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技術資料

光による害虫の物理的防除方法について(その2)

技術開発室 技術研究所 環境技術グループ 田澤 信二

キーワード

光,害虫,物理的防除,人工光源,昆虫,行動抑制,誘虫性

4.光による物理的害虫防除

4.1 誘引と行動抑制

4.1.1 誘引用光源
1)UV光源

古くは,誘蛾灯としてイネの害虫ニカメイガの視感度に合わせた図9の分光分布を有する青色蛍光ランプが有名である。しかしながら現在では,ハエや蜂などの一般昆虫の視感度から,365nmのUV放射を基本としたブラックライト蛍光ランプが誘引用として利用されている。ブラックライト蛍光ランプには,365nmを主波長とするUV放射と可視放射(青色光)を含んだ捕虫用(光化学用)(BL形)と,365nmのUV放射のみを濃青色フィルターで選択透過させたブラックライトブルー形(BLB形)の2種類(出力:2~40W)がある。図10にそれらのランプの分光分布を示す。また,ブラックライト水銀ランプ(出力:100・250・400W形)も,UV放射による各種試験や検査照明用,蛍光塗料を発光させるディスプレイ照明用に利用されている。図11にこのランプの分光分布を示す。さらに最近ではLEDにおいても365nmを主波長とするUV-LEDも開発されている。図12にUV-LEDの分光分布を示す。

図9 青色蛍光ランプ(誘蛾灯用)

図9 青色蛍光ランプ(誘蛾灯用)

図10 ブラックライト蛍光ランプ

図10 ブラックライト蛍光ランプ

図11 ブラックライト水銀ランプ

図11 ブラックライト水銀ランプ

図12 UV-LED(Nitride社製)

図12 UV-LED(Nitride社製)

4.1.2 行動抑制用光源

行動抑制用光源は前述の365nmのUV放射をカットまたは減衰させた光源で,380nm以下のUV放射をカットした低誘虫形と,500~550nm以下の可視放射をカットまたは減衰させた黄色光源の2種類がある。前者は昆虫の誘引を少しでも低下させ,光源の演色性を重視する場合に用いられ,後者は演色性が重視されない場合に用いられる。

1)低誘虫形光源
図13 低誘虫形メタルハライドランプ

図13 低誘虫形メタルハライドランプ

低誘虫形光源では,蛍光ランプのUV放射をカットしたものが従来から郊外の店舗照明などに利用されている。最近ではゴルフ練習場やスポーツ照明用として,ZnO膜をランプ外球に高温焼き付け処理を施してメタルハライドランプのUV放射をカットし低誘虫化したもの21)や,TiO₂,ZnO,SiO₂,Al₂O₃などの複合剤で390nm以下の光をカットした蛍光水銀ランプが販売されている22)。表9は低誘虫形のメタルハライドランプによる誘引試験結果を示し,一般形メタルハライドランプに対して70%の誘引除去率を示した。図13は分光分布を示す。さらに最近では,公園灯や街路灯用にUV放射をカットし,緑化木など植物への夜間照明の影響を少なくするため,緑色フィルター付きの生態系に影響の少ない蛍光水銀ランプが提案されている23)

表9 低誘虫形MHLの誘引試験結果21)
  一般型 UVカット型 誘引除去率(%)
ツマグロヨコバイ 15,878 4,557 71.3
イナズマヨコバイ 773 156 79.8
オオヨコバイ 513 204 60.2
鱗翅目 662 227 65.7
トビケラ目 776 178 77.1
合計(平均) 18,602 5,322 71.4(70.8)
2)黄色光源24)
図14 各種黄色ランプの分光エネルギー分布

