技術資料

LED高天井用照明器具 レディオック ハイベイ ラムダ™ LEDioc HIGH-BAYΛ™

株式会社アイ・ライティング・システム 機器技術部 第一機器技術課
岩崎電気株式会社 製造統括本部 照明部 商品開発課

キーワード

レディオック ハイベイ ラムダ™,LED,高天井,省エネ,CO₂削減,長寿命,初期照度補正

1.はじめに

近年,地球温暖化の問題から省エネ要求が高まりLED照明が普及してきている。さらに2011年3月の東日本大震災による電力不足から同年夏は東京電力と東北電力の管内で大口需要先に対し最大電力を前年夏より15%削減するよう求める電力使用制限令が発令されるなど【省エネ】の必需性が広がってきている。そして,2012年の夏においても原子力発電所の停止により電力削減の要求が予測され,LED照明化が急速に進んできている。これは,工場や体育館などの高天井照明においても例外ではなく,LED化の要求が高まってきたことから,既存のメタルハライドランプ400W+セードの代替えとなり大幅な省エネ効果を可能とする最上級の高効率で,コンパクトで軽量となる電源一体型のLED高天井照明器具の開発をスタートすることとした。

2.商品概要

器具の外形・構造を図1に示す。

図1 外形・構造図

3.特長・機能

3.1 放熱構造の採用により高効率化を実現

高出力の LEDを高効率でコンパクト・軽量な高天井器具の開発には,LEDから発生する熱を低減することが最大の難問であった。既存の技術では,1Wクラスの低ワットLED各々の距離を離して配置することが考えられるが,それでは器具が大きくなり質量が増すことから,コンパクト化・軽量化が困難となる。

そこで,業界最高クラスの25W高効率LEDを8個採用し,さらに以下の対策を行うことで,ø297とコンパクトで60000時間の長寿命化を実現した。(特許出願中)

  • 本体(LED発光部)と電源部に空間を設け電源とLEDから発生する熱を分離する構造
  • 本体と前面カバーの中央に空間を設けたドーナツ形状
  • 本体から電源部への配線通路と兼用した通気口の採用
  • 前面カバーに内部の熱を逃がす通気口の採用
  • 高さの異なる適切な放熱フィン設計

3.2 本体にマグネシウム合金を採用により軽量化

当社の既存商品のHID高天井器具用併置形安定器の質量は

  • HID 200W:6.5kg
  • HID 250W:7.0kg
  • HID 300W:7.5kg
  • HID 400W:8.0kg

となる。これに対して,本器具は,前述の放熱構造を採用した場合でも,本体材質が従来のアルミダイカストの設計では8kg以上となり,開発目的であるメタルハライドランプ400W(HID400W)やそれ以下のワットで取付ける構造体によっては質量がオーバーし,置き換えができない可能性が出てくる。そこで,さらに軽量化を図るため,比重がアルミダイカストの2.7に対して1.8と2/3軽量であるマグネシウム合金を本体に採用し,その専用の設計を行った。これによりさらに軽量化を進め,器具質量6.5kgの軽量化を実現し,既設がHID200Wの場合でも置き換えが可能な質量を実現した。

3.3 高効率化による高い省エネ効果

前述の放熱構造と高効率25W LEDパッケージ×8個の搭載に加え,反射鏡にアルミ増反射膜処理を行うことで24000ℓm(広角配光)を実現した。これにより215Wの消費電力で,固有エネルギー消費効率111.6ℓm/Wとなる業界最高クラスの明るさと効率を実現し,従来のメタルハライドランプ400W(消費電力415W)と同等以上の照明効果を得ることができ,約53%の省エネ効果とCO₂削減が可能となる。

以下に,商品構成(表1)と仕様(表2),2種類の配光特性図(図2),HIDメタルハライドランプ400W高天井器具との比較(表3)を示す。

EHCL22202DN/SA1/2/2.4(中角配光)

EHCL22203DN/SA1/2/2.4(広角配光)

図2 配光特性

表1 商品構成
名称 製品形式 配光種類 LED
レディオック ハイベイ ラムダ EHCL22202DN/SA1/2/2.4 中角 5000K
Ra70
EHCL22203DN/SA1/2/2.4 広角
表2 仕様
項目 仕様
本体材質 マグネシウム合金
電源ケース材質 アルミ押出
直付用フランジ アルミダイカスト
前面カバー材質 アクリル
塗装仕様 ポリエステル樹脂粉体焼付塗装
LED 25W×8個
使用周囲温度 -10℃~40℃
質量 6.5kg
周波数 50Hz/60Hz共用
入力電圧 100V,200V,242V
消費電力 215W,215W,214W
調光機構 初期照度補正
調光機能付
希望小売価格 185,000円

図3は32m×20m,高さ8mのエリアで従来型HID(メタルハライドランプ)400W+セードの照度分布(維持)である。図4は,今回開発したLED高天井器具レディオック ハイベイ ラムダ(広角配光)の図3と同設定での照度分布(維持)である。図3と図4の比較により,目標とする結果が得られている。

この結果より照度分布において,HID(メタルハライドランプ)400Wを使用した場合と同等以上の性能をもたらすことがわかる。

LED照明化による顧客要求は,消費電力削減による省エネである。HID400Wと該当LED高天井器具との省エネ比較を表3に示す。本商品のLED高天井器具では,照度が1.25倍で約53%の大幅な省エネ効果を実現する。

表3 HID400WとLED高天井器具(本商品)との比較

  • Aメタルハライドランプ400W SAW413図3
  • BLED 200W (25W×8) 5000K EHCL22203DN/SA1/2/2.4図3

平均照度

  • A527ℓx
  • B657ℓx

明るさ1.25倍

消費電力

  • A14525W
  • B6825W

約53%省エネ

光源寿命

  • A12000時間
  • B60000時間

定格寿命5倍

3.4 初期照度補正機能による過剰な電力の削減

光源光束は,HID,LEDに関わらず初期から寿命末期までに減少する。そのため,照明設計は寿命末期での維持照度にて設計を行うことが一般的であることから初期では過剰な明るさと消費電力が発生する。そこで,初期照度補正機能により寿命末期を想定した光源光束値を初期から設定し,LED光源の光束量を一定とすることで過剰な消費電力を抑え,さらなる省エネが可能となる。図5にランプ点灯時間に対する光源光束及び消費電力(設計値)の変化を表4にその設計値を示す。

図5 点灯時間に対する光源光束と消費電力の変化

表4 初期照度補正の設計値

点灯時間 初期照度補正無し 初期照度補正有り
光源光束比 0h 100% 85%
30000h
(平均)
93% 85%
60000h
(寿命末期)
85% 85%
消費電力比 0h 100% 80%
30000h
(平均)
100% 90%
60000h
(寿命末期)
100% 100%

4.おわりに

現在の世界情勢は,地球温暖化の問題から省エネの要求が高まっている。さらに日本においては,震災以降の電力不足により原子力発電を使用していくかどうかの状態にあり,今後もより一層の省エネが必要とされていく。今回,従来のHID照明から50%以上の省エネを実現するLED高天井器具の紹介をしたが,今後もこのような大幅に省エネできる商品開発を,思い切ったチャレンジで推進していき,社会に貢献していきたいと考える。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第26号掲載記事に基づいて作成しました。
(2012年6月4日入稿)


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