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施設報告

八戸市屋内スケート場建設事業新築工事(YSアリーナ八戸) - 国際競技対応スピードスケートリンク納入施設例 -

照明事業部 営業技術部 仙台技術課
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照明事業部 商品企画開発部 第三開発課

キーワード

長根公園,長根屋内スケート場,YSアリーナ八戸,世界水準,国際競技,地域防災拠点,多目的施設,LEDioc FLOOD DUELL

1.はじめに

青森県八戸市の中心部に位置する長根公園は,野球場,武道館,体育館,アイスホッケーリンク,屋外スケート場を備えた運動公園であり,その園内に,国際競技対応のスピードスケートリンクを有する屋内スケート場として2019年8月に完成したのが長根屋内スケート場(YSアリーナ八戸)である。以下,本施設の呼称をYSアリーナ八戸とする(図1,図2)。

YSアリーナ八戸は国内では3例目{長野県:長野市オリンピック記念アリーナ(エムウエーブ),北海道:帯広の森屋内スピードスケート場(明治北海道十勝オーバル)}の国際競技対応屋内スピードスケート場であり,LED照明採用施設としては国内初施設である。

約14000m²のアリーナは,国際規格16m幅の400mダブルトラックスケートリンクを中心に,リンク内側にはフットサル用人工芝を敷いた約33m×42m競技面と,バスケットやバレーなどに活用できる約33m×42mの体育館長尺床,さらに約16m×16mミニリンク一面を有し,リンク外周には幅1.55m×2レーンのランニングコースが併設される。

固定観客席は約3000席を備え,リンクを解氷することでアリーナをコンサート会場として活用でき,約9000席まで収容が可能となる。そのほか展示会などさまざまなイベントの対応や,災害発生時には防災拠点の役割を担い災害復旧資材置き場として利用される。

この国際競技対応施設でありながら,年間を通してさまざまなイベントや災害時の重要拠点に活用するため,設計コンセプトには3つの基本方針(表1)が掲げられ,その基本方針を踏まえてアリーナ用主照明設備と照明制御設備を設計,納入した。

図1 スケートリンク

図2 長根公園配置図

表1 施設設計コンセプト
基本方針Ⅰ 長根公園の歴史性を生かし,公園や周辺環境と調和する“屋内スケート場”
基本方針Ⅱ 国際大会への対応,ランニングコストの低減に配慮した,世界水準の“屋内スケート場”
基本方針Ⅲ スポーツを中心とした交流拠点と,多目的に利用できる“みんなのスケート場”

2.照明設計

2.1 設計照度条件および設計コンセプト

リンクコース上の設計条件は,国際競技とTV中継の要件を満たしながら,さまざまなクラスの競技および,選手や一般利用者の練習にも対応することを条件とし,選手はもちろん観客への影響も考慮した適切な器具の選定を行い,建築設備条件を踏まえた配置により,可能な限りアスリートファーストの照明環境(選手目線のグレアの軽減)を形成することをコンセプトとした。

上記より,設計照度の具体的基準値を設定する場合,通常であれば国際競技・TV中継に対応する条件のほか,最新のJISスポーツ照度基準(JIS Z 9127:2011)(以下,新JIS基準)を満たすこととするのだが,新JIS基準値である水平面照度区分Ⅰ(国際国内競技等)500ℓx,区分Ⅱ(一般水準競技等)200ℓx,区分Ⅲ(学校体育等)100ℓxの3段階を基本とすると,国内にある他の国際競技対応施設が旧JIS基準(照明基準総則JIS Z 9110:2010)(以下,旧JIS基準)に基づき設計されているため,公式競技1500ℓx,一般競技750ℓx,レクリエーション300ℓxと照度が高い環境を形成しており,比較すると見劣りすることになる。

また,TV中継に必要な鉛直面照度1000ℓx以上を満たすには,水平面照度はさらに高い値の確保を必要とすることから,YSアリーナ八戸においては新・旧両JIS基準の照度値を併用し設計照度と定めた。

これにより表2に示す通り,最大照度1500ℓx以上〜最低照度100ℓx間を6段階の照度に分け,利用者に合わせ適切な空間照度環境を提供することとした。

なお,新旧JIS基準併用にあたり,均斉度については新JIS基準記載の均斉度の値がより厳しく定められているため,すべて新JIS基準の値を採用することとした。

表2 リンク設計照度一覧
競技区分 設計照度 均斉度 備考
TV照度 国際 水平面1500ℓx以上
かつ
鉛直面1000ℓx以上
水平面Min/Ave0.7以上 どちらも満足すること
鉛直面Min/Max0.3以上
水平面Min/Max0.5以上
一般 水平面750ℓx以上 水平面Min/Ave0.7以上
区分Ⅰ 水平面500ℓx以上 水平面Min/Ave0.7以上
レク 水平面300ℓx以上 水平面Min/Ave0.6以上
区分Ⅱ 水平面200ℓx以上 水平面Min/Ave0.6以上
区分Ⅲ 水平面100ℓx以上 水平面Min/Ave0.5以上

YSアリーナ八戸のアリーナは,リンク内側をフットサル,バレー,バスケット,練習用ミニリンク等,多目的用途として活用できるように設計されており,図3に示すように中地(なかち)として3つの区画に分けている。各中地に対し明確な競技用途を定めない方針に基づき,新JIS基準の屋内運動場の競技別照度値を参考にしながら,最大照度を500ℓxと定め,そのほかリンクの設計照度に照らし合わせ,300ℓxと200ℓxの調整を可能とする3段階を設計照度として制定した(表3)。

具体的な用途の指定がないため均斉度の設定は行わないが,特に,中地A・Bについては球技を主用途にする予定のため,可能な限り光むらなどが発生しないよう留意することとした。

表3 中地設計照度
中地 A〜C共通 設計照度(ℓx)
500 300 200

図3 中地エリア区分

2.2 照明設置条件および照明手法

2.2.1 リンク照明

リンク照明は,リンク外周およびリンク内周に沿って構築されたキャットウォークに器具取付架台を設け,投光照明によりリンクを照射することが条件とされ,次項で検証した結果,最終的には図4に示すように施工を行った。

この取付方法の検証の過程で,キャットウォークと器具の取付間隔について検討が行われ,キャットウォークの製造・施工性を重視し,直線部用とコーナー部外周用,コーナー部内周用の3種類の仕様で表4のように構成することが決定され,照明器具はその取付間隔を前提に,各照度基準を満たす仕様の検討を行うものとした。

図4 キャットウォーク器具取付状況

表4 キャットウォーク器具取付間隔
直線部 コーナー外周部 コーナー内周部
2.2.2 中地照明

図5 中地A・Bバトン器具取付状況

中地照明については,前項記載の通り,球技を想定した中地A・B部と,練習用ミニリンクを有する中地C部が存在し,中地A・Bの取付方法はバトン方式とされ,投光器を吊り下げた状態から照射する方法で照度要件を満たす検討を行うものとし,検証後,図5の施工を行った。

図6 中地Cキャットウォーク器具取付状況

中地Cは,リンク同様にキャットウォークから照射することが条件となり,その際に中央に位置する大形モニタの影が発生する場合は,その対策を講じることが要件に含まれた(図6)。

検証の結果,中地Cの大形モニタ対策は,図7に示すモニタフレーム内部に照明を設置し,影を打ち消す方式で解決を行った。フレーム内下部の四隅に器具を配置し,対角線上に照射させてモニタ下の影を相殺している。

図7 中地C大形モニタ内フレーム器具取付状況


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