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施設報告

高円寺純情商店街の照明

国内営業本部 営業技術部 LCS 小田 正志
国内営業本部 東京営業所 岩田 昌之
国内営業本部 東日本技術設計センター 鵜川 広之進

キーワード

LED,商店街,街路灯,投光器,LEDioc FLOOD NINO™

1.はじめに

1.1 施設の概要

小説の舞台ともなった高円寺純情商店街(東京都杉並区)は,JR高円寺駅北口の駅前広場から始まる,杉並区の代表的な商店街である。商店街を含め,駅前一帯は毎年8月下旬に開催される高円寺阿波踊りの会場となっている。2009年に近隣に完成した舞台芸術の創造と発信,及び,地域に根ざした文化活動の拠点となる「座 高円寺」との連動を目指し,2011年度に街路景観の再整備とあわせて街路灯の整備が計画された。

街路灯を設置・改修する範囲としては2つあり,拡大商店街エリアと既存商店街エリアに分かれている。拡大商店街エリアは,高円寺北口駅前の東側の線路沿いに拡張し,再整備されるエリアで,「座 高円寺」につながっている。既存商店街エリアは,高円寺北口駅前から北側一帯に広がる以前からある商店街である。

1.2 照明設備設置の背景と目的

1.2.1 拡大商店街エリア

道路照明は東京都建設局の施工でHID道路照明器具が設置される予定であったが,歩道照明は商店街の施工となり,「座 高円寺」と関係性をもたせ,商店街への回遊性を高めるような照明デザインが行われることになっていた。

1.2.2 既存商店街エリア

以前に行われた照明改修から約30年が経過し,街路灯が寿命となっている。また,夏期の電力不足の影響で,節電が必要とされるようになっていた。この節電を環境対策としてLED街路灯を設置することにより,経済産業省,東京都,杉並区から補助事業の支援が得られる。これらのことから,従来の水銀ランプ照明をLED照明に代替することとなった。

1.3 課題

1.3.1 拡大商店街エリア

照明イメージは,2色の舗装タイルにより商店街の活気を表現した複数の円形模様を照らしだすスポット状の光や,「座 高円寺」との照明イメージの連携を重視した影絵のようなサインを投影するといった案が,商店街とコンサルタントにより先行して計画が進み,決定していた。これらの照明手法は公共の道路では以前には見られなかったもので,スポット状の光やサインと歩道の明るさのバランスの取り方が課題となった。

1.3.2 既存商店街エリア

既設の照明の建て替えとなり,環境対策になるLED照明器具であることに加え,商店街の活性化に役立つ要素がデザインに求められた。また,コンサルタントには,商店街の照明は明るすぎ,商店の看板や店内が目立っていないという認識があった。これらの条件から空間照度をどのように確保するかが課題となった。

2.照明設計

2.1 設計コンセプト

照明のコンセプトは,「従来の器具のかたちに主張がある街路灯ではなく,明かりそのものが主役の照明。だから,街路灯自体はデザインはシンプルにする。」である。

照明器具自体を輝かせて目立たせるのではなく,照射対象である路面や歩行者を照らすことを主な目的として,照明設備は最小限の要素のみとし,店舗や看板が放つ光を引立てようというものであった。

明るさのレベルは,店舗内からの漏れ光などにより,人通りの多い時間帯には路面も明るくなっていることから,深夜の通行に支障の無い最低のレベルが確保できていればよいとされた。

2.1.1 拡大商店街エリア向け照明器具

商店街とコンサルタントによる計画に対応するため,次の2点をコンセプトとした。

  1. スポット状の光を出せるように,指向性のあるLEDユニットを複数個組み合わせる。
  2. 器具を目立たせないように,コンパクトな照明器具にする。

このコンセプトを実現するために,LEDモジュール複数個を収める1つの大きな照明器具ではなく,小さな照明器具を複数個設置するようにし,灯具が小さく見えるデザインにすることにした。

ポールを含めたデザインがコンサルタントから複数案提示されたが,機能性やコストを考慮した結果,コンパクトでシンプルなLED投光照明器具「レディオック フラッド ニノ™(LEDioc FLOOD NINO™)」をそのまま採用することにした。

2.1.2 既存商店街エリア向け照明器具

課題に対応するため,次の2点をコンセプトとした。

  1. 拡大商店街エリアと連動したデザインにする。
  2. まぶしさを感じさせないように,グローブのない照明器具を使用する。

2.2 照明手法

2.2.1 拡大商店街エリア向け照明器具
図1 拡張商店街エリア4灯用照明器具

図1 拡張商店街エリア4灯用照明器具

歩道部分の平均路面照度5ℓx,照度均斉度0.2以上が道路照明施設設置基準の指針となっているため,それを満たすようにHID道路照明を考慮しながら,灯数,配置,照射方向や配光の組み合わせの検討を行った。