図14 各種黄色ランプの分光エネルギー分布

黄色ランプは主に果樹園において夜蛾類の害虫防除用に利用されていることが良く知られている。主に,蛍光ランプが主流であるが,蛍光体のみで黄色光を放出するタイプと蛍光体とフィルターを組み合わせたもの,フィルターのみの3種に分類される。波長のカット範囲は500nm以下としているが,カメムシ対策用として550nm以下を抑制したタイプもあり,大分県など一部の地方では継続して使用されている。さらに最近,露地作物用で広範囲を照射可能とした黄色高圧ナトリウムランプが販売されており,減農薬の対策として多くの作物で利用されつつある。表10には農業分野における黄色光源の適用可能な作物を示す25)。その他,過去には水銀ランプなどで,外球にカドミウム(Cd)を添加したものが販売され,山間地の道路照明などで利用されていたが,公害問題となるため高圧ナトリウムランプへの代替などで,現在は使用されていない。図14は各種黄色ランプの分光分布を示す。

表10 黄色光による害虫行動抑制効果の確認されている作物(八瀬,1997を改変)
作物名 害虫類
オオバ(シソ) ハスモンヨトウ
スイートコーン アワノメイガ
トマト オオタバコガ,ハスモンヨトウ
イチゴ ハスモンヨトウ
ナス オオタバコガ
レタス苗 タバコガ,ヨトウムシ類
ホウレンソウ タバコガ,ヨトウムシ類(抽だい有り)
カーネーション シロイチモジヨトウ,オオタバコガ,ハスモンヨトウ
バラ ハスモンヨトウ
トルコギキョウ タバコガ,ヨトウムシ類
キク タバコガ,ヨトウムシ類(生育に影響有り)
チャ チャノホソガ
キャベツ ハイマダラノメイガ
エンドウ イラクサギンウワバ
シバ スジキリヨトウ
3)誘虫性の評価

a)方法

昆虫にも光に集まる走光性があるため,昆虫の視感度曲線を光源の分光分布に乗じることで誘虫性を示すことが出来る。具体的には対象光源の分光分布を250nm~780nmまで計測し,昆虫の視感度曲線の範囲250~615nm(Bertholf)を乗じ,積分したものを,光源の分光分布に人間の視感度を乗じ,積分したもので除することで示される。以下に計算式を示す。

b)誘虫性の計算式

式(1)はBertholfの昆虫視感度による誘虫性を示し,式(2)は市販白熱電球90Wを100としたとき(等光束)の各種光源における誘虫性の相対値を示す。

(1)誘虫性の式

P(λ)
光源の分光分布
S(λ)
昆虫の視感度
V(λ)
人間の視感度

(2)白熱電球を基準とした誘虫性の式(等光束・市販白熱電球90Wによる相対値)

IAF
Insect Attracion Factor
P(λ)
光源の分光分布
S(λ)
昆虫の視感度
V(λ)
人間の視感度
PA(λ)
市販白熱電球90Wの分光分布

表11には市販白熱電球90Wを100としたときの等光束当たりの各光源の誘虫性を示す。また,Bickfordによる昆虫視感度曲線による値も参考のため,併記した。同じ種類の光源でも容量によって若干分光分布が異なる場合があるため,計測光源の容量を備考に示す。

表11 各種光源の計算による誘虫性
各種光源 誘虫性(白熱電球100) 備考
Bertholf Bickford
白熱電球 100 100 90W
黄色白熱電球 28 17 40W
黄色蛍光ランプ 33 19 40W
低圧ナトリウムランプ 24 3 90W
高圧ナトリウムランプ 48 37 透明形,360W
黄色高圧ナトリウムランプ 27 11 270W
蛍光水銀ランプ 292 320 HF-X形,400W
セルフバラスト水銀ランプ 394 441 蛍光形,300W
ブラックライト水銀ランプ 331000 391000 400W
メタルハライドランプ 294 318 蛍光形,400W
メタルハライドランプ 142 139 低誘虫蛍光形,400W

参考文献

  1. 田澤,他:平成12年度照明学会全国大会講演予稿集,p.257(2000).
  2. アインセライト販売(株)パンフレットより
  3. 田澤信二:照明学会誌,第88巻,第6号,pp.328-329(2004).
  4. 田澤信二:照明学会誌,第85巻,第3号,pp.2-6(2001).
  5. 八瀬順也:第14回農薬環境動態研究会資料,p.49(1997).

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