Home > IWASAKIテクニカルレポート > 技術資料 > 中赤外線ヒータ - 中赤外線ランプヒータと照射器の開発 -

技術資料

中赤外線ヒータ - 中赤外線ランプヒータと照射器の開発 -

株式会社秩父イワサキ 技術部 技術課

キーワード

赤外線ヒータ,ランプヒータ,赤外線,中赤外線

1.はじめに

これまで弊社では,産業用・工業用の熱源としてハロゲンランプヒータを製作してきたが,近年,半導体製造装置を中心に加熱事業に対する需要が高まってきており,ランプの引き合いや出荷数量の割合が増えてきている。

ハロゲンランプヒータは,赤外線の中でも近赤外線と呼ばれる短波長側にピークを持つ波長の分類に分けられ,応答性やコンパクト性に優れている。そのため,急速で微細な加熱性能が要求される半導体の分野等では,いまだにハロゲンランプヒータに変わる熱源は存在しないといわれている。

一方で,塗料の乾燥や液体加熱などの分野においては,近赤外線のハロゲンランプヒータの使用率は少なく,一般的にはニクロム線等を発熱体にし,近赤外線よりも長波長側の中赤外線域にピーク波長を持つ,中赤外線ヒータが幅広く使用されている。中赤外線ランプヒータのピーク波長は水分の吸収波長と合致しているため,最適な熱源といわれている。

弊社では以前より中赤外線ランプヒータの開発を進めてきたが,このたびお客さまよりご要望があり,お客さまの要求仕様に沿った中赤外線ランプヒータと,ヒータを組み込む照射器の開発を行った。

2.装置概要

照射器外観図を図1に,中赤外線ランプヒータの仕様と寸法図をそれぞれ表1と図2に,既存のハロゲンランプヒータとの比較を表2に示す。

本製品は,お客さま既存の生産ラインの仕様に合わせて設計された加熱ユニットである。弊社の中赤外線ランプヒータの構造は,市場に出回っている他社製品に比べて構造が簡略化され,製造コストを抑え,信頼性を上げた仕様となっている。

また,照射器はお客さまの生産ラインに合わせた寸法・形状となっており,必要な加熱ゾーンを十分に照射できる仕様となっている。

図1 照射器外観

図2 中赤外線ランプヒータ寸法図

表1 中赤外線ランプヒータ仕様
型式 QMIR160V1200WR/700T
消費電力 1200W±84
ピーク波長 約2.6μm
発熱体温度 約850℃
寿命 20000時間
全長 700mm
発熱長 600mm
バルブ仕様 ツインチューブ
表2 ヒータ比較表

中赤外線ヒータ ハロゲンヒータ
赤外線分類 中赤外線 近赤外線
ピーク波長 約2.6μm 0.8〜2.0μm
発熱体 カンタル線 タングステン
発熱体温度 800〜950℃ 1500〜3000℃
最大電力密度 20W/cm 250W/cm
寿命 20000時間 5000時間
立上り時間 60〜120秒 1〜2秒
応答性
制御性
コンパクト性

3.特長・機能

3.1 簡略化されたランプヒータ構造

図3 構造比較

他社製品との構造の比較を図3,図4に示す。図3にあるように,他社製品はヒータ端部(非発光部)の接続部品が多いのが見て分かる。

図4の詳細図にある通り,他社製品はフィラメント側リードと外部リード線側を溶接にて接続されているが,市場では当該部の外れによる断線が発生することがある。比べて弊社製品は部品点数が少なく,かつフィラメント側と外部リード線側を機械的にジョイント端子でカシメて接続しているため,外れによる断線するリスクが少ない。

<他社製>

<弊社製>

図4 構造比較詳細

3.2 反射効率

図5 他社製比較

他社製品との反射膜の違いを図5に示す。他社製品は反射膜に金膜を使用しているが,弊社製品の反射膜はホワイト膜を採用している。図6は弊社にて行った反射膜の違いによる反射効率(照度,昇温)の比較試験の結果である。

  1. 照度比較について
    初期段階(0時間)では10%程度ホワイト膜が高く,2500時間後には25%程度の差に広がった。
  2. 昇温比較について
    初期段階(0時間)では10%程度金膜が高いが,2500時間後にはほぼ同じ値となった。

この要因は,点灯時間を重ねていくうちに金膜は昇華し,反射効率が次第に落ちていくことによるものである。比べてホワイト膜の方は,点灯時間を重ねていく中でも膜が昇華することなく,反射効率を落とさない性能であることがわかる。

中赤外線ヒータの寿命は20000時間程度になるため,弊社が採用したホワイト膜の方が長時間安定した加熱が実現できる。また,金膜とホワイト膜は主材料費にも差があり,ホワイト膜は金膜に比べてコストを大幅に抑えることができる。

図6 反射膜比較データ

3.3 放熱効果

照射器本体の外観を図7,図8に示す。本照射器には最大10本の中赤外線ランプヒータが搭載可能である。

一般的に,照射器には水冷や空冷等の冷却手段を取り,照射器側の金属の膨張,変形を防ぐ方法がある。当製品は設備上の関係で冷却機構を付けられないことから,最大10本のヒータの熱量でも影響を受けないよう,照射器には反射板(図7)とC形の金属部品(図8)を取付けている。なお,反射板自体が熱膨張により変形しないよう,反射板は分割式としている。

図7 反射板

図8 C形の金属部品(C鋼)

4.おわりに

本製品の開発により弊社の加熱分野の幅は広がり,今までのハロゲンランプヒータだけでは対応できなかった中赤外線の分野にも可能性を示すことができた。そのため,今後は近赤外線から中赤外線の波長をコントロールした設計で,お客さまのご要望に応じた最適な製品の提案を進めていく。

産業用の赤外線ランプヒータは仕様が多岐にわたり未知な部分は多いが,今後も弊社の技術と経験を活かし,幅広い分野に対応可能な製品の開発を行っていく。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第41号掲載記事に基づいて作成しました。
(2020年5月21日入稿)


テクニカルレポートに掲載されている情報は、原稿執筆時現在の情報です。ご覧になった時点では内容変更、取扱い中止等がされている場合がありますので、あらかじめご了承ください。

このページの先頭へ