、スヌーカー、ボウリング、アーチェリー、体操、馬術、水泳、カーリングなど - 注2 中程度の速度で動く競技:
野球、ソフトボール、ホッケー、バレーボール、バスケットボール、テニス、サッカー、ラグビー、フットボール、ハンドボール、バドミントン、ローラースケート、競馬、競輪、自転車競技、ドッグレース、フィギュアスケート、スピードスケート、ボブスレー、リュージュ、スキー・ジャンプ、スキー・スノーボード、柔道、空手、レスリングなど - 注3 比較的動きの速い競技:
ラクロス、卓球、ラケットボール、スカッシュ、クリケット、アイスホッケー、フェンシング、ボクシングなど
| 区域 | 運動競技の区分 | 推奨照度 (ℓx) |
照度均斉度 (Min/Ave) |
グレア制限値 GRL注4 |
平均演色評価数 Ra |
計算間隔 (m) |
測定間隔 (m) |
基準面の高さ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| アプローチ | Ⅰ注1 | 200 | 0.5 | 50 | 60 | - | - | 滑走面 |
| Ⅱ注2 | 100 | 0.4 | ||||||
| Ⅲ注3 | 50 | 0.3 | - | |||||
| カンテ、ランディングバーン | Ⅰ注1 | 300 | 0.5 | 50 | 60 | |||
| Ⅱ注2 | 200 | 0.4 | ||||||
| Ⅲ注3 | 0.3 | - | ||||||
| ブレーキングトラック | Ⅰ注1 | 200 | 0.5 | 50 | 60 | |||
| Ⅱ注2 | 100 | 0.4 | ||||||
| Ⅲ注3 | 50 | 0.3 | - |
- 注1 観客のいる国際、国内、地域全体又は特定地域における最高水準の運動競技会。最高水準のトレーニング。
- 注2 観客のいる地域全体又は特定地域における一般的な運動競技会。高水準のトレーニング。
- 注3 観客のいない特定地域の運動競技会。学校体育又はレクリエーション活動。一般のトレーニング。
- 注4 GRLは、「JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法」に基づきRGLと表記されることもあります。
(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))
2.3 照明方式及び照明器具の配置
照明方式は競技区域により表6.24に基づいて設定します。
| 区域 | 照明方式 |
|---|---|
| アプローチ | 投光照明方式又は道路照明方式 |
| カンテ、ランディングバーン、ブレーキングトラック | 投光照明方式(追跡照明) |
(参考文献 JIS Z 9124:スキー場及びアイススケート場の照明基準(1992))
照明器具は、図6.20に示すように、競技面に沿って両側に配置します。
図6.20 照明器具の配置例
2.4 照明器具の取付高さ及び取付間隔
照明器具の取付高さ及び取付間隔は、競技区域によって設定します(表6.25参照)。
| 区域 | 取付高さ | 取付間隔 |
|---|---|---|
| アプローチ | 雪面上6m以上 | 取付高さの3倍以上 |
| カンテ、ランディングバーン、ブレーキングトラック | 雪面上12m以上 |
(参考文献 JIS Z 9124:スキー場及びアイススケート場の照明基準(1992))
2.5 照明器具の選定
使用する照明器具は、原則、投光器とし、運動区域によって配光を決定します。アプローチの場合は、主に広角形を選定します。カンテ、ランディングバーン、ブレーキングトラックの場合は、主に中角形の投光器を選定します(表6.26参照)。ただし、アプローチについては幅員に合った配光の照明器具を選択します。
| 区域 | アプローチ | カンテ、ランディングバーン、ブレーキングトラック | |
|---|---|---|---|
| 配光の種類 | 狭角形 | - | ○ |
| 中角形 | ○ | ● | |
| 広角形 | ● | - | |
- 備考 ●:主に用いるもの。○:必要に応じて用いるもの。
(参考文献 JIS Z 9124:スキー場及びアイススケート場の照明基準(1992))
(3)リフト線路の照明
3.1照明範囲
照明範囲は、リフトの監視者が搬器を見た場合における視線方向の空間とします。
3.2 照明要件
搬器の高さにおける監視者から見た鉛直面照度とし、その基準については、所轄の運輸局の通達に従った値を満足するようにします。
| 監視者からの距離(m) | 所要鉛直面照度(ℓx) |
|---|---|
| 100まで | 10 |
| 150まで | 15 |
| 200まで | 30 |
| 250まで | 45 |
| 300まで | 70 |
3.3 照明方式及び照明器具の配置
図6.21 照明器具の配置例
照明方式は投光照明方式とし、監視方向の鉛直面照度を確保するため、追跡照明とします。照明器具の配置は図6.21に示すようにリフト線路に沿って片側に配置します。
備考:図内の●印は、照明器具の設置位置
3.4 照明器具の取付高さ及び取付間隔
搬器の高さにおける鉛直面照度を確保するため、搬器と同程度の高さに取付けます。
3.5 照明器具の選定
投光器とし、一般的には狭角形の配光を有するものを使用します。
(2025年4月25日入稿)
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