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施設報告

パソナ社植物育成施設における照明設備

光応用事業部 光応用営業部 第三営業課  荒井 広充
国内営業事業部 営業技術部 中央技術設計センター  岡田 卓也,和泉 親士,立場川 一広
技術開発室 技術研究所 環境技術グループ  田澤 信二

キーワード

パソナO₂,植物育成施設,人工光源,光放射応用,照明設備

1. はじめに

植物育成施設「パソナO₂」は,農業分野の雇用の創出を目的に,体験,研修,情報発信の場として2005年5月に首都東京の大手町野村ビル地下2階に開設された。このような閉鎖空間で植物を生産する場合,最も重要な因子は「光」である。

植物を人工光源で成育させようとする場合,光源の波長特性,光質バランスや光強度,より効果的な照射時間や手法,経済的な照射等,光環境を制御する技術が重要とされる。以下に,植物育成に関する光放射応用の基礎的な概略と「パソナO₂」の照明設備について紹介する。

2. 植物育成照明(波長範囲,光質バランス,光強度等)

地球上のほとんどの植物は,太陽からの自然光を選択吸収しながら成育している。図1には,植物の成育に必要な波長範囲として400~700nmの光合成有効放射,300~800nmまでの生理的有効放射を示す。図2には,自然昼光と人間の眼の視感度曲線,植物の光合成の平均作用曲線を示している。自然昼光は,400~500nmの青色光にピークがあり,人間の眼では,500~600nmの範囲でピークは555nm近辺に存在する。一方植物では,光合成の基本的波長範囲は,400~700nmとされ,赤色光は,675nmのピークと625nmに小さなピークがあり,青色光は,440~450nmにピークがある。

図1 植物育成に必要な光放射の波長範囲

図1 植物育成に必要な光放射の波長範囲

図2 平均光合成作用曲線

図2 平均光合成作用曲線

各色の光質バランスは,青色光23.5%,緑色光32%,赤色光44.5%となっている。一般的に,青色光が多ければ葉は厚く,背丈は抑制気味となり,赤色光が多ければ葉は薄く,背丈は促進気味となる。さらに,青色光(B)と赤色光(R)または,赤色光(R)と遠赤色光(FR)との光質バランスも植物の成育に影響を与える。数種の作物では,B/R比が1.1~1.7が良いとされ,トマトは,1~7が,イネの幼植物では,3のとき乾物重は最高だが,実成長は0.9が適当であるなど,植物の種類や成育段階によって大きく変動するようである。また,R/FR比についても,自然昼光では1.1前後であるが,インゲンやオオムギでは,R/FR 比を1とした場合に成育が良く,オオムギでは,FRがあるときのみ花成と茎の伸長が認められた。しかしながら,トマトの果実収量ではFRが少ないほど収量が増えるなど,こちらも植物の種類と成育段階で変化するようである。1),2)

表1は各種作物の光飽和点と光補償点を示す。基本的には花成・稔実する作物は高い光強度を必要とする。従って,植物工場では光飽和点の低く栽培期間の短い葉菜類が栽培されている。さらに経済的な観点から飽和点の80%程度の光強度を採用する場合がある。

表1 各種作物の光飽和点と光補償点
作物名 光飽和点(kℓx)
( )内は光量子束密度
光補償点(kℓx)
( )内は光量子束密度
備考
イネ 40~50 0.5~1.0 Murata,1961
(672~840) (8~17)
オオムギ 50 --- Takeda,1978
(840)
ダイズ 20~25 1.0~1.5 Bohning&Burnsaide,1956
(336~420) (17~25)
トウモロコシ 80~100 1.8 Hesketh&Moss, Hesketh,1963
(1344~1680) (30)
バレイショ 30 --- Chapman&Loomis,1953
(504)
トマト 70 --- Tatsumi&Hori,1969
(1176)
ナス 40 2.0
(672) (34)
メロン 55 0.4
(924) (7)
エンドウ 40 2.0
(672) (34)
ミツバ 20 1.0
(336) (17)
レタス 25 1.5~2.0
(420) (25~34)

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