照明イメージを再現するため,1基につき照明器具を4灯組み合わせるようにし,歩道照明の照度均斉度が高くなるように,街路灯の設置位置はHID道路照明の中間に近くなるようにした。検討の結果,均斉度が指針を下回らないように,2灯をレンズフード付,2灯を広角配光という組み合わせにした。

光色は「座 高円寺」と照明イメージを連携させるために,3000Kの電球色とした。(図1)

2.2.2 既存商店街エリア向け照明器具
図2 既存商店街エリア8灯用照明器具

図2 既存商店街エリア8灯用照明器具

車道部分は平均路面輝度0.5cd/m²,輝度均斉度0.4が道路照明施設設置基準の基準となっているため,それを満たすように灯数,照射方向や配光の組み合わせの検討を行った。

この既存商店街エリアでは,スポット状の光を照射する照明デザインではなかったため,光が広がる広角配光の照明器具を使用した。車歩道一体の箇所に設置される街路灯には4灯,車歩道が分離している箇所に設置される街路灯には8灯を組み合わせた。

光色は拡大商店街エリアと統一させるために,3000Kの電球色とした。(図2)

2.3 設計特性

2.3.1 拡大商店街エリア向け照明器具

「レディオック フラッド ニノ」は途中まで開発が進んでいたため,試作品の配光データが活用できた。その配光を使用して照明シミュレーションで検討したところ,スポット状の光を実現するには標準の狭角配光では難しかった。

そのため,特注のフード,またはシャープな光を投影できるように,前面にレンズを組込んだものを製作することにし,モックアップにより実験を重ねて検討した。

検討の結果,配光制御の関係上,フードは内蔵反射鏡の径まで細くする必要があり,長さも調節する必要があった。しかし,構造上困難なため,フードの長さが一定で,内蔵フィルターによりスポット状の光の大きさの調節が可能な,フード+フレネルレンズによる制御となった。

歩道部分は平均路面照度5ℓx,照度均斉度0.2以上を満足している。(図3,表1)

図3 拡張商店街エリア照度分布図

図3 拡張商店街エリア照度分布図

※曲線上の数値は路面の維持水平面照度を示す。(単位:ℓx)

表1 範囲および維持照度(ℓx)
  歩道1 歩道2
維持平均照度(ℓx) 15.0 11.1
最大照度(ℓx) 101.4 102.0
最小照度(ℓx) 5.7 3.0
照度均斉度
(最小/平均)
0.380 0.271
2.3.2 既存商店街エリア向け照明器具

車道部分は平均路面輝度0.5cd/m²,輝度均斉度0.4を,歩道部分は平均路面照度5ℓx,照度均斉度0.2以上を満足している。(図4,5,表2,3)

図4 既存商店街エリア駅前広場照度分布図

図4 既存商店街エリア駅前広場照度分布図

図5 既存商店街エリア歩車分離部照度分布図

図5 既存商店街エリア歩車分離部照度分布図

※曲線上の数値は路面の維持水平面照度を示す。(単位:ℓx)

表2 範囲および維持照度(ℓx)
  歩道
維持平均照度(ℓx) 9.8
最大照度(ℓx) 32.2
最小照度(ℓx) 3.4
照度均斉度
(最小/平均)
0.345
表3 範囲および維持照度(ℓx)
  歩道1 歩道2
維持平均照度(ℓx) 9.7 9.7
最大照度(ℓx) 28.7 28.7
最小照度(ℓx) 2.0 2.0
照度均斉度
(最小/平均)
0.206 0.206
2.3.3 設置数量

当該施設に使用した照明器具の設置数量は,次の表4のとおりである。改修前の消費電力は表5のように57.1kWであったため,改修後には85.6%もの省エネを実現した。

表4 改修後種類別設置数量
種類 灯数 1基あたり消費電力 ポール本数 合計消費電力
駅前広場・車歩道分離部 8灯用 131.2W 24基 8.2kW
車歩道一体部 4灯用 65.6W 52基
拡大商店街エリア歩道部 4灯用 65.6W 25基
表5 改修前種類別設置数量
種類 使用ランプ・灯数 1基あたり消費電力 ポール本数 合計消費電力
4灯用 HF200W×3灯+HF100W×1灯 795W 28基 57.1kW
3灯用 HF250W×2灯+HF100W×1灯 670W 52基

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