Home > IWASAKIテクニカルレポート > 技術資料 > 光による害虫の物理的防除方法について(その2)(3)

技術資料

光による害虫の物理的防除方法について(その2)

技術開発室 技術研究所 環境技術グループ

キーワード

光,害虫,物理的防除,人工光源,昆虫,行動抑制,誘虫性

5.農業・産業分野への応用(つづき)

5.2 産業分野

自然生態系の保全問題から工場照明などの夜間照明による昆虫の誘引・誘殺が問題とされつつある。大山ビバレッジ(株)大山工場はコカ・コーラ社のミネラルウォーター「森の水だより」を名古屋以西全区に供給する飲料水製造工場で,清涼な湧き水を利用するため中国山地・大山の麓に建設された。当然周囲は豊かな自然環境で覆われ,動植物も多く生息している。そこで本施設では,自然環境に優しい昆虫対策として,工場内部には低誘虫形のメタルハライドランプ(以下MHL),工場建家側には黄色高圧ナトリウムランプを使用して,昆虫の誘引効果を低減させた。さらに外周には紫外放射を含む一般型MHLを設置し,なるべく工場建家側に昆虫が誘引されないよう制御照明を行った(図17)。

図17 昆虫制御照明の概略

図17 昆虫制御照明の概略

工場内部の低誘虫形MHL(漏れ光対策)と外周の黄色高圧ナトリウムランプは昆虫の行動抑制の効果を,また外周の一般型MHLは昆虫を誘引-係留する効果を期待した。その結果,現地試験(4日間の合計)では工場壁面側の昆虫誘引率が約13%であったのに対し,外周の誘引-係留用のMHLには約87%の昆虫が誘引され,今後の応用が期待されている43)(表16,図18)。

図18 現地試験結果

図18 現地試験結果(左側が係留灯側,右側が工場壁面側)

表16 誘引個体数(頭)と誘引除去率(現地試験結果)
  一般型メタルハライドランプ 黄色高圧ナトリウムランプ 係留灯としての誘引率(%)
甲虫目 1,153 58 95.2
ハエ目 3,846 784 83.0
トビケラ目 777 22 97.2
鱗翅目 428 41 91.3
合計 6,204 905 87.3

6.おわりに

人工光源を利用した害虫行動抑制法は,光を利用した物理的手法のためクリーンな手法と言える。また,生態系保全問題における「生物の適正な管理と保全」にも有効な手法と考えられる。しかしながら,終夜照明を行うため作物の成育への影響(徒長・抽だいなど)の考慮,一部作物ではフェロモンとの併用の検討など,今後のさらなる成育影響調査,実証試験が必要とされる。一方,産業分野においても自然生態系を配慮した昆虫対策が今後の重要な課題と言える。我々人間にとって害虫であっても鳥類や小動物の重要な餌である。昆虫の走光性を利用した行動制御方法は昆虫を殺さず係留しておくことで自然生態系に配慮している。工場照明における昆虫対策として,昆虫の誘引を抑えること・殺さない手法の一助として参考になれば幸いである。

参考文献

  1. 田澤,他:平成16年度照明学会全国大会講演予稿集,p.255(2004).

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第12号掲載記事に基づいて作成しました。
(2004年8月12日入稿)


テクニカルレポートに掲載されている情報は、原稿執筆時現在の情報です。ご覧になった時点では内容変更、取扱い中止等がされている場合がありますので、あらかじめご了承ください。

このページの先頭へ