ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

スポーツ照明 - テニスコート照明

テニスは、コート内だけではなく、ベースラインの後方、サイドラインの側方もプレーに使用します。このことを考慮して、コート内のみならずコート外の範囲にも十分な照度及び均斉度を確保することが重要です。施設が市街地や住宅地に設置されるケースも多いので、その場合、光漏れの少ないテニスコート専用器具を使用するなど、周辺環境を配慮した照明計画をする必要があります。

(1)照明範囲

次に示すように競技面全体とします(図6.2参照)。

テニスコート1面
テニスコートを中心とした16m×36m(運動競技面+安全領域注))
テニスコート2面以上
テニスコートを中心とした16m+Lm×36m(運動競技面+安全領域注))

注) 運動競技面周囲に、運動競技の安全を目的として設けるエリア。運動競技のルールなどで規定されている。

(a)1面コート

(b)2面以上のコート

図6.2 照明範囲

(参考文献 (公財)日本体育施設協会:スポーツ照明の設計マニュアル(2016))

(2)照明要件

テニスコートの推奨照度、照度均斉度、グレア制限値、平均演色評価数などの照明要件は、運動競技区分ごとに決定します。またテレビジョン撮影を行う場合は、表6.3の照明要件も満たすことが必要です。

表6.3 撮影のための照度(S/N比 50dB 及び標準的なカメラ)
  カメラを通して見た場合の被写体の速度
比較的緩やか注1 中程度の速度注2 比較的速い注3
撮影距離 25m 500ℓx 700ℓx 1000ℓx
撮影距離 75m 700ℓx 1000ℓx 1400ℓx
撮影距離 150m 1000ℓx 1400ℓx -

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

  • 注1 比較的緩やかに動く競技:
    ビリヤード、ダーツ、射的、スヌーカー、ボウリング、アーチェリー、体操、馬術、水泳、カーリングなど
  • 注2 中程度の速度で動く競技:
    野球、ソフトボール、ホッケー、バレーボール、バスケットボール、テニス、サッカー、ラグビー、フットボール、ハンドボール、バドミントン、ローラースケート、競馬、競輪、自転車競技、ドッグレース、フィギュアスケート、スピードスケート、ボブスレー、リュージュ、スキー・ジャンプ、スキー・スノーボード、柔道、空手、レスリングなど
  • 注3 比較的動きの速い競技:
    ラクロス、卓球、ラケットボール、スカッシュ、クリケット、アイスホッケー、フェンシング、ボクシングなど
表6.4 屋外テニスの照明要件
運動競技の区分 推奨照度
(ℓx)
照度均斉度
(Min/Ave)
グレア制限値
GRL注4
平均演色評価数
Ra
計算間隔
(m)
測定間隔
(m)
基準面の高さ
注1 500 0.7 50 60 2×2 4×4 地表面
注2 300 0.6
注3 200 0.5 55 -
  • 注1 観客のいる国際、国内、地域全体又は特定地域における最高水準の運動競技会。最高水準のトレーニング。
  • 注2 観客のいる地域全体又は特定地域における一般的な運動競技会。高水準のトレーニング。
  • 注3 観客のいない特定地域の運動競技会。学校体育又はレクリエーション活動。一般のトレーニング。
  • 注4 GRLは、「JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法」に基づきRGLと表記されることもあります。

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

(3)照明方式及び照明器具の配置

テニスコートには主に投光照明方式を採用します。一般的な照明器具の配置を示します。

(a)1面コート

テニスコートのサイドライン側方に2台ずつ設置。4基配置の場合は2台の間隔は12〜30m、6基配置の場合は2台をそれぞれテニスコートのネットから10〜15mの位置に配置。

(b)2面コート

コートが並ばない側のサイドライン側方に2台ずつ設置。4基配置の場合は2台の間隔は12〜30m、6基配置の場合は2台をそれぞれテニスコートのネットから10〜15mの位置に配置。

(c)3面コート

3面並びのテニスコート両端のコートが並ばない側のサイドライン側方に2台ずつ設置。4基配置の場合は2台の間隔は12〜30m、6基配置の場合は2台をそれぞれテニスコートのネットから10〜15mの位置に配置。

(d)4面コート以上並列に連続するコート

コート2面ごとのベースライン後方に設置。

(e)2面コートが縦に連続するコート

コートが並ばない側のサイドライン側方、縦に並ぶコートとの中間に設置。

(f)テレビジョン撮影を行うコート

テニスコートのサイドライン側方に2台ずつ設置。4基配置の場合は2台の間隔は50m以上、6基配置の場合は2台をそれぞれテニスコートのネットから25m以上の位置に配置。

備考:図内の●印は、照明器具の設置位置。

図6.3 照明器具の配置

(参考文献 (公財)日本体育施設協会:スポーツ照明の設計マニュアル(2016))

(4)照明器具の取付高さ

照明器具の取付高さは、図6.4に示す照明器具の間隔Lによって決定します。運動競技区分Ⅰ・Ⅱは12m、運動競技区分Ⅲの場合は8mを下回らないようにします(表6.5参照)。ただし、テニスコート専用器具は低い取付高さに最適化された配光を備えており、8m未満の高さでも使用できます。また、景観への影響が少ない、周辺への漏れ光を軽減できる、などのメリットがあり、市街地などのテニスコートに適しています。

表6.5 照明器具の取付高さ
運動競技の区分 取付高さ(m) 最低取付高さ(m) 参照
H17+Ltan25 12 図6.4
H23+Ltan25 8
  • H1H2:最下段の照明器具の取付高さ(m) L:競技面の中心線から照明器具までの水平距離(m)

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

(a)横断図(2面コートの例)

運動競技区分Ⅰ、Ⅱの場合、テニスコートの側方にある照明柱から照明範囲の中心へ照射する光の高さは7m。運動競技区分Ⅲの場合、同位置の照明柱から照明範囲の中心へ照射する光の高さは3m。

(b)サイドラインと平行に配置する場合

2面コートの中心線と照明器具までの水平距離Lの位置を示す。

(c)ベースライン後方のコート間に配置する場合

2面コートの中心線とコートの縦中心の位置を基準とした照明器具までの水平距離Lの位置を示す。

(d)テレビジョン撮影を行う場合

コートの中心点を基準とし、この点を中心点とした点対照の位置に設置した照明器具までの水平距離Lの位置を示す。

図6.4 照明器具の取付高さ

(参考文献 (a)JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020)、(b)(c)(d)(公財)日本体育施設協会:スポーツ照明の設計マニュアル(2016))

(5)照明器具の選定

主に投光器を用います。配光は運動競技の区分によって選定します。

表6.6 投光器の選定
運動競技の区分
面数 1面 2面以上 1面 2面以上 1面 2面以上
配光種類 狭角形 - -
中角形
広角形 -
  • 備考 ●:主に用いるもの。 ○:必要に応じて用いるもの。

(参考文献 (公財)日本体育施設協会:スポーツ照明の設計マニュアル(2016))

(2025年4月25日入稿)

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