照明器具の耐塩害

屋外照明器具の耐塩害性能

屋外用の器具は、通常の使用に耐えうる耐食性を有していますが、特殊な環境で使用する場合は、短期間での発錆など不具合発生の可能性が高くなります。屋外用の器具では一部の機種に「耐塩形」「重耐塩形」を設けています。特に記載のない器具は、以下のガイドにおける耐塩害レベル(重耐塩・耐塩)を適用する地域では使用できないので、別途ご相談ください。

照明器具及び照明用ポールの耐塩害に関するガイド
〈(一社)日本照明工業会ガイド117:2010抜粋〉

目的

近年、港湾施設の整備や海浜公園の拡大などに伴い、塩害が予想される海岸付近に設置される照明施設が増大しています。これら塩害が予想される地域に設置される照明器具、照明用ポール(照明用ポールには「アーム」も含む。以下同様)について十分な対策を示す指針がなく、塩害による腐食に起因するトラブルが増加し、一般的な防錆対策以上の表面処理、材料指定などが必要となってきています。このガイドは、塩害の影響を受ける地域に設置する照明施設に対して、適切な防錆処理が施されるよう基本的な使用材料及び表面処理を規定するとともに、施工及び維持管理の要点を示し、耐塩害技術の向上に資することを目的としています。

適用範囲

このガイドは、塩害の影響を受ける地域に設置される照明器具及び照明用ポールの耐塩害に関する事項を規定しています。照明器具及び照明用ポールの防食は、重工業地帯での腐食性ガス、冬季に使用される融雪剤及び凍結防止剤などについても十分な検討が必要ですが、このガイドでは海岸地域での耐塩害についてのみ考慮しています。

なお、海水中に没して使用するもの、常時海水がかかる場所に設置するもの、その他の水中照明器具、地中埋込み形照明器具、トンネル照明器具などは、このガイドの適用範囲外とします。

耐塩害レベル

耐塩害レベルは次の2段階とします。

  1. 重耐塩:常時、飛来塩分が高濃度の地域に求められる耐塩害レベル
  2. 耐塩 :常時、飛来塩分があり、気象条件により高濃度になることのある地域に求められる耐塩害レベル

それぞれのレベルを適用する地域は、海岸からの距離で単純に線引きできるものではありません。飛来塩分は、海岸線の状況(外海、内海、港湾、砂浜など)、海抜などにより複雑に影響を受けるため、地域特性によりレベルを判断せざるを得ません。既存の周辺諸設備の発錆状況などを考慮して、受渡当事者間で協議、決定することを推奨します。

使用材料と表面処理

  • 使用する照明器具及び照明用ポールの材料に対する表面処理は、[表1]に示す塗料記号A~Gの中から塗料の特性を考慮して、適切なものを選定してください。
  • 塩害を受けると予想される地域に使用する照明器具、照明用ポールの材料及びその表面処理は、設置される地域で要求される耐塩害レベルに従って[表2]及び[表3]から選定してください。
  • [表2]及び[表3]に示す表面処理は、密閉タイプの照明器具は外郭用、照明用ポールは外面用の塗装に用います。
  • 表面処理の特性をいかすには、下地処理の影響が大きく、[表2]及び[表3]に示す塗料の耐塩害レベルに対応した特性を得るには、その塗料に適した下地処理を施す必要があります。
  • [表1]に示された塗料は、膜厚及び塗り回数により耐塩害レベルに大きく影響する場合があります。[表2]及び[表3]に素材別に推奨する塗装仕様を記載しましたが、実使用環境下で要求される耐塩害レベルに合わせて受渡当事者間で決定することが望まれます。

