非常用照明器具

誘導灯・非常用照明器具診断のおすすめ

趣旨

この診断のおすすめは、次の趣旨でまとめてあります。ご活用をお願いいたします。

  1. 誘導灯器具及び非常用照明器具は、避難誘導などのための特別の機能と、一般用照明器具と同様の機能とを併せもっております。いずれの機能も、常に正常に動作するよう保全することが必要であり、特に防災上の機能は、通常時には不具合が外観からは判りにくいため、劣化に気付かないことがあります。
    また、施設用蛍光灯器具の適正交換時期の目安が、JIS C 8105-1:2021解説に、使用環境の相違による劣化の度合いが異なることが示されております。
    防災機能の維持と、一般的な器具と同様の事故の未然防止のため、劣化診断をこのチェックシートで行ってください。
  2. このチェックシートは、一般の使用者、設備管理者自身がご使用になれるようまとめてあります。
  3. 誘導灯及び非常用照明器具に限ってご使用ください。
備考
1. 防爆形、防水形、防じん形の器具は別途のチェックが必要です。
2. 誘導灯用信号装置を使用する誘導灯システムのチェックは専門家にご相談ください。

チェックシートによる診断

  1. チェックシートの使用方法
    チェックシートは、器具、内蔵蓄電池、誘導灯表示板を区分してチェックし、それぞれの判定をしてください。
    第1ステップ
    1. チェックシートは、診断を行う器具のグループ(一つの建屋内又は室内)ごとに1枚としてください。
    2. 診断は、不具合が生じた器具についているグループ、又は器具を設置してから5年以上経過しているグループを対象としてください。
    3. チェックシートの質問内容の中には、器具の内部をチェックする項目があります。器具の総数に関わらず、少なくとも3台抜取りチェックを行ってください。
    4. 抜取った器具のチェックは、1台でも該当する項目があれば○を付けてください。
    5. 診断で交換をおすすめする結果が得られた場合は、診断したグループ全体の器具の交換をおすすめします。
    第2ステップ
    1. 1回目の診断で交換をおすすめする結果が得られても、器具の交換について多少ともお迷いのある場合は、1回目とは別の器具を新たに抜取って、再診断を行ってください。
    2. 再度の診断で交換をおすすめする結果が得られた場合は、診断したグループ全体の器具の交換をおすすめします。
    第3ステップ
    1. 再度の診断によっても判断にお迷いがある場合には、専門家(お買求め先など)にご相談ください。なお、ご相談の種類によっては有料の場合がありますので、あらかじめご了承ください。
  2. 診断の基本ステップ
    診断の基本ステップは、次のようになります。
    第1ステップ
    使用者1次診断
    第2ステップ(第1ステップでの診断で、交換の要否の判断にお迷いのある場合)
    使用者2次診断
    第3ステップ(第2ステップまでの診断で、交換の要否の判断にお迷いのある場合)
    専門家との相談
  1. 照明器具の耐用年限及び維持・管理
    照明器具の耐用年限及び交換時期は、使用条件や部品などの規格との関連もあり、長期の検討が必要で、一律に規格本文で規定することは困難です。しかし、一般に関心の高い問題ですので、施設用蛍光灯器具について考えられる点を以下に述べます。
    1. 交換時期を判断する要素
      施設用蛍光灯器具の交換時期を判断する要素として、次のことが考えられます。
      1. 故障率が高くなり、集団交換が有利となるとき。
      2. 反射板などの反射率、透光性カバーの透過率などの低下により、所要照度が不足し、不経済となったとき。
      3. 部品交換が不能となったとき。
      4. 構造、機能などが劣化し、安全性が維持できないと判断したとき。
      5. 照明設計上、照明経済上、デザイン上などの要求の変化により、新機種へ切り換えたほうが効果があると判断したとき。
    2. 劣化の要因
      施設用蛍光灯器具の耐用は、他の電気機器と同様に主として絶縁物の寿命によって左右されます。器具の心臓部である安定器の平均寿命は、JIS C 8108:2008(蛍光灯安定器)の解説に8~10年と示されています。しかし、特に考慮しなければならない問題として、蛍光灯器具が施設された場所、使用条件により耐用が大きく影響されることです。その要因として主要なものは、周囲温度、湿度、電源電圧、点灯時間、汚損、その他腐食性ガス、振動、及び取付方法などがあります。
      a.2.からも明らかなように、光学性能の劣化は、器具の耐用を決定する重要な要素です。しかし、規定方法の標準化がいまだなされていないのが現状です。
    3. 器具の選択と維持管理
      施設用蛍光灯器具の上手な使い方として、前述の要素が適正に保たれるためには、次の点が必要です。
      1. 器具の適正選択(例えば、温度が常温を超える場所には高温対策器具を、水気の多い場所には防水器具など)。
      2. 適切な保守管理(例えば、電圧を適正に維持管理--電圧変動、電圧値、温度、湿度の適正な管理など)。

