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技術資料

道路照明の視認性評価に関する研究動向

技術開発室 技術部 技術開発グループ 魚住 拓司

キーワード

道路照明,ビジビリティ,可視度,視認率,レビーリングパワー

1.はじめに

長引く不況による公共事業予算の削減やCO₂排出量の低減に代表される地球環境への配慮が背景となり,道路照明には大きな変化が起こりつつある。各メーカーともに様々な取り組みを行なっており,例えば環境への取り組みではランプの長寿命化や高効率化,器具の光害対策や高照明率化,低コスト化ではストレートポールの普及や,低位置照明,遮音壁照明に代表される設置方法の工夫,またカウンタービーム,プロビームなどの配光をもつ器具などがあげられる。これらの新しい道路照明の試みは,低ワット化や低ポール化,広スパン化への取り組みの一例であり,従来の道路照明の基本前提である均一で明るい視環境から,必要最低限の明るさで従来と同等以上の視認性を確保しようという考え方への変換を示唆しているものでもある。しかし,この考え方には問題点がある。その問題点とは,この低エネルギー道路照明が本当に走りやすい視環境を確保しているかどうかを予測評価する方法がなく,評価するためにはフィールド実験を行なう以外にないことである。このため,各研究機関は道路照明の視認性に関する予測評価方法を確立する研究を盛んに行なうようになった。本稿ではこれら次世代の道路照明の視認性を評価する方法について,最近の動向を紹介する。

2.障害物による視認性評価

走行しやすい道路照明には,路上に存在する障害物や歩行者を一定の距離から容易に発見できる視環境を有している必要がある。一定の距離とは危険を判断しブレーキを踏み,スムーズに止まれる距離であり,時速80km/hで100mがその目安とされている。そのため,道路照明のフィールド実験では,ある障害物を照明区間内に配置し,100m先からその指標が見えるか否かで,その安全性を評価している。障害物にも一定の条件が存在し,大きさが20×20cmで反射率20%の正方体を用いるのが一般的である。20cm角という大きさは,これより小さければ自動車の下をくぐりぬけるため安全上問題とされないからであり,反射率20%は実態調査により適当とされた結果である。この反射率の調査については第3節にて記述する。

3.障害物の反射率

図1 歩行者の衣服の反射率とその累積存在確率

図1 歩行者の衣服の反射率と
その累積存在確率

障害物の反射率をどのくらいに設定するべきかについては,1938年に英国のSmith1)が研究を行っている。Smithはロンドンの街路を歩く歩行者の衣服の反射率を調査し,シルエット視における累積存在確率を求めた。図1がその結果であり累積存在確率90%は反射率20%に相当している。これはシルエット視において反射率20%の物体が視認できれば,それ以下の反射率の物体は全て視認できる事を示しており,よって路上に存在する9割の歩行者を視認できることになる。このSmithの研究結果は広く知られており,我が国においても障害物の反射率を設定する上での根拠として現在まで活用されている。

4.障害物の反射率に関する最新の調査

日本道路公団(以下JH)2)は,道路照明のフィールド実験で使用する障害物反射率の妥当性を調べるために道路落下物の現場調査を行っている。これはSmithの測定対象が歩行者の反射率であり,実際の障害物を調査したわけではないからである。JHの調査は東名高速道路の清水~菊川間約54kmで実施しタイヤ,プラスチック,空き缶など2280個の落下物を採取した後,Smithと同様にその反射率別累積存在確率を示した。その結果,反射率20%の存在確率は約60%と,歩行者の衣服を調査したSmithとは多少異なる結果となっている。ただし,このJHの調査では障害物の固さ,重さ,形状など危険度に関する重み付けがされておらず,参考レベルでの調査結果に留まっている。

参考文献

  1. Smith, F.C.:Reflection Factors and Revealing Power, Trans. Illum. Eng. Soc.(1938).
  2. 岡田,他:高速道路照明設計に用いる限界対象物について,照明学会全国大会(2002).

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