技術資料

促進耐候性試験機の現状

光応用事業部 光応用開発部 ソフトエンジニアリング課

キーワード

促進耐候性試験機,キセノンランプ式,メタルハライドランプ式,太陽光

5.試験結果が合わない要因

試験規格が定められている試験については基本的には規格内容を遵守し試験を行なえばよいわけであるが,メンテナンスの有無や使用する試験機の機種・メーカーが取引先と異なる場合,両者の試験結果が整合しないことがある。同様に,取引先指定の試験条件で試験を行なう際でも,取引先での試験結果と合わない場合がある。

メンテナンスではオープンフレームカーボンアーク式耐候性試験機でのガラス製フィルターのローテーションや使用時間,試験機を問わずシャワー用の水質,ランプ・フィルターの使用時間などが適切に管理されていないと試験結果に大きな影響を及ぼす。

また,同一条件の試験でのメーカー間の格差も指摘されている。一例として日本塗料工業会で報告された試験結果の相違例を図8に示す。耐候性試験機の場合は業界としての認識が薄く,対応が不十分な面があった。このような状況を踏まえ現在では少しずつではあるが,試験結果の精度向上の取り組みが進んでいる。

一般的な促進耐候性試験機では,光・熱・水以外の劣化因子は原則として無く,NOx,SOx,オゾン,酸性雨といった因子は含まれていないため,実際の使用時には促進試験で起こらないような劣化が生じる場合がある。これらの因子に弱いと考えられる試料やこれらの因子が環境中に多く存在する場所で使用される試料については他の試験を併用するのが望ましい。

図8-ウレタン塗装(白)の各社キセノンランプ式耐候性試験機による光沢度保持率の経時変化

6.おわりに

屋外暴露にしても促進耐候性試験にしてもかなりおおまかな試験であり,あまり当てにならないのでは?とお考えの人も多いかもしれない。しかし,時代の流れの速い現代では屋外暴露だけでは対応は不可能である。ユーザーの皆さんが促進耐候性試験とうまく付き合うことが開発のスピードアップにつながるものと確信している。

注)本稿は,「第85回ラドテック研究会講演会予稿集」pp.19-24(2003年)に掲載された記事を一部修正したものである。

参考文献

  1. 各種耐候性試験機の調査研究,社団法人日本塗料工業会(2002年4月).
  2. 高分子劣化・崩壊の<樹脂別>トラブル対策と最新の改質・安定化技術,高分子物性研究会(1982年5月).
  3. 各社耐候性試験機カタログ.

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第9号掲載記事に基づいて作成しました。
(2003年10月14日入稿)

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