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交差点における照明要件(その1) - 照度設定と灯具配置の考え方 -

技術開発室 技術部 技術開発グループ

キーワード

交差点,交通事故,照明要件,視認性,安全安心

5.まとめ

第4章に取り上げた既往研究を「交差点の実態」「明るさに関する知見」「灯具の配置に関する知見」の視点から下記に整理する。

交差点の実態

  • 交差点では,夜間に歩行者が当事者となる重大事故が発生しやすい。
  • 横断待機位置と横断歩道進入直後の歩行者の被視認性が低い。

明るさに関する知見

  • 横断歩道上の鉛直面照度を高くすると,歩行者の被視認性が高まる。
  • 交差点内の照度均斉度が高いと,歩行者の被視認性が高まる。
  • 交差点内の平均路面照度は,周囲が暗い場合でも10ℓxを確保することが望ましい。

灯具の配置に関する知見

  • 設置基準配置+コーナ部に灯具を配置した場合,歩行者の被視認性は高まる。
  • コーナ部に交差点専用照明器具を配置すると,局部照明でも歩行者の被視認性が高まる。
  • コーナ部に交差点専用照明器具を配置すると,設置基準に従った配置と比較して,交差点内の平均水平面照度と平均路面輝度が約2倍,横断歩道上の平均鉛直面照度が約3.4倍(27ℓx)高い値となる。

これらの既往研究により,歩道部や横断歩道部の鉛直面照度を高く設定すると,歩行者の被視認性が向上することが明らかにされた。従って,照明の改善により歩行者が当事者となる重大事故が抑制できる可能性が高いと言える。

歩行者の被視認性を高める効果的な灯具の配置方法としては,図8に紹介するように,設置基準に従った配置に加えてコーナ部に照明設備を増設する方法が提示できる。また,局部配置による場合は,コーナ部に交差点専用照明器具を設置する方法が望ましい。

図8 灯具配置例

以上より,交差点における照明要件を下記のように推測する。また,下記③の要件を考慮すると,少なくとも横断歩道で囲まれた範囲を外側に1m広げた範囲を適切に照明する事が重要であると思われる。

  • ① 車両運転者から,交差点の存在と形状が認知できること
  • ② 車両運転者から,横断中の歩行者などの存在や挙動が容易に確認できること
  • ③ 車両運転者から,横断待機中の横断歩行者の有無が容易に確認できること
  • ④ 車両運転者および歩行者から,進路変更する車両の挙動が確認できること

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第14号掲載記事に基づいて作成しました。
(2006年4月20日入稿)


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