技術資料

LEDioc® FLOOD DUELL™シリーズ - LED高出力投光器 -

株式会社アイ・ライティング・システム 開発部 第一開発課

キーワード

LED,投光器,LEDioc FLOOD DUELL™,省エネ,高出力,軽量

1.はじめに

近年,屋外照明市場もLED化が急速に進み,LED素子とパッケージング技術の進化に伴い,LEDの高出力化が実現できるようになった。当社も,2013年にLED投光器LEDioc FLOOD DUELL™(650W,980Wタイプ)(以下,DUELLと略す)を発売し,それぞれメタルハライドランプ1kW,1.5kW代替品として好評を得ている。

しかしながら,スタジアム等の大型施設での採用を獲得するには,更なる高出力化が必要であり,また,市場では当該商品との競合も始まったことから,従来は無かったメタルハライドランプ2kW代替となるLED投光器の着手した。

また,2kW代替品を流用し,LED投光器シリーズとして,メタルハライドランプ700W,1kW,1.5kW相当品のラインナップ拡充を図った。

以下,LED高出力投光器DUELLシリーズの概要を紹介する。

2.商品概要

本商品は,高出力型LEDパッケージを搭載し,反射鏡と前面カバー(レンズ)の組み合わせにより中角,広角,及び超広角配光を実現している。

また,灯体・放熱モジュールを流用し品種ごとにLEDパッケージを変化させることで,メタルハライドランプ700W,1kW,1.5kW,2kW相当品のシリーズ展開を実現している。図1にDUELL 310W,560W,830W,1100Wの外観を示す。

図1 LEDioc FLOOD DUELL外観図(310W・560W・830W・1100W)

2.1 商品構成

表1に商品構成を示す。本商品はタイプが310W,560W,830W,1100Wの4種類有り,配光が中角,広角,超広角の3種類,演色評価数がRa70,Ra80の2種類(310WはRa70のみ)の合計21種類から構成される。

表1 DUELLシリーズ商品構成
投光器タイプ 配光
タイプ
高効率タイプ
[5000K:Ra70]
高演色タイプ
[5000K:Ra80]
専用LED電源形式
投光器形式 投光器形式
LEDioc FLOOD DUELL
310W
中角 E30501M/N LE148115HS1/
2.4-1
(2台使用)
広角 E30501W/N
超広角 E30501SW/N
LEDioc FLOOD DUELL
560W
中角 E30601M/N E30602M/N LE530200HS2/
2.4-A1
広角 E30601W/N E30602W/N
超広角 E30601SW/N E30602SW/N
LEDioc FLOOD DUELL
830W
中角 E30701M/N E30702M/N LE782295HS2/
2.4-A1
広角 E30701W/N E30702W/N
超広角 E30701SW/N E30702SW/N
LEDioc FLOOD DUELL
1100W
中角 E30801M/N E30802M/N LE1056240HS2/
2.4-A1
広角 E30801W/N E30802W/N
超広角 E30801SW/N E30802SW/N