岩崎電気製品の塗装につきましては、下記、工業会ガイド及び当社塗装基準に基づき対応しています。

[表1]耐塩塗料特性表
塗料記号 塗料名 塗装方法 対象 耐塩性 白亜化 光沢保持性 塗膜硬度 コスト ポール塗り替え年数
照明器具 ポール
A アクリル樹脂系塗料 焼付 適用可 適用可 7~10年
B ウレタン樹脂系塗料 焼付 適用可 適用可 7~10年
常乾 - 適用可 7~10年
C ポリエステル樹脂系塗料 焼付 適用可 適用可 7~10年
D エポキシ変性メラミン樹脂系塗料 焼付 適用可 - -
E フッ素樹脂系塗料 焼付 適用可 適用可 特優 特優 特優 15~20年
常乾 - 適用可 特優 特優 特優 15~20年
F アクリルシリコン樹脂系塗料 焼付 適用可 適用可 特優 7~10年
常乾 - 適用可 7~10年
G フタル酸樹脂系塗料 常乾 - 適用可 3~5年
[表2]照明器具の材料及び表面処理
耐塩害レベル 照明器具材料 表面処理([表1]の塗料記号) 備考
重耐塩 SUS304 A・B・C・E又はF 溶剤系塗料の場合は、2回焼付塗装を推奨する
アルミ合金 ADC・AC A・B・C・E又はF 溶剤系塗料の場合は、2回焼付塗装を推奨する
板・形材など A・B・C・E又はF 溶剤系塗料の場合は、2回焼付塗装を推奨する
鋼材 溶融亜鉛めっき後A・B・C・E又はF
溶融亜鉛めっき より高い防錆性能を要求される場所には溶融亜鉛めっき後、塗装を推奨する
耐塩 SUS304又はSUS430 A・B・C・D・E又はF
アルミ合金 ADC・AC A・B・C・E又はF
板・形材など A・B・C・D・E又はF
皮膜処理材 無塗装 アルマイト処理又は同等以上のコーティング
鋼材 処理鋼材 A・B・C・D・E又はF 亜鉛めっき鋼板又は同等以上のコーティング
鋼材 溶融亜鉛めっき後A・B・C・D・E又はF
溶融亜鉛めっき より高い防錆性能を要求される場所には溶融亜鉛めっき後、塗装を推奨する
鋼板 A・B・C・D・E又はF 溶剤系塗料の場合は、2回焼付塗装とする
[表3]照明用ポールの材料及び表面処理
耐塩害レベル ポール材料 表面処理([表1]の塗料記号) 備考
重耐塩 SUS316又はSUS304 A・B・C・E又はF より高い防錆性能を要求される場所にはSUS316を推奨する
アルミ合金 A・B・C・E又はF
鋼材1) 溶融亜鉛めっき後A・B・C・E又はF
耐塩 SUS304 A・B・C・E又はF
アルミ合金 A・B・C・E又はF
鋼材1) 溶融亜鉛めっき後A・B・C・E・F又はG
溶融亜鉛めっき より高い防錆性能を要求される場所には溶融亜鉛めっき後、塗装を推奨する

施工及び維持管理方法について

  1. 海に隣接した地域で、高架下などの雨水のかからない場所に設置する場合は、付着した塩水飛まつが雨水により洗い流されないため、腐食が促進される場合があります。定期的な清掃により塩分の洗い流し作業を行ってください。
  2. 照明用ポールの地際部は腐食しやすいため、基礎を地表に必ず出し、勾配をつけるなど水切り対策を施してください。
  3. 輸送、施工又は使用中に付いたきずは、速やかに補修塗装を行ってください。
  4. 照明用ポール基礎のコンクリート骨材中に塩分が含まれていないよう配慮してください。
  5. 定期的に点検を行い、塩害による劣化がないか確認してください。劣化がある場合には、劣化の状態に応じて補修・交換してください。

その他塩害に対する留意点

  1. 開放タイプの照明器具では、塩分の付着による絶縁低下に対する処置を考慮してください。
  2. 密閉タイプの照明器具では、ランプ交換、清掃などメンテナンスの際に開閉する部分のパッキンの材質は、耐候性を考慮したものを選定してください。
  3. 塩害地域で、かつ、重工業地帯と重なる場所は、耐薬品性なども考慮してください。
  4. 接合部に使用するボルト類は、溶融亜鉛めっきボルト又はSUS304以上のものを使用してください。

塩害地域について

塩害地域の範囲と照明器具の選定

「塩害地域」の範囲は[表1]を目安としてください。
「塩害地域」に含まれる場所では「耐塩形」又は「重耐塩形」の照明器具を選定してください。ただし、気象条件や地形により、「塩害地域」に該当する範囲は拡大することがあります。

[表1]飛来塩分の影響地域
地域区分 飛来塩分量が鋼の腐食に影響を与えると考えられる地域
日本海沿岸部 海岸線から20km以内
海岸線から5km以内
太平洋沿岸部 海岸線から2km以内
瀬戸内海沿岸部 海岸線から1km以内
沖縄 全地域

(JIL1001-2009 照明用テーパーポール(鋼製)解説より抜粋)

  1. [表1]に示される範囲は「塩害地域」です。「耐塩形」又は「重耐塩形」の照明器具を使用してください。
  2. 上記の範囲内で、海岸線から300m以内の範囲では特に飛来塩分量が多いため、「重耐塩形」の照明器具を使用してください。
  3. 海岸線から300m以上離れていても、軒下など雨が当たらない場所では付着した塩分が洗い流されず、腐食が進むことがあります。「重耐塩形」の照明器具を使用してください。
  4. プール、温泉、工業地帯などの特殊な腐食環境や、砂じんによる細かいきずが付くような環境では、「重耐塩形」の照明器具でも腐食が進む場合がありますのでご注意ください。
  5. 豪雪地帯など融雪剤を使用する地域では「耐塩形」又は「重耐塩形」の照明器具を使用してください。
注意
塩害地域では、耐塩形又は重耐塩形の照明器具を使用してください。塩害地域で一般形の照明器具を使用した場合、短期間でさびや腐食が発生します。さびや腐食から塗装の剥がれが発生し、器具の落下、器具内浸水(故障)の原因となります。
器具の設置後は定期的に点検を行い、塩害による劣化がないか確認してください。劣化がある場合には、劣化の状態に応じて補修・交換してください。