Home > IWASAKIテクニカルレポート > 技術資料 > 生物への光応用技術 光の殺菌・滅菌への利用

技術資料

生物への光応用技術 光の殺菌・滅菌への利用

光応用事業部 光応用開発部 木下 忍

キーワード

紫外放射,殺菌,空気殺菌,表面殺菌,水殺菌,パルス光殺菌

1.はじめに

われわれ人類は細菌やカビなどの微生物と共存することで生活ができているが,逆にその微生物により人命まで奪われてしまうこともある。特に近年,ノロウイルス,鳥インフルエンザ,院内感染などの言葉が新聞やテレビから毎日のように見聞される。これらのわれわれには有害な微生物も,われわれの生活の進化により変性したものも多い。また,人類自体も微生物制御された生活環境の中での生活から,有害微生物に対する抵抗力も低下してきているのではないだろうか。そのような状況の中で,われわれは有害微生物と今後も戦っていく必要があり,さらに環境負荷などを考えた,後世に問題を残さない最適な対策方法を考えなければならない。

そのような環境の中,光を利用した殺菌・滅菌処理が食品分野,医薬・製薬分野,農業分野,半導体分野など多くの分野で利用されている。今回はこの光の産業利用について紹介する。

2.光殺菌の歴史

それでは最初に光殺菌の歴史を振り返ってみよう。この光の中で紫外放射(線)(以下,UVという)の殺菌作用は,1901年に太陽光線に含まれるUVから確認されたといわれている。それから1世紀が経過した現在,UVを発生させるランプにより広範囲の分野でこの殺菌が有効に利用されている。

日本では,1950年代に入り,UV殺菌ランプ(低圧水銀ランプ)を理髪店のUV消毒器に装備することが厚生省により義務付けられた。現在,UVを発生させるランプにより殺菌する方法が,熱発生が少なく残留の心配もいらない環境にやさしい処理として,広範囲の分野で有効に利用されている。1970年代に入り,スイスのブラウン・ボベリ社(BBC)により高出力化したUV殺菌ランプが開発された。それにより,食品・飲料分野や医療分野などの多くの会社でUV殺菌の効果が再認識された。

日本企業も1980年代に入り,高出力化したUV殺菌ランプを開発し販売を開始している。1990年代には,効果確認などの検証能力や運用能力などのレベルも上がり,UV殺菌ランプも高出力化されたことから,工業的な利用が定着し,そのラインに要求される最適なランプや周辺機器が提案できるように,装置がラインナップされた。さらに,2000年代に入り,パルス的に高照度を出せるキセノンランプなどの新しいUV光源の利用なども進められている。

3.光照射でなぜ殺菌できるか?

図1 紫外線の波長別殺菌効果[JIS Z 8811より]1)

図1 紫外線の波長別殺菌効果[JIS Z 8811より]1)

光による殺菌は,簡単にいうと微生物の細胞(特に核)に光が照射されることで細胞内では光化学反応が起こり,遺伝情報が伝わらなくなり,細胞分裂ができず,増殖できないことを利用している。光といってもどんな光でも効果があるのではなく,殺菌に作用する波長範囲があり,この光の波長と殺菌作用との関係を図1に示した。図から分かる通り,UV-Cの領域(100~280nm)のUVが殺菌作用を示し,特に260nm付近のUVが最大に作用する。

また,一部の菌では光殺菌後に可視光を照射すると再度光化学反応で元の状態になり,生き返る(光回復現象)ものもある。

参考文献

  1. 照明学会編:照明ハンドブック(第2版),(株)オーム社,p.507(2003).

テクニカルレポートに掲載されている情報は、原稿執筆時現在の情報です。ご覧になった時点では内容変更、取扱い中止等がされている場合がありますので、あらかじめご了承ください。

このページの先頭へ