技術資料

地中埋込アッパーライト

株式会社アイ・ライティング・システム 機器技術部 第三機器技術課

キーワード

地中埋込,アッパーライト,省施工,電子安定器,セラルクス®,LED

4.特長・機能

本商品の開発ポイントは,安全・安心の観点から前面ガラス温度を抑えることと,施工性の簡素化を考慮して埋め込み深さを浅くしたことである。

また,不具合の要因が判断しやすい構造とすることに重点を置き,商品化を行った。

4.1 低温形器具(形式:HCW0311BHE(/SD))

図5 低温形外観

第1弾の温度設定では,国際規格:IEC 60598-2-13の地中埋込み器具分類一覧(表1)の「2)限定的に接近可能な区域」の温度100℃を目標数値とし開発を行ったが,低温形器具ではガラス表面温度を60℃に設定した。万が一,人が触れても火傷などの事故が起きないように配慮している。従来使用できなかった,不特定多数の人が前面ガラスに触れる恐れのある場所(保育園やプールは除く)で使用できる。(図5)

4.1.1 中間ガラス構造

図6 中間ガラス構造

第1弾で発売の70W器具(HCW0702BHE)をベースとし,セラルクス®T35Wを主光源とする。HCW0702BHE同様に2重ガラス構造を採用し,ランプ光中心位置を165mmとする。(HCW0702BHEは150mm)

ガラスの2重構造は,前面ガラスの表面温度を下げ,なおかつ器具深さを浅くする上で非常に有効な手段である。

また,前面ガラスと中間ガラスの間隔は30mmとしているが,これ以上離しても温度差は小さいことから30mm間隔とした。(図6)

4.1.2 灯体3層構造

図7 3層構造

器具を灯体部・安定器部・結線部の3層構造とし,各層の間でそれぞれ防水構造を持たせている。

この3層構造にすることで,例えば結線部において施工時にミスが発生した場合でも,結線部は浸水しても,安定器部や灯体部には浸水しないため安全性が向上する。また,各層を分けることにより浸水部分の判断が容易である。(図7)

4.2 浅形器具

ペデステリアンデッキなどの人工地盤や地中に他の埋設物(電線等)がある場所では埋め込み深さに制限があり,第1弾の埋め込み深さ(35W=380mm,70W=430mm)では対応出来ないため,埋め込み深さの浅い器具の開発を行った。

形式 埋込深さ
HCW0321(2)BHE(/SD) 295mm
FCW0101(/SD) 295mm
ECW001411(2)SA1 180mm
ECW003611(2)SA1 220mm
4.2.1 結線構造

図8 結線部(図はHCW0321BHE)

この浅形器具では,従来の3層構造ではなく,電子安定器を灯体内部へ内蔵することで,埋め込み深さを浅くすることにした。

しかし,問題となるのが電源接続時の防水不良である。一般的に行われているのが,器具内部に電源線を引き込み内部結線しケーブルグランド等で防水を図るものだが,この方法だとケーブルグランドの締め忘れや誤った電線の挿入などによる施工ミス(器具内浸水)が起こっている。

そこで浅形器具では,口出し線方式を採用し,埋め込みボックス内で電源接続することとした。また,接続後の処理方法として,充填材を同梱包している。この充填剤を使用することで漏電に対し安定した施工が行えるようにした。(図8)

4.3 LED構造

図9 一体ユニット

ECW003611(2)SA1では,前面ガラス・反射板・LED・放熱フィン・電源が一体のユニットとなっており,施工性が向上している。(図9)

また,ユニットは灯体に固定する方向がフリーなので,360度照射方向が変更できる。

光源部(LED)は鉛直方向に対して約20度以内で傾斜可能である。

4.4 安全性

4.4.1 前面ガラス滑り止め防止加工

図10 前面ガラス表面外観

滑り止め防止加工ガラス(/SDタイプ)をラインアップした。歩道や公園等の人が通行する場所に設置した場合,雨などによりガラス面が濡れて歩行者がスリップ・転倒する危険があるが,これを抑制するために前面ガラスに滑り止め加工(ガラス表面に丸状の凹凸を付ける)を施している。(図10)

4.5 防水性能

JIS規格(JIS C 0920(9.2.8 防浸形照明器具/IPX7))の「一時的潜水」に基づき試験し,合格した。更に,水中でのランプ点灯・消灯を約6ヶ月間繰り返し行ったが,浸水は見られなかった。

5.おわりに

第2弾の発売により商品バリエーションは豊富になってきたが,今後も更なる開発を行っていく。

具体的には,今回,セラルクス®T35Wでは別仕様となっている浅形と低温構造を併せ持った浅形低温器具の開発を行っていく。

また,LEDも高ワットLEDへの切り替えを行い,その上で器具のコンパクト化を図っていこうと考えている。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第20号掲載記事に基づいて作成しました。
(2009年5月29日入稿)


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