施設報告

屋外形アイ クラークナイン®付照明灯(防災灯) - (仮称)勝国寺坂通り整備工事 -

国内営業事業部 官公需推進室
国内営業事業部 第一営業部 東京営業所
機器事業部 機器技術部 回路グループ
岩崎情報機器株式会社 第二製造部 LED課

キーワード

アイ クラークナイン®,停電時点灯,歩行者優先,安全・安心,視線誘導,白色LED

1. はじめに

図1 照明灯の外観(昼景)

近年,国の施策は「安全・安心」「環境保全」「コスト縮減」という3つのキーワードを提言し,市民生活の質的レベルの向上とあいまって特に「安全・安心」のキーワードは車から地域と市民主体へと移行してきた。高齢者や障害者をはじめとした交通弱者に対する具体的取組みとして,バリアフリー,ユニバーサルデザインなどが歩行者周辺で,積極的に実施され評価されている。

今回,東京都世田谷区役所において,区役所周辺歩車道の整備に会わせ,照明設備の改修工事が平成16年3月に完了し,屋外形アイ クラークナイン®付照明灯が採用されたので,施設の概要を報告する。(図1)

2. 施設概要

本施設は,地震等の災害時に想定される停電による暗やみの状況下で,歩道上に明るさを提供し,安全歩行に対する支援を行うものである。

区役所周囲の道路(車道幅約6.0m,歩道幅約1.6~2.0m)に車道照明として,丸形段付ポール7mに照明器具(H6161)と水銀ランプ(HF250X)の組み合わせで,照明灯を約30m間隔の千鳥配列で5基設置(H17年3月工期にて2基,合計7基設置)した。夜間の照明灯の外観を図2に,照明灯の外形図を図3に示す。

屋外形アイ クラークナイン®は,光源ユニットと電源ユニットとから構成される光補償装置の一つである。今回の装置では,光源に白色LEDを用い,ポール開口部の補強形開口蓋(平面状)内側に白色LEDユニットを取り付け,電源ユニットと接続されて停電時には防災灯として点灯する。(図4)設置した照明灯全てに本装置が組み込まれている。(図3)

図2 照明灯の外観(夜景)

図4 屋外形アイ クラークナイン®点灯状況

3. 製品概要

3.1 電源ユニット

図5 電源ユニットのポール内取付状況

電源ユニットは,蓄電池,コントロールユニットなどが一枚のプレートに装着されており,施工時およびメンテナンス時の操作性を考慮して一体化した。ポール外部への出し入れも容易に出来る構造とした。(図5,図6)

主な構成は下記の通りであり,その仕様を示す。

  1. 点検スイッチ:メンテナンス用のスイッチ(停電時想定)
  2. 切換スイッチ:道路照明と同一点滅用と停電時のみの点灯用の切換(2個装着)
  3. バッテリーユニット:12時間点灯の容量をもつNi-Cd蓄電池(ヒューズケースを含む)
  4. コントロールユニット:停電時および通常時の切換点灯制御

上記構成部品はポール内への取り付けを考慮して防湿構造としている。全体の結線図を図7に示す。

3.2 LEDユニット

LEDユニットは,白色の高輝度反射型LEDを15個(5×3)組込んだ52mm角のポリカーボネイトケースと充電モニタにより構成されている。ポールの開口蓋下方(地上高0.8m)に設けた半透明のポリカーボネイト開口窓(150×50mm)の内側に取り付けられ,歩道幅によって照射角度を可変(0~45度)出来る可変板に固定されている。充電モニタは,開口窓より蓄電池の充電状態を確認することが可能である。LEDユニットの主な特性と外観形状を表1に示す。

採用した高輝度反射型LEDは,反射板によって光を制御し前方に指向性の強い光を照射できる特長を有し,光色については白色とした。ポール内の温度上昇を抑える為に,開口部の蓋内側の防水パッキンは,左右のみとしている。
LEDユニットを高さ0.8m,取り付け角度30°の場合の前方方向照度値を表2に示す。

表2 LED ユニットの水平面照度値
距離(m) 0.5 1.0 1.5 2.0
照度(ℓx) 8.8 12.8 2.7 0.3

3.3 性能・特徴

屋外形アイ クラークナイン®の主な性能をハード,ソフト両面から述べると以下の通りである。

  1. 切換スイッチにより白色LEDの点灯切替えが可能である。スイッチaで自動点滅器での道路照明と同一の点滅を,スイッチbで停電時の点灯を切り替える。(図7)
    • 自動点滅器での道路照明と同一の点滅を行い,停電時にも点灯する。
    • 常時(受電中)は,昼夜間に関係なく消灯状態で,停電時のみ点灯する。
  2. フル充電における停電時蓄電池によるLED点灯時間は12時間。
  3. 蓄電池の充電状態は,充電モニタ(LED緑)により外部から目視による確認が可能である。
  4. 点検スイッチにより停電時を想定した点検が可能である。(開口部の蓋は取り外す)
  5. 視線誘導効果が得られる。

4. おわりに

災害時などの停電における非常時照明に対しては太陽灯,ハイブリッド太陽灯によって対応できてはいるが,車道照明灯との併設での施工はこれまでに実施例が少ない。自治体はじめ市民レベルにおいても地震災害等の危機管理への関心が高まっていく中,安全・安心をキーワードに,これからも種々の新しい商品の開発が行なわれていくものと考える。

本装置も蓄電池の仕様改善を含め,高効率化や景観向上を目指して,市民により一層受け入れられるものに改善していく必要がある。

ご採用いただいた世田谷区役所ご担当者はじめ,ご協力いただいた皆様に感謝の意を申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第11号掲載記事に基づいて作成しました。
(2004年8月23日入稿)

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