      さらに一定期間使用した器具は、安定性、経済性、快適性の観点から定期的に見直しを行い、常に良好な状態でその時点で最も適切な器具が使用されているかの確認が望まれます。

上記のとおり、蛍光灯器具の耐用年限を端的に明言するのは困難です。しかし、一般の施設用蛍光灯器具の交換の目安を提示しておくことは、予防保全の立場で維持管理の担当者にとって有益と考え、次に示しました。

[解説図1]照明器具の累積故障率(JIS C 8105-1:2021)
  • 電気絶縁材料は、使用するに従って化学的劣化を生じるので、電気用品安全法の技術基準では、その限界を40000時間と規定しています。照明器具において電気絶縁材料の劣化が問題となるものは、安定器、ソケット、電線などです。
  • 定格入力電圧、常温で照明器具を集団で使用している場合の使用時間(又は年数)と累積故障率の関係は、[解説図1]のとおりです。
  • 電気用品安全法の技術基準の電気絶縁材料の限界(40000時間)は、平均的耐用年限と考えられ、実際には部品にした時の製造ばらつきがあり、30000時間から摩耗故障期(老人期の故障期間)に入ります。
  • ソケットや電線の絶縁物も安定器と同様に、使用時間の経過と共に化学的に劣化し、特に絶縁材料のほか、長期使用によりランプとソケット間の接触抵抗が次第に増大するものが発生します。ラピッドスタート式器具の場合、フィラメント予熱回路の抵抗が増えたことになり陰極予熱電流の減少をもたらし、ランプの早期黒化を招くことになります。

上記により、年間点灯時間が1500時間、3000時間、5000時間、8000時間の使用時間(主な用途区分)及び電源電圧、周囲温度を区分して、[解説表1]のとおり適正交換時期を目安として算出しました。

[解説表1]適正交換時期の目安(JIS C 8105-1:2021)
使用時間 1500時間/年
(5時間/日)
3000時間/年
(10時間/日)
5000時間/年
(17時間/日)
8000時間/年
(24時間/日)
主な用途 体育館、会議室 事務所、工場(一般)、店舗 工場(2交替) 工場(全日操業)24時間点灯
使用条件 電圧 定格 105% 定格 105% 定格 105% 定格 105%
温度(℃) 30以下 40 30以下 40 30以下 40 30以下 40 30以下 40 30以下 40 30以下 40 30以下 40
交換時期(年) 15 10 14 7 10 5 7 3.5 6 3 4 2 3.8 1.9 2.5 1.3

劣化の考え方は、白熱電球器具やHID器具にも応用し得ると考えられます。
住宅用照明器具は、人間の感性や快適性にかかわる要素が大きいので、施設用照明器具のように絶縁物の耐用など物理的、化学的要因より定まる耐用年限より使用期間が短くなる可能性が高くなります。

備考
表示灯が不点の場合であっても、充電表示灯がないバッテリーモニタ付の器具の場合は、試験停電により所定の動作(赤色ランプの不点又は点灯)により良否を診断してください。

