技術資料

太陽電池の光を用いた環境試験並びに当社の環境試験機

光応用部 光応用開発課

キーワード

太陽電池,環境試験,ソーラーシミュレータ,複合環境シミュレータ,評価方法,規格

要旨

太陽電池モジュール,セル,使用部材の耐久性の評価方法は多岐に渡る。その中でも太陽光下で使用される太陽電池モジュールについては光を用いた環境試験が多い。本報では太陽電池モジュールを中心とした評価方法・規格を概説し,また当社で扱っている環境試験機について述べる。

Abstract

There are many test methods of PV (Photovoltaic) modules, cells, and materials. I am used under light of the sun in that. PV modules that are used outdoor have many environmental examinations using the light. I introduce an evaluation method / the standard mainly on PV modules. In addition, I describe environment testing equipment treating in Iwasaki Electric co., ltd.

1.はじめに

太陽光発電は,環境負荷の低い次世代エネルギー供給システムとして脚光を浴びている。発電に用いられる太陽電池モジュールは屋外で使用されるため耐候性を含めた長期の信頼性が求められている。そこで,太陽電池モジュールとそれを構成するセル及び各種材料について光を用いた評価方法と試験装置について概要を紹介する。

2.評価方法

2.1 規格・測定

環境試験関連の評価では,IEC(国際電気標準会議)規格,JIS(日本工業規格),ASTM(米国材料試験協会)規格などに規定がある。代表的なものには,認証試験規格IEC61215,IEC61646,耐UV試験規格IEC61345,安全規格IEC61730-1がある。

また,環境試験の前後には測定を行うが,それに使われるソーラーシミュレータの仕様についてはIEC60904-9などに規定されている。JISでは,IEC60904-9 ed1.0の対応規格であるJIS C 8912,アモルファス太陽電池測定用のJIS C 8933,多接合太陽電池測定用のJIS C 8942などがある。

測定にはクラスBBA以上のソーラーシミュレータが一般的に使われる。ここでクラスBBAとは,最初のアルファベットがスペクトル合致度のクラス評価がB,2番目は放射照度の場所むらのクラス評価がB,3番目は照度時間変動率のクラス評価がAであるシミュレータを表わしている。スペクトル合致度は基準太陽光との合致具合いを比率で表したもので1が最も良い。

当社では複合環境シミュレータやパルス光ソーラーシミュレータをラインナップしている。複合環境シミュレータは,光,温度,湿度の制御が行える装置であり,負荷をかけながら出力測定が可能である。クラスCCAからBBAまでのシミュレータとして,また耐久性の評価機としての使用を想定している。図1に複合環境シミュレータの外観を,表1に仕様の一例を示す。放射照度は波長範囲が規定されていない場合は全波長域でのものとなる。

また,パルス光シミュレータ(AAA,IEC60904-9Ed2.0による)の外観を図2に示す。

図1 複合環境シミュレータの外観

図2 パルス光ソーラーシミュレータ(AAA,有効面積1100×1400mm)の外観

表1 複合環境シミュレータの仕様(1例)
照射範囲 300×300mm
光源 メタルハライドランプ
放射照度 1000W/m²
スペクトル合致度 クラスB(0.6~1.4)またはクラスC(0.4~2.0)
放射照度の場所むら クラスB(5%以下)またはクラスC(10%以下)
放射照度時間変動率 クラスA(1%以下)
ワーク温度 25~90℃
湿度 20~90%RH
  • ※IEC60904-9Ed2.0による。

2.2 耐候性試験

各種耐候性試験機を用いた評価である。規格はJIS C 8917,C 8938などに規定されており,サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機を基本としているが,他の光源も使用可能である。

屋外暴露試験については,IEC61646,61215などに規定があり,60kWh/m²の照射を行う。また,製造メーカでは10~20年の保証を行っていることから,20年以上の長期間暴露も行っており,その結果は製品にフィードバックされている。

図3 アイスーパーUVテスターとアイスーパーキセノンテスター

また,耐候性については規格以外の試験も多く行われている。これは他の製品と同様に促進性や相関性,また特定の試験機でしか得られない劣化モードを使いたいといった目的ごとに試験機を使い分けている。当社では耐候性評価用にキセノンランプ,メタルハライドランプ式の耐候性試験機をラインナップしている。図3にアイスーパーUVテスターとアイスーパーキセノンテスターの概観を,表2に両機種の比較を示す。

