ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

スポーツ照明 - 屋内水泳プール照明

水泳プール照明は利用者が快適な視環境のもとで施設を利用することができるだけでなく、水中とプールサイドの安全管理にも十分に配慮した照明計画をする必要があります。水中の見え方を確保するためには、水面への光の入射角を小さくし、水面での光幕反射を極力軽減することが重要となります。光源は人の肌色が忠実に見えるように、演色性の高い光源を選定することが望まれます。また、照明器具においては常に高湿度環境にあるため防湿性や、耐食性に富んだものを使用する必要があります。

(1)照明範囲

フェンス(壁)又は観客席などで囲まれたプールサイドを含むプール全体とします。

(2)照明要件

屋内水泳プールの推奨照度、照度均斉度、グレア制限値、平均演色評価数などの照明要件は、運動競技区分ごとに決定します(表6.17)。またテレビジョン撮影を行う場合は、表6.3の照明要件も満たすことが必要です。

表6.3 撮影のための照度(S/N比 50dB 及び標準的なカメラ)
  カメラを通して見た場合の被写体の速度
比較的緩やか注1 中程度の速度注2 比較的速い注3
撮影距離 25m 500ℓx 700ℓx 1000ℓx
撮影距離 75m 700ℓx 1000ℓx 1400ℓx
撮影距離 150m 1000ℓx 1400ℓx -

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

  • 注1 比較的緩やかに動く競技:
    ビリヤード、ダーツ、射的、スヌーカー、ボウリング、アーチェリー、体操、馬術、水泳、カーリングなど
  • 注2 中程度の速度で動く競技:
    野球、ソフトボール、ホッケー、バレーボール、バスケットボール、テニス、サッカー、ラグビー、フットボール、ハンドボール、バドミントン、ローラースケート、競馬、競輪、自転車競技、ドッグレース、フィギュアスケート、スピードスケート、ボブスレー、リュージュ、スキー・ジャンプ、スキー・スノーボード、柔道、空手、レスリングなど
  • 注3 比較的動きの速い競技:
    ラクロス、卓球、ラケットボール、スカッシュ、クリケット、アイスホッケー、フェンシング、ボクシングなど
表6.17 屋内水泳プールの照明要件
運動競技の区分 推奨照度
(ℓx)
照度均斉度
(Min/Ave)
グレア制限値
GRL注4
平均演色評価数
Ra
計算間隔
(m)
測定間隔
(m)
基準面の高さ
注1 750 0.5 - 60 2.5×2.5 5×5 水面
注2 500 0.5
注3 200 0.4 -
  • 注1 観客のいる国際、国内、地域全体又は特定地域における最高水準の運動競技会。最高水準のトレーニング。
  • 注2 観客のいる地域全体又は特定地域における一般的な運動競技会。高水準のトレーニング。
  • 注3 観客のいない特定地域の運動競技会。学校体育又はレクリエーション活動。一般のトレーニング。
  • 注4 GRLは、「JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法」に基づきRGLと表記されることもあります。

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

(3)照明方式及び照明器具の配置

屋内水泳プールの照明方式及び照明器具の配置を、表6.18に示します。

表6.18 照明方式及び照明器具の配置

直接照明
照明方式 特徴 選定のポイント
分配配置
  • 水平面照度が得やすく、均斉度も優れている反面、鉛直面照度(空間の明るさ)が不足します。
  • 競技面に競技の妨げとなる影が生じにくくなります。
  • 多灯用の集合体を用いれば、混光照明や1/2点灯のような段階点灯が容易に行えます。
  • 上空をよく見上げたときに、突発的に大きなグレアが生じます。

照明器具を一つずつ均等に配置

  • 中小規模の施設
  • 設備費が比較的安い
  • 天井が比較的低い場合、照明器具は広照形が適する
サイド配置
  • 鉛直面照度(空間の明るさ)が得やすく、陰影・立体感の点で優れています。
  • 投光器が競技方向と平行に配置される場合はグレアが少ないが、競技の正面に配置されるとグレアが大きくなります。
  • キャットウォークを利用すれば、施工、保守管理が容易で、キャットウォークの延長距離も短くて済み、天井空間がスッキリとします。

競技面の長辺に沿って照明器具を配置

  • 競技方向が定まっている施設
  • 天井が比較的高い場合
  • カラーTV中継に適する
間接照明
照明方式 特徴 選定のポイント
間接照明
  • 非常にグレアが少なく、競技面に競技の妨げとなる影が生じない手法である反面、陰気で陰影・立体感に乏しい照明となり、距離感覚が不足します。
  • 空間の光の分布に優れ、水平面、鉛直面とも良好な均斉度の照明が得られます。
  • 照明効率が低くなります。

競技面の長辺に沿って照明器具を配置し天井に向けて照射

  • 施設の幅が狭い場合
  • 天井が高い場合
  • 天井に照明器具が取付かない施設(エアーテント、可動式屋根)

照明器具を一つずつ均等に配置し天井に向けて照射

  • 施設の幅が広い場合
  • 天井が低い場合
  • 比較的容易に間接照明ができる
  • 照明器具は、特広照形が適する

(4)照明器具の取付間隔及び投光器の取付高さ

照明器具の取付高さ及び取付間隔は水面における反射グレアを考慮し、表6.19に基づいて設定します。

表6.19 照明器具の取付高さ及び取付間隔
区分 取付高さ 取付間隔 参照
分散配置 - 競技面上で1/2照度角を満足する範囲 図6.17
サイド配置
(直接照明方式)
観客席あり プール端より仰角40°以上 図6.18
観客席なし プール端より仰角30°以上
サイド配置(間接照明方式) 床面から2.3m以上 - -

(参考文献 (公財)日本体育施設協会:スポーツ照明の設計マニュアル(2016))

取付間隔は競技面上で1/2照度角を満足する範囲

図6.17 分散配置における照明器具の取付間隔

  • 備考 図内のθは1/2照度角を示す。
サイド配置(直接照明方式)の照明器具の取付高さ、観客席がある場合は投光器をプール端より仰角40°以上の位置に取付け、観客席がない場合は投光器をプール端より仰角30°以上の位置に取付け

図6.18 照明器具の取付高さ(屋内プールの場合)

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

(5)照明器具の選定

照明器具は、防滴形以上の防水性能をもち、材質仕上げは湿度や塩素などへの防護を施した投光器、高天井用照明、又はこれらを箱体に収納したものとします。

(2025年4月25日入稿)

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