施設報告

ナゴヤドームの照明設備

照明事業部 営業技術部 営業技術課
照明事業部 営業技術部 LCS
照明事業部 商品企画開発部 第三開発課
照明事業部 民需特販営業部 名古屋営業課

キーワード

スポーツ照明,体験・体感型照明空間,DMX制御,演出照明

2.コンセプト(つづき)

2.4 照明設計および光環境調査

2.4.1 照明設計の方針

野球場照明における質の高い照明とは,競技者と観戦者の両者にとって良好な照明環境のことであり,図17に示す①〜⑤のポイントを満足させることが大変重要である。その中でも特に「②まぶしさ」に関しては,競技者に対するプレーの妨げになる可能性が高いことから,野球場照明ではこれを適切に制御する必要がある。そこで本施設では,競技に集中できるまぶしさを抑制した空間にするため,特にまぶしさに重点を置き,照明設計を行っている。

図17 野球場の照明設計におけるポイント

本施設では,この空間を実現するために三次元シミュレーションを導入し,まぶしさの検証だけにとどまらず,選手目線からのボールの見え方や,観客目線からの空間の見え方など空間全体の明るさなど細かい検証を行った。シミュレーションの精度を高めるため,球場内の各種素材の正確な反射率の測定(図18)を行い,三次元設計に反映させた。

図18 反射率測定

図19の2枚の画像は,改修前(HID照明)の写真と同条件の三次元シミュレーションを比較したものである。現地と同じ反射率を使用することで,高精度な三次元モデルを作成した。

既設HID写真

3次元シミュレーション

図19 三次元モデル

まぶしさを抑制するためにJISZ9127で定められた不快グレア(GR)の基準値を満足することに加え,選手の視界からまぶしい器具を減らすことと,高輝度発光面の分散化を行った。

競技者の主な視線方向であるJISに定められている「設置を避けることが望ましい区域」内にある照明器具の設置台数を改修前と比較して削減することで,選手の視界からまぶしい器具を減らした。

投光器の高輝度発光面が密集し光のかたまりができると,ボールと重なり背景になったときにボールを見失う原因となる。そのため,三次元シミュレーションにより高輝度発光面が分散化するよう1台1台の照明器具の照射方向を確認し,かつ「設置を避けることが望ましい区域」から高輝度発光面を遠ざけるように設計を行った(図20)。

図20 改修前,改修後の比較

2.4.2 ボールの視認性

競技者の目線を想定した位置からフライボールの軌道に配置したボールの見え方を検証した(図21)。

図21 ボールの視認性検証

外野フェンスの端部に至るまで均一な明るさを確保し,フィールド全体の明るさの変化を緩やかにすることで,競技しやすく観戦しやすい照明空間を実現した(図22)。

図22 改修前,改修後の比較

2.4.3 光環境調査

光環境調査では従来の照度測定に加え,見え方に影響する鉛直面照度,顔の見え方評価,グレア評価,フライボールの見え方評価を照明改修前,改修後に行った。

顔の見え方評価では,各ポジションにいる選手の表情がどのように見えるかアンケート調査(図23)と画像測光による輝度測定(図24)を行った。改修前に比べて選手の顔が明るくなっており,陰影も気になりづらくなった。

図23 アンケート結果

図24 輝度測定結果

また,指定位置からホームベース方向に目線を向けたときのグレアをアンケート評価した。なお,ホームベースではセンター方向に目線を向けている。結果を図25に示す。

図25 アンケート結果

2.4.4 フライボールの見やすさ

5m,20m,35m,50mの位置にボールを吊り,画像測光による輝度測定とアンケート調査を行った。ボールと背景との輝度対比は改修前に比べ高くなっており,フライボールの視認性が向上している。ホームから外野方向での測定結果を図26に示す。

図26 見やすさアンケート結果と輝度測定結果

3.おわりに

本施設では,驚きと感動をもたらす体験・体感型照明空間を創造するため,照明設計から演出計画,そして制御システム設計において,一貫して“人の目線に立った”高いレベルの技術ソリューションを行った。

スポーツのエンターテインメント化という社会的な流れに対し,照明設備が果たす役割と効果の大きさを実証するプロジェクトとなり,この取り組みを評価いただき,日本照明賞という名誉ある賞を受賞できた。本施設があかり文化の向上に寄与することを願う。

最後に,本事業の施主である株式会社ナゴヤドーム様をはじめ,長期間に渡りご指導,ご協力いただいた関係各社の皆さま,そしてご協力いただいたすべての方々にこの場を借りて心よりお礼申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第41号掲載記事に基づいて作成しました。
(2020年4月28日入稿)

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