施設報告

門別競馬場の照明設備 - グランシャリオナイター照明 -

国内営業部 札幌営業所 技術課
国内営業部 札幌営業所 第一営業課

キーワード

門別競馬場,公営競技場,角形投光器,光害対策高効率角形投光器,グレア,漏れ光,メタルハライドランプ

3.照明設備概要

本施設の照明設備は前述までの走路照明のほか,周辺設備に対しても整備された。それぞれの設置箇所の照明設備一覧を表1に示す。

3.1 走路照明

光源の高さについては,JIS Z 9121-1997(屋外陸上競技場,屋外サッカー場及びラグビー場の照明基準)にサイド照明の場合の高さが規定されている。取付高さが低すぎると照明範囲が狭くなったり,グレアの影響が懸念される。また,高すぎると水平面照度に対する鉛直面照度の比率が小さくなり見え方が悪くなる。以上より,本施設では地上高19mのコンクリートポールとし,適正な光源高さとした。

照明器具は,細長い走路に適した横長配光で,コース外及び周辺への漏れ光を軽減した2kW用のルーバ内蔵角形投光器(HOF212X-20L+MT2000B/BH)とした(図4,図5)。また,コーナー部分において外側設置(スタンド方向振り向け)の器具については,鉛直角0度の状態で光軸を前進させ投光器前面を被照面方向に向けなくても照明可能な高効率反射鏡と被照面に有効な光として変換する高性能内蔵ルーバで,グレア及び上方・前方への漏れ光低減を強化した1.5kW用の光害対策高効率角形投光器(HOF1301X-OP+MT1500B/BH-M)とした(図6,図7)。

図4 ルーバ内蔵角形投光器設置状況
(コンクリートポール装柱)

図5 ルーバ内蔵角形投光器設置状況
(スタンド屋上)

図6 光害対策高効率角形投光器設置状況
(コンクリートポール装柱)

図7 3コーナー夜間レース時の状況

光源は,テレビ放送,馬の仕上がりや馬番等の色を確認できることが求められるため,色温度4200K,平均演色評価数Ra=65の2kWメタルハライドランプを採用した。なお,コーナー外側は高効率器具の採用により1.5kWとした。

走路照明としては,上記設備の照明塔を42基とスタンド屋上に15台配置し,維持平均照度442ℓxを得ている。また,維持鉛直面照度は400~1000ℓx程度を確保した(図8,図9)。なお,停電時の安全対策として無停電電源装置により停電時照明を設けているが,予定照度10ℓxに対して13.9ℓxを確保した。

図8 スタンド側からの夜間レースの状況

表1 照明設備一覧表
照明設備 競馬場夜間照明 周辺設備照明 合計
コンクリートポール地上高19m スタンド コンクリートポール地上高14.5m他 ポケット コンクリートポール地上高12.5m他 電柱共架
12灯用架台 18(20)灯用架台 屋上設置 5基 屋根設置
区域 機器名称 20基 22基
走路一般照明 角形投光器(ルーバ内蔵)
メタルハライドランプ2kW
96 356 15         467
光害対策高効率角形投光器(ルーバ内蔵・後方遮光板)
メタルハライドランプ1.5kW
114             114
走路非常照明 角形投光器(ルーバ内蔵)
メタルハライドランプ2kW
  12           12
光害対策高効率角形投光器(ルーバ内蔵・後方遮光板)
メタルハライドランプ1.5kW
6             6
スタート補助 増反射膜付高効率丸形投光器
メタルハライドランプ1.5kW
      29       29
小型角形投光器
セラミックメタルハライドランプ150W
        10     10
パドック 増反射膜付高効率丸形投光器
メタルハライドランプ1.5kW
          16   16
17号道路 多焦点形投光器
メタルハライドランプ1kW
          15   31
繋ぎ厩舎           12    
検体採取所           4    
業務用駐車場 増反射膜付高効率丸形投光器
メタルハライドランプ400W
          4   10
入口付近           6    
馬道・厩舎廻り 道路照明器具
高圧ナトリウムランプ110W
            32 32
防犯照明器具
コンパクト形蛍光ランプ57W
            210 210
合計 216 368 15 29 10 57 242 937

3.2 周辺設備照明

夜間レースを実施するに当たって,各周辺設備も照明設備が整備された。整備された主な箇所は表1に示す。

周辺設備の照明は,パドック・駐車場等,広場的な箇所は全般的に照明する必要があるため,投光照明とし,光源は走路照明と同様にメタルハライドランプを採用した。また,馬道・厩舎廻りの通路は,幹線部分を高圧ナトリウムランプの道路灯(KSH-2/H7118+NHT110LS)で照明し,補助通路部分をコンパクト形蛍光ランプの防犯灯(FH7902EH1/2+FHT57EX-N)とした。

パドック(下見所)は新設スタンドの裏側に場所を移して新設されたが,観客にとってレース前に出走する馬の状態を確認する上で重要な施設であり,走路と同程度の明るさとし,維持平均照度で476ℓxを得ている(図10,図11)。

図10 パドックの照明状況

図11 馬道・厩舎廻りの照明状況

4.おわりに

今回,競馬場の走路照明で特殊性要素が多く,競技者と観客という視点の違う両者を満足させ,なおかつ,周辺への漏れ光も考慮する課題を,照明手法や新機能照明器具を駆使してクリアし,競走馬(騎手)が安全かつ全力で走れ,観客の方々に競馬の楽しみを満足いただける,人にも馬にも自然にもやさしい照明環境をつくりだせた。今後も屋外の競技施設照明に求められるであろう,光害を考慮した高品質な視環境,経済性の検討の一助となれば幸いに思う。

最後に門別競馬場の完成にあたり,御指導,御協力いただいた関係各位に深く御礼申し上げる次第である。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第21号掲載記事に基づいて作成しました。
(2009年11月2日入稿)

納入事例


テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。