技術資料

超高圧水銀ランプの「ちらつき」抑制波形の検討

光源事業部 光源開発部 回路設計グループ
光源事業部 映像光源部 映像光源技術グループ
東洋大学 工学部 電気電子工学科 佐藤 剛之,五十嵐 雅

キーワード

超高圧水銀ランプ,プロジェクタ,ちらつき,パルス電流

3.実験1

3.1 方法

図7 実験したランプ電流波形

実験1では,矩形波点灯波形に重畳するパルス電流の位置と方向を変化させ,「ちらつき」抑制効果について検証した。

図7が今回実験したランプ点灯電流波形である。重畳するパルス電流の方向が矩形波半波の電流方向に対して正と負の2種類,位置が矩形波半波の前・中・後の3種類で,通常の矩形波とあわせて合計7種類となる。

点灯周波数は100Hzとし,重畳したパルス電流は,パルス幅0.28ms,ピーク値2.8A0-pとなるようにした。

それぞれの波形で各3本の120Wランプを1000時間点灯し,500時間及び1000時間点灯時点での「ちらつき」を測定した。

測定は,ランプをプロジェクタ用の光学系にセットして40インチのスクリーンに投影し,スクリーン中央の照度を0.2秒間隔で2時間測定して,各測定値の直前の測定値からの変化を百分率(%)で表し「ちらつき」の大きさとした。従って,1回の測定で35999個の[ちらつき]データが得られることになる。

3.2 結果

(1)「ちらつき」分布

各大きさの「ちらつき」の分布を表の形にまとめ,500時間点灯時点での結果を表1に,1000時間点灯時点での結果を表2に示す。試験中に点灯維持できなくなったランプもあるため,各大きさの「ちらつき」の数は波形ごとに各測定回の平均値で示している。

「ちらつき」の大きさは,2%未満ではほとんどの人が感じられず,2~5%では感じられる人がだんだん増え,5%以上はほとんどの人が感じられるレベルである。

500時間,1000時間どちらにおいても,波形1(通常の矩形波点灯)では,5%を超える大きな「ちらつき」が観測されたが,波形2から7のパルス電流を重畳した場合はいずれも5%以下の「ちらつき」であり,「ちらつき」抑制効果があることが確認された。

表1 500時間点灯時の「ちらつき」結果
  測定数 ちらつき(%)
1~2 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8
波形1 1 317 20 19 22 11 1 1
波形2 3 0 0 0 0 0 0 0
波形3 2 71 20 7 1 0 0 0
波形4 2 5 3 0 0 0 0 0
波形5 3 424 123 6 0 0 0 0
波形6 3 85 2 0 0 0 0 0
波形7 2 1 0 0 0 0 0 0
表2 1000時間点灯時の「ちらつき」結果

測定数 ちらつき(%)
1~2 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8
波形1 1 11 8 33 32 15 16 12
波形2 3 1 0 0 0 0 0 0
波形3 2 8 1 0 0 0 0 0
波形4 2 39 4 0 0 0 0 0
波形5 3 291 30 0 0 0 0 0
波形6 3 460 61 16 5 0 0 0
波形7 2 42 0 0 0 0 0 0
(2)電極形状

図8は波形1で点灯し大きな「ちらつき」が発生しているランプの,図9は波形2で点灯し「ちらつき」のないランプの,それぞれ500時間点灯時の電極形状である。

図8では写真左側の電極先端が削れて上下が突き出した形になっている。アークが上下の突き出しを移動する時に大きな「ちらつき」が発生するものと思われる。それに対し,図9では電極中央に突起が保たれており,安定したアークの発生起点となっている。

図8 波形1で点灯したランプ

図9 波形2で点灯したランプ

また試験後のランプ発光管の観察では,波形2で点灯したランプは,発光管が白く濁ってしまう失透といわれる部分の面積が他のランプより大きかった。波形2は「ちらつき」抑制効果は大きい反面,ランプ寿命が短くならないか確認が必要である。


テクニカルレポートに掲載されている内容は、原稿執筆時点の情報です。ご覧の時点では内容変更や取扱い中止などが行われている可能性があるため、あらかじめご了承ください。