誘導灯・非常用照明器具劣化状態診断チェックシート

器具

下欄の各項目について診断し、結果が該当する場合は診断結果欄に○印を記入してください。

チェック項目 区分 診断結果
使用状況・環境
1. 使用期間は 8年以上 B
12年以上 A
2. 累積点灯時間は30000時間以上※1 A
3. 累積故障率は10%以上 A
ここ2、3年故障による取替台数が増えている。 B
4. 室内の年間平均温度は25℃(又は、器具の周囲温度30℃)以上になっている。 B
5. 電源電圧が高い。(定格入力電圧の103%以上) B
6. 取付部に常時振動が加わっている。 B
7. 使用場所に水気・湿気が多い。 B
8. 使用場所に腐食性ガス(塩害を含む)・じんあいが多い。 B
9. 最近雷による被害を受けたことがある。 B
10. 省エネのためランプを外した状態で通電している、又はしたことがある。 B
11. ランプ・グロースタータの寿命時に長期間放置している、又はしたことがある。 B
12. 建築化照明(光天井など)内の器具取付間隔は、約30cm以下である。 B
ランプ
1. ランプのちらつきが大きく感じるようになってきた。 B
2. ランプを交換しても正常に点灯しないものがある。 B
3. ランプを交換しても点灯するまでに時間が長くかかるものがある。 B
4. ランプを交換しても他のランプより極端に暗いものがある。 B
5. ランプの寿命が以前より短くなったり、黒化が早くなっている。 A
器具本体
1. 本体、反射板の汚れは、掃除をしてもとれない、又は変色している。 B
2. 器具内の電線(安定器のリード線を含む)に硬化、又はやせがある。 B
3. 器具内の電線(安定器のリード線を含む)にひび割れ、芯線露出などがある。 A
4. 塗装面にふくれ、ひび割れなどがある、又はさびがでている。 B
5. 焦げ臭いにおいがする。 A
6. 照明器具が原因で漏電ブレーカが動作することがある。 A
7. 今までに照明器具から発煙・油漏れがあった。 A
8. 可動部分(開閉箇所、調節箇所など)の動きが鈍い。 B
9. ランプの固定が悪く、ぐらつく。 B
10. 分岐回路の絶縁抵抗は、0.2MΩ以下(200V)又は0.1MΩ以下(100V)である。 A
11. 器具内部の部分にほこりの付着、堆積がある。 B
チェック項目 区分 診断結果
安定器
1.銘板又はケースの塗装が変色している。 B
2.ブッシングの変色・硬化が著しい。 B
3.ケースに著しいさびが出ている。 B
4.内部の充填物が流れ出している。 A
5.ケースに変形又は著しい変色が生じている。 A
コントロールユニット
1. 使用期間は 8年以上 B
12年以上 A
2.点検スイッチを引いても非常点灯に切替わらないことがある。 B
3.点検スイッチを引いても非常点灯に切替わらない。 A
4.銘板にはがれ、変色が見られる。 B
5.ユニットケース内に、ほこりの付着・堆積が見られる。 B
部品
1.ソケットの接触部分に変色・さびがある。 B
2.ソケットに変形・ひび割れ・破損などがある。 A
3.つまみねじなどにひび割れ・破損などがある。 B
4.端子台に変色・変形・破損などがある。 B
5.ソケットが黒く焦げたようになっている。 B
6.ソケットの接触子、ばねなどが劣化している。又は、可動部の動きが悪い。 B
7.コンデンサケースに変形・ふくらみ・油漏れがある(安定器付属のものを含む) A
8.スイッチに異常がある。 B
9.点検スイッチの引きひもが切れている。 B
10.充電表示灯(緑色)が点灯していない。 A
診断結果 区分Aの○印の合計数
区分Bの○印の合計数

※1 昭和53年以降に製造された誘導灯器具は、24時間/日点灯使用を考慮しておりますので、使用期間の項でご判断ください。

診断結果の判定

区分Aの○印の合計数
1個でもあれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。
区分Bの○印の合計数
7個以上あれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。
区分Bの○印の合計数
3~6個であれば、新たに不具合が生じたとき再チェックしてください。

