ライティング講座(照明講座)

照明計画資料

スポーツ照明 - 照明計画上の留意事項

(1)テレビジョン撮影のための照明

テレビジョンカメラで良質な画像を撮影するには、高い照明環境が要求されます。照明環境の性能は、平均空間照度、空間照度の最大値に対する最小値の割合、相関色温度、平均演色評価数、観客席の照度などによって評価することができます。これらの事柄は、スポーツの種類や競技レベルに関わらず、テレビジョン撮影を行う場合に必要となります。

1.1 撮影のための照度

テレビジョン撮影を行う場合の照度は、表6.3に示す空間照度となります。

表6.3 撮影のための照度(S/N比 50dB 及び標準的なカメラ)
  カメラを通して見た場合の被写体の速度
比較的緩やか注1 中程度の速度注2 比較的速い注3
撮影距離 25m 500ℓx 700ℓx 1000ℓx
撮影距離 75m 700ℓx 1000ℓx 1400ℓx
撮影距離 150m 1000ℓx 1400ℓx -

(参考文献 JIS Z 9127:スポーツ照明基準(2020))

  • ※注1 比較的緩やかに動く競技:
    ビリヤード、ダーツ、射的、スヌーカー、ボウリング、アーチェリー、体操、馬術、水泳、カーリングなど
  • ※注2 中程度の速度で動く競技:
    野球、ソフトボール、ホッケー、バレーボール、バスケットボール、テニス、サッカー、ラグビー、フットボール、ハンドボール、バドミントン、ローラースケート、競馬、競輪、自転車競技、ドッグレース、フィギュアスケート、スピードスケート、ボブスレー、リュージュ、スキー・ジャンプ、スキー・スノーボード、柔道、空手、レスリングなど
  • ※注3 比較的動きの速い競技:
    ラクロス、卓球、ラケットボール、スカッシュ、クリケット、アイスホッケー、フェンシング、ボクシングなど

なお、空間照度は、水平面から垂直に立つ円筒面や平面における照度で、円筒面照度や半円筒面照度は互いに直交する鉛直面照度の4方向の値などから求めることができます。半円筒面照度は、特定方向から見る場合の円筒状の表面(人の顔など)の照度を規定する場合に用いられ、鉛直面照度は、特定方向から見る場合の鉛直な面の照度を規定する場合に用いられます。

1.2 最大照度に対する最小照度の割合

基準面の水平面照度及び空間照度の最大照度に対する最小照度の割合は、次に示す範囲を満たすことが必要です。また、水平面照度の勾配は、5m当たり25%を超えてはいけません。

水平面照度
\( E_{h,min}/E_{h,max} \geqq 0.5 \)
空間照度
\( E_{sp,min}/E_{sp,max} \geqq 0.3 \)

1.3 相関色温度

光源の光色は、特別な理由のない場合には温白色、白色、昼白色、昼光色又は色度がこれらの間にある光色とします。昼光及び人工光を併用する場合には、昼光と調和する白色、昼白色、昼光又は色度がこれらの光色の間にある光色とします。

1.4 平均演色評価数Ra

平均演色評価数Raが80以上の光源もしくは照明器具を選択します。

1.5 4K・8K放送への対応

ハイビジョン放送よりも鮮やかな色まで再現できる広色域4K・8K放送に配慮する場合は、色の見え方の指標である平均演色評価数Raが90以上かつ、赤色の特殊演色評価数R9が80以上の光源もしくは照明器具を選択し、色再現性を高めることが必要です。

(参考文献 (一社)電波産業会 技術資料 ARIB TR-B40 1.1版(2018))

1.6 観客席の照度

映像又は画像の背景となり得る観客席の空間照度は、基準面における平均空間照度の25%以上とします。

(2)昼光利用

屋内スポーツ施設における昼光利用は、省エネルギーの観点から重要ですが、その取扱いには特別な配慮が必要です。

2.1 昼光利用の問題点

  • 昼光による照度は、季節・時間・天候条件などにより変化するため、安定した照明環境(照度均斉度、視野内の輝度分布など)が得られない
  • 昼間時に採光窓がグレアの原因となることがある
  • 夜間時に採光窓がブラックホールとなり、視対象の見え方が低下する場合がある

2.2 昼光の利用方法

  • 昼光利用は、レクリエーションなどで使用する競技施設を対象とし、公式競技には採用を控える
  • 昼光利用を採用した施設では、必要に応じてカーテンやブラインドなどで遮光できるようにする
  • 太陽の直接光が入射しないように配慮する
  • 外景や高輝度の窓面が見えないようにする。競技正面の壁には、窓を設置しない
  • 昼光は、天窓北側採光が適している。この場合も天窓には、拡散ガラスやルーバなどにより十分に遮光することが重要
  • エアーテントなどの天井面が一様に輝く採光は望ましいが、梁などで明暗の格子模様をつくることは避ける必要がある
  • 夜間時の対策として、天井面を照明する必要がある

(3)周囲環境への影響

屋外スポーツ照明からの漏れ光が周囲環境に及ぼす影響が問題となる場合があります。スポーツ照明は、空間の照明であることから、漏れ光を制限することは非常に困難ですが、次のような対策が考えられます。また地域住民と十分な対話をすることが大切になります。

漏れ光軽減策

  • 樹木・フェンス・観客席などで競技面を囲う
  • 競技場周囲にオープンスペースを設け、公園や駐車場として利用する
  • 照明塔の位置をよく吟味し、影響を及ぼす可能性がある照明器具にフードやルーバを設ける
  • 比較的漏れ光の少ない照明器具を採用する

(4)保守管理

保守管理は、照明効果(照度)の低下及び照明設備そのものの短寿命化を防ぐために重要です。設計の段階から、保守計画を立て点検が容易に行える設備とすることが大切です。

保守管理計画時に留意すべき事項

  • 清掃間隔を設定する。一般に電気設備のチェックと一緒に行う
  • 保守が容易に行える構造の照明設備を、保守が容易に行える位置に設置する
  • 汚れにくい器具、清掃が簡単な器具を採用するとともに、耐食性に富む部材の採用又は処理を施す

8年経過以降照明器具の故障率は上昇し、10年を過ぎた照明器具は外観では判断できない内部の劣化も進行するため、更新の予算化をすることも大切になります。

(5)照明塔

屋外スポーツ照明に使用されるものとしては、下記のものがあります。

  • 耐候性鋼材(錆安定化促進処理)
  • 鋼管(溶融亜鉛めっき仕上げ、又は塗装仕上げ)
  • コンクリートポール

検討すべき事項としては、下記の点があげられます。

  • 照明器具取付台数
  • 照明器具の取付高さ
  • 経済性
  • デザイン性
  • 建柱場所の制約(スペース、地盤の状況)

(2025年4月25日入稿)

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