表2 アイスーパーUVテスターとアイスーパーキセノンテスターの比較

アイスーパーUVテスター アイスーパーキセノンテスター
光源 メタルハライドランプ+
限定波長295~450nm
水冷ジャケット
キセノンランプ+フィルタ
特長 太陽光の数10倍の紫外線で促進性を高めた 各種規格試験に適合
結露サイクル,サイクル前後のシャワーあり 試料ドラムを交換することで高照度
(48~200W/m²)に対応可
放射照度 150±8mW/cm²(300-400nm) 30~120W/m²(300-400nm)

2.3 ホットスポット耐久試験

太陽電池モジュールは一部が日陰になったり,セル不良になったりするとその部分で逆バイアスが発生し過熱する可能性があり,その場合の耐久性を評価する。IEC61215では700W/m²以上,場所むら±2%以内,時間変動率±5%以内のシミュレータとクラスCCC以上のシミュレータを使うことが規定されている。またIEC61646ではクラスCCB以上のシミュレータが使われる。カバーを取り付け,一部を遮光した状態で必要な照射を行う。

当社では,複合環境シミュレータをラインナップしている(図1,表1を参照)。

2.4 UVプレコンディショニング試験,UV試験

温度サイクル/結露凍結試験の前にモジュールに紫外線を照射し,UV劣化を受けやすい材料の耐久性を評価するのがUVプレコンディショニング試験であり,IEC61215,61646に規定がある。また,UV試験単独の規格がIEC61345に規定されている。どの規格についても1SUN程度の照度の場合300hr程度の照射を行う必要がある。

当社ではUVプレコンディショニングテスター(1SUN,5SUN)をラインナップしている。UVプレコンディショニングテスター(1SUN)の外観と内部の様子を図4に,仕様を表3に示す。

図4 UVプレコンディショニングテスター(1SUN)の外観と内部の様子

表3 UVプレコンディショニングテスター(1SUN)の仕様(1例)
照射範囲 1200×1700mm
放射照度 約50W/m²(300-400nm)
放射照度場所ムラ ±15%以下
モジュール温度 60±5℃

また,UVプレコンディショニングテスター(5SUN)の外観と内部の様子を図5に仕様を表4に示す。

図5 UVプレコンディショニングテスター(5SUN)の外観と内部の様子

表4 UVプレコンディショニングテスター(5SUN)の仕様
照射範囲 1700×1850mm
放射照度 50~250W/m²(300-400nm)
放射照度場所ムラ ±15%以下
モジュール温度 60±5℃

2.5 光安定化

薄膜,化合物系のモジュールでは連続的な光照射により出力が変化するものがある。そのため,CCCのシミュレータもしくは太陽光下で光安定化した後に測定を行う。IEC61646に規定されている。モジュール温度は50±10℃で600~1000W/m²で照射を最低43kWh/m²以上行い,最大出力が安定化したときの放射照度を測定する。その後目視検査,絶縁検査,標準試験条件での測定を繰り返し行い,評価する。当社ではライトソーキングテスター,複合環境シミュレータをラインナップしている。ライトソーキングテスターの外観と内部の様子を図6に仕様の1例を表5に示す。

図6 ライトソーキングテスターの外観と内部の様子

表5 ライトソーキングテスターの仕様(CCA,1例)
照射範囲 1100×1400mm
放射照度 800~1,000W/m²
スペクトル合致度 クラスC(0.4~2.0)
放射照度場所ムラ クラスC(10%以下)
放射照度時間変動率 クラスA(1%以下)
モジュール温度 40~60℃

2.6 低放射照度での性能試験

25℃,200W/m²で評価を行う。クラスBBB以上のソーラーシミュレータが使われる。

2.7 その他

環境試験ではないが,温度係数の測定などにもシミュレータが使われる。光を使わない試験としては,環境試験(温度サイクル,高温高湿,結露凍結,降ひょう)や,端子強度,機械的荷重,ねじり,湿潤もれ電流などに関する試験がある。

3.おわりに

太陽電池に関連する光を用いた環境試験と当社でラインナップされている装置を紹介した。太陽電池はグリッドパリティ(他の発電方式と等価コスト)を目指して効率化,コストダウンの開発が進んでいき,それに応じて規格試験の要求精度も高くなってくる。今後は,規格に対応した試験機は元より顧客のニーズに合った新しい試験機を随時提案していきたい。

参考文献

  • 日本工業規格(JIS)
  • IEC規格
  • 岩崎電気カタログ「Solar Simulation」
  • ※この記事は,日本試験機工業会発行「TEST」Vol.15(2010年4月号)季刊;pp.9-10に掲載された記事を一部修正したものである。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第22号掲載記事に基づいて作成しました。
(2010年3月23日入稿)


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