2.2 外形図

310W,560W,830W,1100Wタイプの外形図を図2~図5に示す。

図2 LEDioc FLOOD DUELL 310Wタイプ外形図

図3 LEDioc FLOOD DUELL 560Wタイプ外形図

図4 LEDioc FLOOD DUELL 830Wタイプ外形図

図5 LEDioc FLOOD DUELL 1100Wタイプ外形図

830Wタイプと1100WタイプはLEDパッケージの個数が異なるのみで,310Wタイプと560Wタイプは器具前面径・高さは同じで奥行きが異なる。

3.機能・特長

表2に本商品の主な特性・仕様を示す。

表2 DUELLシリーズの主な特性・仕様
タイプ 配光 定格
光束
(ℓm)
1/10
ビーム
の開き
(°)
消費
電力
最大値
(200V)
(W)
個有
エネルギー
消費効率
(ℓm/W)
光源色 演色性
(Ra)
LED
モジュール
寿命
(光束維持率85%)
(時間)
質量
(電源別)
(kg)
DUELL 1100Wタイプ
メタルハライドランプ
2000W相当
高効
率形
中角 122000 36 1120 108.9 5000K
相当
70 40000 18
広角 64
超広角 106
高演
色形
中角 110000 36 98.2 80
広角 64
超広角 106
DUELL 830Wタイプ
メタルハライドランプ
1500W相当
高効
率形
中角 94000 36 826 113.8 5000K
相当
70 40000 17
広角 95000 64 115.0
超広角 90400 106 109.4
高演
色形
中角 78000 37 94.4 80
広角 78500 66 95.0
超広角 74500 107 90.1
DUELL 560Wタイプ
メタルハライドランプ
1000W相当
高効
率形
中角 61000 36 560 108.9 5000K
相当
70 40000 15
広角 61500 66 109.8
超広角 58000 106 103.5
高演
色形
中角 50500 40 90.1 80
広角 50500 74 90.1
超広角 48000 92 85.7
DUELL 310Wタイプ
メタルハライドランプ
700・1000W相当
高効
率形
中角 34000 40 310 109.6 5000K
相当
70 40000 15
電源
2個使用
広角 74
超広角 92
共通仕様
本体
アルミダイカスト
前面カバー(レンズ)
ポリカーボネート
放熱フィン
銅,アルミ
設計風速
60m/sec
放熱方式
自然空冷
使用温度範囲
-20~+35℃(夏季など一時的な温度上昇+50℃で使用可能)(DUELL 1100Wタイプは適合外)
耐雷サージ
15KV
2次側配線長
50m
  • 初期照度補正機能付き(310Wは適合外)
  • 調光可能(310Wは適合外)

3.1 既存部品の流用

本商品は,既存器具置換え需要(既存架台等の流用)に対応すべく,従来のHID器具と同等の器具サイズにする必要があった。

そこで,後述する高出力LEDパッケージの採用と放熱構造の改善を実現することで,HID投光器パワービームの前面化粧枠を流用し,従来器具と同サイズ(前面開口径:ø461)を達成することが可能となった。

3.2 高出力LEDパッケージの採用

DUELL 1100Wタイプに採用したLEDパッケージは,従来のDUELLと同じ発光径であるが,内部のLED素子数を1.4倍増加させることで,消費効率の向上,更なる高出力化を実現している。

また,各ワットタイプに適したLEDパッケージ・数量を採用することで,コストダウンを図っている。

3.3 放熱構造

従来のDUELLはLEDパッケージ5個仕様であり,980WタイプにおいてはLEDパッケージ1個当たり940W(LED消費電力)÷5個=188Wの熱量を消費していた。

本商品は,更なる高出力化(1100W)並びに小型化を図る為,LEDパッケージを6個仕様とすることで,1130W(LED消費電力)÷6個=171.7WとLEDパッケージ1個当たりの熱消費量を低減し,温度低下を実現している。図6にDUELL外形寸法の新旧比較を示す。

図6 DUELL新旧外形寸法比較

3.4 配光性能

従来のDUELLは,配光制御を反射鏡のみで行なっており,狭角配光(1/10ビームの開き38°)を達成するため,反射鏡の開口径と奥行きが長くなり,器具のサイズアップに繋がった。(前面開口径ø552)

本商品は,配光制御を反射鏡+前面レンズで対応することにより,従来のDUELLと同等の配向性能(1/10ビームの開き36°)を確保しつつ,器具の小型化(前面開口径ø461)を実現している。表3にDUELLの新旧性能比較を示す。

表3 DUELL新旧性能比較

  • ALEDioc FLOOD DUELL 980(従来品)
  • BLEDioc FLOOD DUELL 1100(新商品)

器具前面径(mm)

  • Aø552
  • Bø461

16%小型化

受圧面積(m²)

  • A0.26
  • B0.17

35%低減

器具奥行き寸法(mm)

  • A456
  • B333

27%小型化

本体奥行き寸法(mm)

  • A200
  • B109

46%小型化

配光性能 1/10ビームの開き(°)

  • A38
  • B36

同等性能

器具消費電力(W)

  • A980
  • B1120

140W高出力化

4.おわりに

本商品は,放熱構造の改善とLEDの高出力化を実現することで,市場をリードするHID2kW代替LED投光器の商品化を達成することが出来た。

しかしながら,2020年に開催が決定している東京オリンピック需要に向け,大型照施設明市場も競争が激化することが予測される。

当社は,重点市場と位置付ける大型施設照明の需要を獲得するために,更なる高出力化商品(HIDショートアーク2kW代替品)を開発し,サッカースタジアム・陸上競技場での採用獲得を目指す。

今後は,DUELLシリーズの狭角配光タイプの開発と,HIDショートアーク2kW代替品をいち早く商品化していく。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第32号掲載記事に基づいて作成しました。
(2015年6月2日入稿)


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