技術資料

HID投光器 超ワイド配光看板灯 - アーバンビュー®ブロードβ -

株式会社アイ・ライティング・システム 機器技術部 第一機器技術課

キーワード

ワイド配光,看板,投光器,省エネ,CO₂削減

1.はじめに

昨今,LEDを使った照明が賑わっているが,屋外市場においてはまだ,その光束量,演色性,豊富な色温度などの点で,HID照明に勝るものは無い。 その中でも看板灯市場においては,LEDの進出は遅く,インクジェット印刷のあざやかな色調を表現することの出来るセラルクス®の効果が高いこと,LED器具の高額(初期投資高)が受け入れられていないこと,などからHIDランプの特長が効果を発揮する市場である。

また,看板面上側から照明した場合,ブラケット照明として店舗入り口や,入り口前の駐車エリアの照明として活用できる効果もあるので,HID照明は,これを効率良く利用することにより,その価値がさらに発揮されるものである。

しかし,地球温暖化対策としてのCO₂削減の要求は本格的にあり,LEDが当該市場に展開されるのは予測できるため,今回,看板灯市場最大のマーケットのひとつであり,従来300W反射形セルフバラスト水銀ランプで行なわれてきた高さ1~1.5m程度の横長看板照明を,電気量や灯数を減らし,省エネ=CO₂削減をHIDランプで実現できる器具を「超ワイド配光看板灯」として開発することとした。

2.商品概要

本商品の外形・構造を図1に示す。

図1 外形・構造図

3.特長・機能

(1) ポリカ・グローブの採用による安全性確保と軽量化

三重管70Wセラルクスの採用により,当該投光器はランプの前に破裂対策が無くても良いが,前面にポリカーボネートグローブを配置することで,屋外で使用可能な防雨形として使用環境を大幅に拡大することができる。また,頭上設置の可能性が高い当該投光器にとってのガラス破損による落下の危険性を回避でき,質量も軽量となる。さらに,ポリカーボネートグローブにより,照射面端部への照射もカットされること無く,効率良くワイド照射が可能となり,目標の性能を達成できた。(図2参照)

図2 ランプ中心部 断面図

(2) 配光制御技術によるワイド照射の実現

当該投光器の反射鏡は,アルミダイカスト本体にアルミ蒸着処理を行ない,さらに増反射膜処理で反射効率を引き上げる構造を採用している。 これにより,正反射成分を多く確保することや,各反射面の照射方向を的確に制御可能となり,従来,制御が困難であった面にも照射することにより,出幅1m,高さ1~1.5mに対し幅4mの照射が可能となった。

図3に該当投光器の照度分布図を,図4に従来のアーバンアクトβポケットの照度分布図を記載する。

横長看板照明において,図4の従来品は,光の広がりが不十分であり,灯数を増やす必要があるが,図3の該当投光器では,幅4mの看板の端部まで広がっており,1灯で十分な照射が可能である。

図3 超ワイド配光看板灯 照度分布図

器具
HCF0776BHE
ランプ
MT70CE-W/EU10
器具出幅
1m
平均照度
630ℓx
消費電力
81W

図4 従来品 アーバンアクトβポケット(広角配光)照度分布図

器具
HCF0773BHE
ランプ
MT70CE-W/G12
器具出幅
1m
平均照度
459ℓx
消費電力
81W

図5 従来照明(ランプホルダ3台使用)照度分布図

器具
S00F/W-L14
ランプ
BHRF100/110V/300WH
器具出幅
1m
平均照度
510ℓx
消費電力
882W

(3) 優れたCO₂排出量削減効果

当該投光器では,従来の,ランプホルダを使用した300W反射形セルフバラスト水銀ランプ3灯分の平均照度を70W1灯で確保することができ,均斉度良く,ハレーションを低減させた照明を当該市場に提案することが可能となった。図5にランプホルダを使用した従来照明の照度分布を示す。また,表1に該当投光器と従来照明の性能比較を掲載する。

図3,図5及び表1から示されるように,同等以上の照度分布でCO₂排出量を90%以上削減することが可能である。

本商品により,従来最も多くの照明場面を演出していた300W反射形セルフバラスト水銀ランプ用ホルダを使用した看板照明市場において,地球温暖化対策を促進できるHID商品を当該市場に提案することが可能となり,大幅なCO₂削減商品として拡販が見込める。

表1 該当投光器 vs 従来照明 性能比較

アーバンビューブロードβ 従来照明(ランプホルダ使用)
器具 HCF0776BHE S00F/W-L14
ランプ MT70CE-W/EU10 BHRF100/110V/300WH
消費電力/(器具1台当り) 81W 294W
灯数 1灯 3灯
平均照度 630ℓx 510ℓx
TOTAL消費電力 81W 882W
比率(消費電力費,CO₂排出量) 9.2% 100%

(4) 省施工

電子安定器を内蔵しており,器具と安定器との配線が必要なく省施工であるβシリーズの特長を引き継いだ商品である。

なお,本商品は,希望小売価格を69,800円を予定している。

4.おわりに

当該投光器の開発により,省エネはLEDに頼るのではなく,配光制御とそれを最大限引き出せる技術・構造開発により,HIDランプによっても実現できることがわかった。前述したように,当該市場においてはまだLEDの脅威は迫っていないが,岩崎電気グループとしては,HIDランプによる照明でも省エネ=CO₂削減の大きな可能性を示すことができたと考える。今後の商品開発にこの技術・手法を応用展開し,更なる高効率の実現により,省エネ商品の開発に繋げて行きたいと考えている。

また,当該市場でもLED商品が出てくることも予想され,競合他社の動向は常に把握しながら展開し,将来の商品化においては,当社が先頭に立っていきたいと考えている。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第20号掲載記事に基づいて作成しました。
(2009年6月4日入稿)


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