技術資料

自然環境の再現技術・装置
太陽光シミュレーション環境試験機
- Solar Simulation Environment Test Equipment -

光応用事業本部 光応用営業部 営業技術課

キーワード

環境試験,太陽光シミュレーション,評価方法,規格,自動車,建築材料

5.用途5), 6)

5.1 自動車本体向け品質信頼性試験

図4 自動車本体向け品質信頼性試験用装置 外観

自動車本体の品質信頼性試験用装置の外観を図4に,仕様を表6に示す。

この装置は,乗用車1台が入る大容量試験機である。車室内環境試験,インナーパネル,ハーネス,カーエアコンなどのコンポーネンツを実車に組み込んだ状態でのシステム品質信頼性試験,車室内VOC試験などでは,温度,湿度制御に加えて,太陽近似光による日射がテスト条件として不可欠である。車室内に設けられたカーエアコンセンサーによるカーエアコンの自動出力制御のテストにも,光条件は欠かせない条件となっている。

VOCとは,車室内で発生する揮発性有機物のことであり,いわゆるシックハウス症候群の原因物質となり,また大気環境への影響の可能性があるため,自動車各社ではVOC濃度の上限を定め,低減を進めている。

表6 自動車本体向け品質信頼性試験用装置仕様(一例)
光源部 光源 専用メタルハライドランプ
フィルターシステム
波長域 320nmから赤外線域
日射出力 400~1050W/m²
日射均斉度 ±15%以下
光源冷却方法 空冷
温度範囲 無日射時 -40~80℃
日射時 0~80℃
その他
仕様
使用可能周囲温度 0~35℃
調温調湿ユニット 送風機,加熱機
冷凍機ユニット 空冷一体型 屋外設置
操作盤 タッチパネル式 日射出力調節・温度調節・記録計
電気容量 AC200V 3W3φ 112kVA
本体寸法(外形) (W)4250×(D)8430×(H)3080mm
質量 4000kg

5.2 自動車部品向け品質信頼性試験

図5 自動車部品向け品質信頼性試験用装置 外観

自動車部品の品質信頼性試験用装置の外観を図5に,仕様を表7に示す。

自動車のハンドルやシート,インナーパネル,外装材など,コンポーネンツ単位で性能評価を行う装置である。建築材料の品質信頼性試験においても,温度変化,日射条件が製品にどのように影響するかの試験結果を得ることが可能である。

表7 自動車部品向け品質信頼性試験用装置仕様(一例)
光源部 光源 専用メタルハライドランプ
フィルターシステム
波長域 320nmから赤外線域
日射出力 400~1050W/m²
日射均斉度 ±15%以下
光源冷却方法 空冷
温度範囲 無日射時 -40~80℃
日射時 0~80℃
その他
仕様
使用可能周囲温度 0~35℃
調温調湿ユニット 送風機,加熱機
冷凍機ユニット 空冷一体型
操作盤 タッチパネル式 日射出力調節・温度調節
電気容量 AC200V 3W3φ 30kVA
本体寸法(外形) (W)2400×(D)1600×(H)2525mm
質量 1600kg

5.3 太陽電池向け中型試験機

図6 太陽電池向け中型試験機 外観

太陽電池向け中型試験機の外観を図6に,仕様を表8に示す。

太陽電池セル/モジュールの出力測定評価試験をするのに最適な中型試験機である。オプションのXY放射強度測定装置を装備することで,X軸とY軸の日射量を自動的に測定し出力調整できるため,より詳細な測定が可能である。

表8 太陽電池向け中型試験機仕様(一例)
光源部 光源 専用メタルハライドランプ
フィルターシステム 出力制御フィルター
波長域 320nmから赤外線域
日射出力 400~1050W/m²
日射均斉度 ±10%以下
光源冷却方法 空冷
温度範囲 日射時 10~80℃
その他
仕様
使用可能周囲温度 0~35℃
調温調湿ユニット 送風機,加熱機
冷凍機ユニット 水冷式
操作盤 パソコン式 日射出力調節・温度調節・記録計
電気容量 AC200V 3W3φ 55kVA
本体寸法(外形) (W)3600×(D)2700×(H)2800mm
質量 2800kg

5.4 太陽電池向け小型試験機

図7 太陽電池向け小型試験機 外観

太陽電池向け小型試験機の外観を図7に,仕様を表9に示す。

太陽電池セル/モジュールの出力測定評価試験をするのに適した小型試験機である。前項の中型試験機と比べて小型・省スペースとなっている。

表9 太陽電池向け小型試験機仕様(一例)
光源部 光源 専用メタルハライドランプ
フィルターシステム 出力制御フィルター
波長域 320nmから赤外線域
日射出力 400~1050W/m²
日射均斉度 ±15%以下
光源冷却方法 空冷
温度範囲 日射時 10~80℃
その他
仕様
使用可能周囲温度 0~35℃
調温調湿ユニット 送風機,加熱機
冷凍機ユニット 空冷一体型
操作盤 タッチパネル式 日射出力調節・温度調節・記録計
電気容量 AC200V 3W3φ 22kVA
本体寸法(外形) (W)1954×(D)1704×(H)1854mm
質量 850kg

5.5 太陽光シミュレーション日射装置6), 7)

太陽光シミュレーション日射装置の照射中内部写真を図8に,制御装置の外観図を図9に示す。

この装置は,ヒートアイランド現象(都市の温暖化)の研究のために温度成層風洞上に太陽の役割として設置されている。風洞下面の都市模型にメタルハライドランプの光を当て,温度上昇の変化をシミュレートすることで,ヒートアイランド現象のコンピュータ解析を行っている。より自然な光環境を再現するために,電源装置には多灯用のインバータ式電子安定器を採用し,スムーズな日射強度の調節が可能である。

図8 太陽光シミュレーション日射装置の照射中内部写真

図9 太陽光シミュレーション日射装置制御装置の外観

6.おわりに

日射装置用として開発された各種ランプがラインアップしたことにより,様々な使用用途や設備の規模,各種の要求事項に応じてランプが選択できるようになった。

現在,スペクトル合致度がもっとも良いAクラスも達成し,さらに,発光効率の改善や分光スペクトルの変化の低減など,特性の改善を目指している。

また,新たな用途に応じたランプおよび装置の品種拡大も行っていく予定である。

参考文献

  1. カタログ「光照射環境試験装置 SSEC05.10」,岩崎電気(2007).
  2. カタログ「ソーラーシミュレーション SSEC2.09.12」,岩崎電気(2011).
  3. 岩崎電気ウェブサイト 納入施設例 独立行政法人 建築研究所 太陽光シミュレーション日射装置 (2012).

Summary

The reliability and the safety under various environmental conditions are called for, and in order to perform the check, various test equipments are used for the product used on the outdoors, such as a car and building materials for residences. I introduce the solar simulation environmental test equipment which used Artificial Sunlight.

この記事は,公益社団法人日本冷凍空調学会発行『冷凍 空調・食品と生物・環境とエネルギー』第87巻第1020号,15-19頁(2012年10月号)に掲載された記事を,許可を得て,一部レイアウトを変更して転載したものである。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第27号掲載記事に基づいて作成しました。
(2012年6月29日入稿)


テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。