技術資料

活性酸素計測

技術研究所 光技術基礎研究室

キーワード

活性酸素,計測,オゾン,紫外線,酸素プラズマ,銀膜,酸化力,窒素ガス,アンモニア水,ICP発光分光分析

3.活性酸素計測法

今回の検討に基づき,活性酸素計測法として以下の手法を提示する。

3.1 活性酸素量計測手順の概要

活性酸素検知板としてガラス基板に銀膜を形成したものを作製し,この活性酸素検知板を表面処理装置内で曝露し酸化銀を生成させる。次いで,溶存酸素を除去したアンモニア水中に生成した酸化銀を浸漬し加熱溶解した後,アンモニア水中の銀量を誘導結合プラズマ(以下,ICPという)発光分光分析装置にて定量する。得られた銀量から式1を用いて活性酸素量を計算する。

反応式;2Ag+O→Ag2O・・・(式1)

3.2 活性酸素検知板

3.2.1 活性酸素検知板の構成

ガラス基板に無アルカリガラスを用い,無電解めっき法(イオンスパッタ法,真空蒸着法)で厚み100nmの銀膜を形成させたものを活性酸素検知板とする。活性酸素検知板の構造を図2に示す。

図2 活性酸素検知板の構造図

3.2.2 活性酸素検知板の仕様及び作製手順

活性酸素検知板の仕様一覧を表2に示す。活性酸素検知板の作製手順は次の通り。

  1. 銀膜の表面光沢度を“JISZ8741 鏡面光沢度 - 測定方法”に準じて測定し(測定方法の種類;方法5,名称;20度鏡面光沢,記号;GS(20°)),鏡面光沢度GS(20°)=2000以上であることを確認することで銀膜表面状態(曇り/酸化・硫化,表面粗さ)を光学的に評価する。
  2. 活性酸素による銀の酸化は表面層から始まり,厚さ約80nmで飽和するので,ガラス基板上の銀膜厚は100nm以上とする。
  3. 活性酸素検知板をアンモニア水中で10分間加熱し,銀膜剥離の有無を評価する。
  4. 検知板銀膜表面の自然酸化による酸化銀はブランク値とする。ガラス基板上に銀膜形成後,清浄な雰囲気にて保管した場合の自然酸化膜厚は1nm以下であったので,銀膜表面自然酸化膜の厚さは2nm以下と判断される。
表2 活性酸素検知板仕様
評価項目 判定基準
1.銀膜表面光沢度 鏡面光沢度GS(20°)=2000以上
2.銀膜厚 100nm以上
3.銀膜密着性 剥離のないこと
4.銀膜表面自然酸化層の厚さ 2nm以下

3.3 酸化銀分析方法

活性酸素検知板で捕捉し生成した酸化銀の分析手法を以下に示す。

3.3.1 適応範囲

この手法は,紫外線やプラズマにより生成される活性酸素量の酸化力を計測する方法に関するものである。

3.3.2 一般事項

分析方法に共通な一般事項は,JISK0050(化学分析方法通則)及びJISK0116(発光分光分析通則)による。

3.3.3 要旨

アンモニア水中の溶存酸素を窒素雰囲気中で加熱除去した溶液に,活性酸素検知板(曝露後)を浸漬し,窒素雰囲気中で加熱溶解した後,溶液を誘導結合プラズマ発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,銀の発光強度を測定する。

3.3.4 試薬・ガス
  1. 窒素ガス 純度99.99%以上
  2. アンモニア水 (1+9)
  3. 銀標準原液 濃度1000mg/ℓ
  4. 水 比抵抗値18.2MΩ・cm以上
3.3.5 検知板表面積

試料は,2.5cm×2.5cm=6.25cm²の大きさの活性酸素検知板1枚とする。

3.3.6 器具及び装置
  1. 溶解容器(100mℓ)
  2. 試料ステージ付き窒素ガス吹出しノズル
  3. 流量計
  4. ホットプレート

図3 溶解容器と試料ステージ付き窒素ガス吹出しノズル

3.3.7 操作手順
3.3.7.1 試料溶液の調整
  1. 溶解容器(100mℓ)にアンモニア水(1+9)10mℓを加え,試料ステージ付き窒素ガス吹き出しノズルを溶解容器(100mℓ)に装着し,窒素ガスを流量10ℓ/min.でフローしながら,ホットプレート上(100℃)で5分間加熱し,溶存酸素を除去する。
  2. 試料を試料ステージ付き窒素ガス吹き出しノズルにセットし,窒素ガスを流量10ℓ/min.でフローしながら,溶解容器(100mℓ)に浸漬し,ホットプレート上(100℃)で5分間加熱溶解する。
  3. 試料を試料ステージ付き窒素ガス吹き出しノズルから取り出す。(この時,超純水による試料表面洗浄は不可)
  4. 放冷した後,溶液を50mℓの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
3.3.7.2 発光強度の測定

3.3.7.1の操作で得た溶液の一部をICP発光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,328.068nmにおける発光強度を測定する。

3.3.7.3 空試験

3.3.7.4 検量線の作成操作において得られる標準溶液を添加しない溶液の発光強度を,空試験の発光強度とする。

3.3.7.4 検量線の作成
  1. 銀標準原液の液量を段階的に数個の溶解容器(100mℓ)に取り,3.3.7.1の操作を行う。
  2. 溶液の一部をICP発光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,328.068nmにおける発光強度を測定し,得た発光強度と銀量との関係線を作成し,検量線とする。

図4 銀標準溶液のICP発光スペクトル

図5 銀検量線(ICP発光分光法)

3.3.8 計算

3.3.7.2及び3.3.7.3の操作で得た発光強度と3.3.7.4の操作で作成した検量線とからそれぞれの銀量を求め,単位面積あたりの活性酸素量を,次の式2によって算出する。

M=(((m1-m0)/A)/S)×(1/2)・・・(式2)

M
単位面積あたりの活性酸素量(mol・cm⁻²)
m1
試料溶液中の銀検出量(g)
m0
空試験溶液中の銀検出量(g)
A
銀の原子量(107.9g・mol⁻¹)
S
検知板表面積(cm²)

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