内蔵蓄電池

下欄の各項目について診断し、結果が該当する場合は診断結果欄に○印を記入してください。

チェック項目 区分 診断結果
使用状況・環境
1. 使用期間は 3~5年 B
5年以上 A
2. 電池の周囲温度が40℃以上、又は5℃以下になっている。 B
3. 使用場所に水気、湿気、腐食性ガス(塩害を含む)、じんあいが多い。又は、器具取付部に常時振動が加わっている。 B
4. ここ1年故障による取替台数が増えている。 B
5. 1回/月以上の頻度で、30分程度以上の停電がある。 B
6. 電源電圧が高い(定格入力電圧の103%以上) B
電池外観
1. 電池ケース(紙筒、プラスチックケース、熱収縮チューブ)に変形、ひび割れなどがある。 B
2. 電池ケースに白い粉が析出している。 A
3. リード線に硬化又はやせがある。 B
4. リード線にひび割れ、芯線露出などがある。 A
5. リード線に白い粉が析出している。 A
6. リード線の芯線又はコネクタ接触部が腐食している。 A
7. コネクタ接触部分に変色、さびがある。 B
8. コネクタに変色、ひび割れ、破損などがある。 A
9. コネクタ接触子、ばねなどが劣化している。又は、ガタがある。 A
10. ヒューズホルダ部分に変色、さびがある。 B
11. ヒューズホルダに変形、ひび割れがある。 A
12. ヒューズ接触子、ばねなどが劣化している。又は、ガタがある。 A
電池特性
1. 電池端子電圧(オープン電圧)が定格電圧以下である。 A
2. 有効動作時間が基準値以下である。 A
3. 点検スイッチなどで電池不良と判断された。 A
4. 充電中の電池電圧が1.55V/セル以上、又は1.35V/セル以下である。(充電中の電池電圧が電池定格電圧の129%以上、又は113%以下である。) A
診断結果 区分Aの○印の合計数
区分Bの○印の合計数

診断結果の判定

区分Aの○印の合計数
1個でもあれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。
区分Bの○印の合計数
5個以上あれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。

適正交換時期 (一社)日本照明工業会ガイド108-2003

誘導灯は施工後そのほとんどが24時間連続点灯していることから、絶縁物の寿命との関係で約8年と考えられています。
また、誘導灯・非常灯電池の寿命は4~6年、誘導灯表示板の寿命は6~10年とされています。

誘導灯・非常用照明器具の耐用年限 (一社)日本照明工業会ガイド108-2003

器具本体の耐用年限は、器具の種類ごとに[表1]のとおりとされています。

[表1]器具本体の耐用年限
器具の種類 適正交換時期 耐用の限度
誘導灯器具
非常用照明器具
電池内蔵形 8~10年 12年
電源別置形 8~10年 15年
専用形 8~10年 15年
耐用年限
建築物に設置された防災照明器具の全体の性能が低下し、安全の維持に問題が生じ、もはや部分的な部品交換では使用に耐えられなくなる限度をいいます。

誘導灯表示面

下欄の各項目について診断し、結果が該当する場合は診断結果欄に○印を記入してください。

チェック項目 区分 診断結果
誘導灯表示面
1. 文字や絵、矢印が判別しにくい。(汚損、変形、破損が見られる。) A
2. 緑地部分にきず・はがれがある。 B
3. 清掃で取れない汚れがある。 B
4. 著しい変色(黄変や緑地部分の脱色)がある。 A
診断結果 区分Aの○印の合計数
区分Bの○印の合計数

診断結果の判定

区分Aの○印の合計数
1個でもあれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。
区分Bの○印の合計数
2個以上あれば、危険な状態になっています。速やかに交換することをおすすめします。

なお、この診断(第1次診断)で交換が必要と診断されたが、交換の判断に迷いがある場合は、器具の内部をチェックする項目について再度別サンプル(3台以上、できる限り多く)で診断(第2次診断)してください。