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施設報告

八戸市屋内スケート場建設事業新築工事(YSアリーナ八戸) - 国際競技対応スピードスケートリンク納入施設例 -

照明事業部 営業技術部 仙台技術課
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キーワード

長根公園,長根屋内スケート場,YSアリーナ八戸,世界水準,国際競技,地域防災拠点,多目的施設,LEDioc FLOOD DUELL

3.照明制御

図15 アリーナ照明主制御盤ITACS-LC

前項で検討した各照度に対する調光・点灯パターンを制御するため,ITACS(アイタックス)コントロールシステムの中からITACS-LCを採用し,主照明すべての一括制御・監視システムを構築している。

ITACSはさまざまな施設や演出にも対応できる多機能照明制御器であり,本件においては国際競技を行うほかにも,コンサートや展示会など多彩な利用を目的とした施設であることから,競技用として設置されたLED投光器ではあるが,LEDの特長である瞬時点灯・消灯機能と調光機能を生かすために,その操作もある程度感覚的かつシンプルに操作できるようにする必要がある。

そこで,盤前面にあるタッチパネルに対し,カスタム操作画面を構築した。メイン画面では,通常制御用に設定したコースおよび中地の各照度を指定アイコンにタッチすることで操作でき,サブ画面では,南西・南東・北西・北東の4ヶ所にある分電盤からの電源供給範囲に合わせてコースを4分割し,より細やかな操作や点灯回路ごとの状態監視も行えるように確立した(図15)。

4.照明効果検証

納入後,国際競技照度に対する鉛直面照度および水平面照度はもちろん,各照度の測定検証を行い,すべて設計基準を満足する値であることを確認したが,照明設計コンセプトとして掲げた『選手はもちろん観客への影響も考慮した適切な器具の選定を行い,建築設備条件を踏まえた配置により,可能な限りアスリートファーストのエイミング(選手目線のグレアの軽減)を施すこと』について,自主的にさまざまな効果検証を行った。

その一例として,岩崎電気独自の光環境評価システム『QUAPIX』※1によるコースおよび観客席の光環境評価結果を図16,図17に示す。

※1 QUAPIX(クオピクス)とは,従来使用されている照度値(ℓx)のような数値での比較ではなく,より人間に近い感覚量(=クオリア)から判断を行う評価システム。測定した輝度をベースに,周囲との輝度差や範囲量から,人間が普段無意識に認識している明暗,目立つ,目立たないなどを画像解析で評価するシステム。

図16 コーナー立上りからの選手目線評価

図17 2Fコーナー部観客席の評価

※1 QUAPIX(クオピクス)とは,従来使用されている照度値(ℓx)のような数値での比較ではなく,より人間に近い感覚量(=クオリア)から判断を行う評価システム。測定した輝度をベースに,周囲との輝度差や範囲量から,人間が普段無意識に認識している明暗,目立つ,目立たないなどを画像解析で評価するシステム。

今回,アスリートファーストの光環境を構築する目的は想定以上の成果を得られたが,同時に掲げた,観客席の良好な環境構築については,投光器の見え方の影響が非常に気がかりであり,それを想定して対策を施すにも限界を感じていた。

それは,観客は選手の動きを目で追うことから,どの席からでも必ず投光器の発光面が視野に入る区間が存在し,それを回避できないためである。しかし,実際に点灯した状態で確認したところ,思いのほかまぶしさを感じず,意外なほど不快を覚えない環境が確立された。

この要因は,氷の状態保持のため,アリーナ内部を一定温度に保つために天井に張られたアルミシートの影響が大きく,図17のQUAPIXによる光環境の評価でその効果を確認することができた。

解析画像より,観客席から見た左半分の投光器の発光面が高輝度を示す濃い赤色で映し出され,それとほぼ同様の濃さで,周囲の天井に使用されているアルミシートが,器具の光を反射して高い輝度を放ち,その状態が広範囲にわたり形成しているのが映し出されている。

アルミシートの反射は,どの場所から見ても目に刺さるような強い反射は存在しないことから,適度に拡散された状態で高い輝度面を構成していると判断でき,そのため,その空間にいる人間は,無意識に目に補正をかけた状態になり,相乗効果で器具のまぶしさが緩和されている考えられる(図18)。

図18 アルミシート反射状況

5.おわりに

LED照明採用により,YSアリーナ八戸を利用するイベント主催者様から,どのような演出が可能かという質問が多いそうである。LED=演出可能というのがこのような施設を利用する主催者様では当たり前の時代なのかもしれない。

実際の利用者からこのような質問がある状況より,我々はよりリーズナブルでシンプルに操作できる制御システムとセットで照明器具を提供するための,さらなる努力が使命であることを感じた。

最後に,国内3例目で,うち,岩崎電気としては2例目である国際競技対応スケート場の照明設備に携わること,貴重な経験と未来へのヒントを得ることができたこと,そして完成までにご指導,ご協力いただいた多くの皆さまに感謝し,心より御礼申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第41号掲載記事に基づいて作成しました。
(2020年6月5日入稿)


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