ライティング講座(照明講座)
照明計画資料
スポーツ照明 - 屋外陸上競技場、サッカー場、ラグビー場照明
サッカー場・ラグビー場照明は、競技中に競技面を外れた競技者やボールが極端に見えにくくならないように、競技面周辺部分においても十分な照度を確保することが重要です。また、ゴール前、コーナー部分はプレーにおいて重要な場所であり、競技面全体の均斉度をよくするような照明計画をすることが重要です。
(1)照明範囲
次に示すように競技面全体とします。
- 屋外陸上競技場：走路及びそれに囲まれた範囲(走路の外側に競技施設がある場合は、その競技施設全体を含める)
- サッカー場：タッチラインとゴールラインに囲まれた範囲＋安全領域注)
- ラグビー場：タッチラインとデッドボールラインに囲まれた範囲＋安全領域注)
注) 運動競技面周囲に、運動競技の安全を目的として設けるエリア。運動競技のルールなどで規定されている。
(2)照明要件
推奨照度、照度均斉度、グレア制限値、平均演色評価数などの照明要件は、運動競技区分ごとに決定します(表6.10)。またテレビジョン撮影を行う場合は、表6.3の照明要件も満たすことが必要です。Jリーグで使用する競技場の場合は、(公財)日本サッカー協会発行の「スタジアム規準」などを参考に各照明要件を決めます。
| カメラを通して見た場合の被写体の速度 | |||
|---|---|---|---|
| 比較的緩やか注1 | 中程度の速度注2 | 比較的速い注3 | |
| 撮影距離 25m | 500ℓx | 700ℓx | 1000ℓx |
| 撮影距離 75m | 700ℓx | 1000ℓx | 1400ℓx |
| 撮影距離 150m | 1000ℓx | 1400ℓx | - |
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
- 注1 比較的緩やかに動く競技：
ビリヤード、ダーツ、射的、スヌーカー、ボウリング、アーチェリー、体操、馬術、水泳、カーリングなど - 注2 中程度の速度で動く競技：
野球、ソフトボール、ホッケー、バレーボール、バスケットボール、テニス、サッカー、ラグビー、フットボール、ハンドボール、バドミントン、ローラースケート、競馬、競輪、自転車競技、ドッグレース、フィギュアスケート、スピードスケート、ボブスレー、リュージュ、スキー・ジャンプ、スキー・スノーボード、柔道、空手、レスリングなど - 注3 比較的動きの速い競技：
ラクロス、卓球、ラケットボール、スカッシュ、クリケット、アイスホッケー、フェンシング、ボクシングなど
| 運動競技の区分 | 推奨照度 (ℓx) |
照度均斉度 (Min/Ave) |
グレア制限値 GRL注4 |
平均演色評価数 Ra |
計算間隔 (m) |
測定間隔 (m) |
基準面の高さ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Ⅰ注1 | 500 | 0.7 | 50 | 60 | 5×5 | 10×10 | 地表面 |
| Ⅱ注2 | 200 | 0.5 | |||||
| Ⅲ注3 | 100 | 0.3 | 55 | - |
- 注1 観客のいる国際、国内、地域全体又は特定地域における最高水準の運動競技会。最高水準のトレーニング。
- 注2 観客のいる地域全体又は特定地域における一般的な運動競技会。高水準のトレーニング。
- 注3 観客のいない特定地域の運動競技会。学校体育又はレクリエーション活動。一般のトレーニング。
- 注4 GRLは、「JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法」に基づきRGLと表記されることもあります。
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
(3)照明方式及び照明器具の配置
投光照明方式とし、原則として、表6.11に基づいて設定します。
| 区分 | 照明器具の配置 | 参照 |
|---|---|---|
| 陸上競技場及び兼用競技場 | サイド：8か所配置 | 図6.9 |
| サッカー場 | コーナー：4か所配置 | 図6.10 |
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
図6.9 陸上競技場及び兼用競技場の配置
図6.10 サッカー場の配置(コーナー配置)
- 備考：図内の●印は、照明器具の設置位置
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
お客さまの要望、経済性、現場状況などさまざまな理由により、表6.11の配置とは異なる旧基準(JIS Z 9121：屋外陸上競技場、屋外サッカー及びラグビー場の照明基準)で定められていたサイド配置によって照明設計を行う場合があります。図6.11、図6.12に陸上競技場及び兼用競技場とサッカー専用競技場のサイド配置を示します。
4灯用サイド配置
6灯用サイド配置
図6.11 陸上競技場及び兼用競技場のサイド配置
4灯用サイド配置
6灯用サイド配置
8灯用サイド配置
図6.12 サッカー専用競技場の配置
- 備考：図内の●印は、照明器具の設置位置
(参考文献 旧JIS Z 9121：屋外陸上競技場、屋外サッカー及びラグビー場の照明基準(1997))
(4)照明器具の取付高さ
照明器具の取付高さは、照明配置により異なり図6.13及び図6.14に示す照明器具の間隔\( L \)によって決定します(表6.12参照)。
| 照明配置 | 取付高さ(m) | 参照 |
|---|---|---|
| サイド配置 | \( L_{1} \tan 20^\circ \leqq H \leqq L_{1} \tan 30^\circ \) かつ \( L_{2} \tan 45^\circ \leqq H \leqq L_{2} \tan 75^\circ \) | 図6.13 |
| コーナー配置 | \( L_{1} \tan 20^\circ \leqq H \leqq L_{1} \tan 30^\circ \) かつ \( L_{2} \tan 45^\circ \leqq H \leqq L_{2} \tan 70^\circ \) | 図6.14 |
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
図6.13 照明器具の取付高さ(サイド配置)
- \( L_{1} \)
- 競技面の中心線から最下段の照明器具までの水平距離 m
- \( L_{2} \)
- 競技面の端から最下段の照明器具までの水平距離 m
- \( H \)
- 最下段の照明器具の取付高さ m
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
図6.14 照明器具の取付高さ(コーナー配置)
- \( L_{1} \)
- 競技面の中心線から最下段の照明器具までの水平距離 m
- \( L_{2} \)
- 競技面の端から最下段の照明器具までの水平距離 m
- \( H \)
- 最下段の照明器具の取付高さ m
(参考文献 JIS Z 9127：スポーツ照明基準(2020))
(5)照明器具の選定
主に投光器を用います。配光は運動競技の区分によって選定します。
| 運動競技の区分 | Ⅰ・Ⅱ | Ⅲ | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 照明配置 | サイド | コーナー | サイド | コーナー | |
| 配光の種類 | 狭角形 | ● | ○ | ||
| 中角形 | ● | ○ | ● | ||
| 広角形 | ○ | ● | |||
- 備考 ●：主に用いるもの。○：必要に応じて用いるもの。
(参考文献 (公財)日本体育施設協会：スポーツ照明の設計マニュアル(2016))
(2025年4月25日入稿)
このページに掲載されている情報は、原稿執筆時現在の情報です。ご覧になった時点では、最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。