技術資料

低角度UV照射システム - FAS(Full Azimuth Shadowless)UV装置 -

アイグラフィックス株式会社 技術部 産機技術課
アイグラフィックス株式会社 技術部 光学技術課

キーワード

UV硬化装置,タッチパネル,貼り合わせ,低角度,額縁下,サイドキュア

3.特長・機能 (つづき)

3.3 照射対象の冷却

紫外線照射により照射対象の温度は上がってしまうが,ディスプレイモジュールについては限界温度が厳しく定められているため,照射中の冷却が必要となる。

照射中の冷却は,図11に示す照射器直下のミラー構造体にカーテン送風の機能を持たせることで解決した。送風はブロアで行っているが,より強く冷却が求められる場合には,圧縮空気を導入しカーテン送風の加速もできる構造となっている。

図11 照射器直下のミラー構造体による空冷

3.4 低角度照射の評価

紫外線照度計を通常通り使い測定を行うと,低角度照射ユニットを装着した結果は単純に光量が低くなり,低角度照射の評価として適切ではない。

照度計の入射角感度特性が図12の“治具無し”の黒線のように,垂直に入射する光線に対して最大の感度となり,入射する光線が倒れるほど,ほぼcosθの関係で感度が減衰しているためである。

低角度照射の評価としては,窓枠印刷下部硬化への寄与が少ない入射角50°以下の光量は除外して,寄与の大きな入射角70°以上の光量のみを評価の対象としたい。そこで,照度計の測定ヘッドに,図13のように取込角度を制限する治具を装着して評価を行うこととした。角度制限治具は,取込角度を制限するだけではなく,通常感度がない水平に近い入射角までを取り込むためコーンミラーを使い,入射光線を照度計受光部に対して垂直近くに入射するように反射させている。

入射角70°以上取込用の治具を付けた状態での入射角感度特性は,図12の“70°以上取込”の赤線のようになる。

照度計の角度制限治具の外観は図14に示す通りであり,入射角の制限のみではなく方位角方向も半周分に制限している。これは,窓枠印刷部や貼り合わせ側面部への入射が半周分になっていることに合わせるためである。

角度制限治具を使った測定結果を表2に示す。この結果より,低角度照射ユニットによって,照射器のみではない入射角80°以上の光量が出ていることが分かる。

次に,全方位からの照射が行われているかを測定した結果を表3に示す。この結果より,低角度照射ユニットによって形成される低角度照射は,全方位にわたりほぼ均等になっていることが分かる。

図12 紫外線照度計の入射角感度特性,および低角度照射で評価したい領域

図13 紫外線照度計 取込角度制限

図14 紫外線照度計 角度制限治具 装着外観

表2 低角度照射の評価(80°以上取込)
低角度照射ユニット
無し 有り
積算光量[mJ/cm²] 0.0 2087.5
  • 照射条件:8kW点灯,コンベア速度0.4m/min
表3 低角度照射の全方位性
測定状態 治具開口方向 積算光量[mJ/cm²]
・低角度照射の全方位性確認

照射中心位置で照度計角度制限治具の開口方向を搬送方向に対して前後左右の4方向に変えて測定
搬送順方向に
光取込開口
2137.6
搬送逆方向に
光取込開口
2186.6
照射右向きに
光取込開口
2219.2
照射左向きに
光取込開口
2172.0
  • 照射条件:8kW点灯,コンベア速度0.4m/min

4.おわりに

本開発では,低角度の紫外線光照射を行うことにより,窓枠印刷下の樹脂を硬化させることができた。しかし,市場の動向として挟額縁化による遮光部の増加,タクトアップが予想され,さらなる照度アップが必要と考えられる。今後の高出力化と照射効率向上が課題である。

また,今後は本装置を遮光部硬化というプロセスだけではなく,他業界における立体物紫外線照射への応用を検討していく。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第37号掲載記事に基づいて作成しました。
(2017年11月1日入稿)


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