技術資料

道路照明におけるツララ抑制対策技術の開発

新技術開発部 応用技術開発課

キーワード

LED,道路灯,豪雪地帯,積雪,ツララ,LEDioc ROAD™

4.ツララへの対策(つづき)

4.3 照明器具の排水制御

4.1節,4.2節の対策においては,ツララは抑制されるが,前述のとおり従来品に対してデメリットが発生している。そこで,「LEDの熱で雪を解かしながら,ツララができないように高温部から排水し,なおかつツララが形成される場合でも,配光を妨げない箇所に形成される形状」が理想と考え,鋭意検討した結果,外周部に防水堤を備えた内部排水構造(対策品[E])を考案するに至った。対策品[E]の構造,温度分布を図7に示す。

図7 排水制御によるツララ抑制検討

また,本器具構造によって想定される具体的な効果を以下にまとめた。

[外周部の効果]

  1. 雪解け水の排水口への誘導・器具外周部からの排水抑制(配光面のツララ形成防止)。
  2. 器具後部(低温部)への雪解け水の輸送防止(後方でのツララ形成防止)。

[内部排水の効果]

  1. 器具中央部からの排水構造による雪と雪解け水の分離(氷層からのツララ形成防止)。
  2. 排水部分の高温化によるツララ形成の防止。
  3. 排水口0℃以下おける雪解け水の発生防止(排水口からのツララ形成防止)。

上記の想定を検証すべく,前記実験系にて,以下2つの仕様におけるツララ形成試験を行った結果を図8に示す。

結果として,外周部に防水堤を設け,内部に排水口を設置することで,-5℃~-10℃域でも形成されるツララの長さを大幅に短くすることができた。また,上面温度が高いため,-5℃における1時間あたりの雪解け量が160g/hとなり,従来品[C]と同等の雪解け量であるため,残雪も低減できるものと考えられる。

図8 器具外観とツララ形成試験結果

4.4 雪害対策一覧とまとめ

LED道路灯において検討した,雪害対策を表1に示す。

今回様々な対策を検討したが,器具の積雪低減・ツララ形成の抑制・デザイン性,全てを両立するためには,「外周部に防水堤を備えた内部排水構造」が雪害に対する理想構造と考えられる。今後,実際の豪雪地帯において,効果の検証が必要である。

表1 LED道路灯における雪害評価(気温-5℃)
対策内容 ツララ(20h点灯時) 積雪 総合評価
長さ 形成場所 堆積量 点灯融雪量
従来品 ×:70cm ポール側 × ○:160g/h 雪解け量は多いが形成されるツララも大きい。
雪害塗装 × ポール側 (未評価) 超撥水~親水塗料10種類を検討したが,照明器具での明確な効果は期待できない。
鋭角屋根 (未評価) 外周全域 × 積雪低減効果は高いが,デザイン性と点灯による雪解けが期待できない問題がある。
温度均一化
(対策品[B])
○:20cm 外周全域 × ツララ抑制効果はあるが,器具外周全域にツララが形成される。
上面の断熱
(対策品[D])
○:30cm ポール側 × ×:100g/h ツララ抑制効果はあるが,器具上部の残雪が多くなる。
排水制御
(対策品[E])
◎:7cm ポール側 × ○:160g/h ツララ抑制効果が高く,雪解け量もあるため,点灯による溶融により残雪が少ない。

5.おわりに

本稿では,LED道路照明における,積雪の溶融,ならびにそれに起因するツララ形成について,試験的な検証と対策について概説した。本技術を基に,豪雪地帯における道路照明に起因した車・歩行者への危険性を少しでも低減させることができれば幸甚である。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第36号掲載記事に基づいて作成しました。
(2017年5月12日入稿)


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