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技術資料

海上橋用道路灯 - PAZU®の用途開発 -

国内営業事業部 営業技術部 営業技術企画グループ 坂田信之
機器事業部 商品開発部 屋外開発グループ 井上博文

キーワード

海上橋,道路灯,遮光,PAZU®,高圧ナトリウムランプ

1.はじめに

海上橋用道路照明器具に求められる要件は,道路交通に必要な照明要件を確保するだけでなく,橋梁周辺を往来する船舶への有害な光をなくして船舶航行上の安全性を確保するとともに,周辺自然環境に配慮することである。特に橋梁上の照明器具からの光が海面上に漏れると,その直射光や海面で反射した光が船舶の航行に障害となる恐れがあるため,海面上への漏れ光を少なくすることが要求される。(下図1,2参照)

図1 東京湾アクアライン橋梁部道路照明

図1 東京湾アクアライン橋梁部道路照明

図2 東京湾アクアライン夜間遠景

図2 東京湾アクアライン夜間遠景

海上橋用道路照明器具は既に種々の方法で研究開発されているが,従来の器具は,前述の要件を満足するには特殊遮光ルーバーが必要となるため大型であり,また振動にも耐えられるよう強固に製作されており,非常に高価格である。

本稿では,経済的な海上橋用道路灯としてPAZU®に特殊ルーバーを内蔵させ器具開発を行った。その設計要件と概要について報告する。

2.海上面への光漏れの制限

海上に対する道路照明の照度規制の多くは,船舶に対する検討を行っている。これは,道路照明施設から漏れる光が,夜間付近の海上を航行する船舶の航海士などの視覚に対して影響を与えるからである。

これまでの調査研究結果1)より,航海の船舶の操船に影響を与えない条件として,

  1. 海面への光の漏れは,橋から200m離れた海上で40cd以下に制限する
  2. 海面に映る照明器具の輝度を0.1cd/m²以下に制限する

ということが報告されている。

これにより本州四国連絡橋関係の海面規制照度は,最大照度0.01ℓx以下とされている。

これに対し,関西新空港連絡橋では,橋梁部の設置箇所が都市部のため,他施設より発する光自体で天空輝度が上がる事から,その影響自体が海面にも影響している事実より,海面規制照度を最大0.1ℓx以下としている。(これは,本州四国連絡橋周辺の新月時の海面上照度が0.05~0.1ℓxであるのに対し,関西新空港周辺では,0.6~0.9ℓxと推定されたからである。)

代表的な海上橋照明における海面上照度制限の事例を表1に示す。2)3)4)5)

表1 代表的な橋梁照明海面照度値
橋梁名 海面規制照度値
本州四国連絡橋 因島大橋 0.01ℓx以下
同上 明石海峡大橋 0.01ℓx以下
同上 来島海峡大橋 0.01ℓx以下
関西空港 空港連絡橋 0.1ℓx以下
東京湾横断道路 アクアライン 0.01ℓx以下

なお,本州四国連絡橋関係は航路上に関する海面照度規制値であり,「島嶼部」や「本土部」については,航路上ほどの規定はなく,0.1ℓxとしている。

これらのことから,海面照度規制値の考え方としては,航路上の場合は天空輝度を考慮し「0.01ℓxか0.1ℓx」とし,航路外で操船に影響をあまり与えない場合は「0.1ℓx」とする考えが妥当であろうと判断できる。

3.設計条件

設計上のポイントは,海上面への光漏れを制御するとともに,良好な路面輝度特性を満足するものとし,次の条件で設計を行った。

3.1 構造上の条件

  1. 道路設計条件:片側2車線(3.5m×2)
  2. 路面舗装:アスファルト舗装
  3. 照明方式:ポール照明方式
  4. 灯具取付高さ:10m
  5. 灯具取付間隔:30m
  6. 海上より路面までの高さ:30m
  7. 道路断面及び照明器具取付位置は,図3による。
図3 道路断面及び照明器具取付位置図

図3 道路断面及び照明器具取付位置図

3.2 光学設計条件

(1)路面輝度

道路照明における路面輝度は,所要条件として重要な要因の一つである。

一般に海上橋では,交通に影響を及ぼす光が周辺にほとんど存在しないことから,日本道路協会「道路照明設置基準」6)に基づき,路面輝度を0.5cd/m²とした。

(2)総合均斉度・車線軸均斉度

道路照明における均斉度は照明の質を表すもので,障害物の見え方に影響する総合均斉度Uoと,運転者に不快感を与える車線軸均斉度Ulがあり次の定義で表されている。

総合均斉度
Uo=最小輝度/路面平均輝度
車線軸均斉度
Ul=最小輝度/最大輝度

本検討では,Uoは0.4以上,Ul=は0.5以上に設定した。

(3)海上面への光漏れの制限

海上面への光漏れは,最大照度0.01ℓx以下(有効航行範囲内)に設定した。

以上,設計条件をまとめると表2のようになる。

表2 設計の条件
項目 所要条件
平均路面輝度 0.5cd/m²
総合均斉度(Uo) 0.4以上
車線軸均斉度(Ul) 0.5以上
海上面照度 0.01ℓx以下
海上から道路までの高さ 30m
ポール間隔 30m
ポール高さ 10m
保守率 0.75

参考文献

  1. (社)建設電気技術協会:「海峡部長大橋照明設備に対する検討報告書」,昭和55年3月(1980).
  2. 亀山,近藤,平岩,吉川,白尾:空港連絡橋の道路照明,照明学会誌,79(3),pp.120-123(1995).
  3. 新井,中島,唐沢,川上,多田:明石海峡大橋の道路照明設備,照明学会誌,83(1),pp.57-61(1999).
  4. 並木,松下:照明のデータシートNo.1123「東京湾アクアライン橋りょう道路の照明」,照明学会誌,83(1),pp.7-8(1999).
  5. 正林,中島,明野,尾身,唐沢,尾瀬:来島海峡大橋の道路照明設備,照明学会誌,83(7),pp.469-470(1999).
  6. (社)日本道路協会:道路照明設置基準・同解説(1981).

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