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技術資料

IoT照明制御システム

IoT・新規事業推進室 大嶋 航介

キーワード

IoT,照明制御,API,DMX,カラーコントローラ,クラウド,Link-Core®

1.はじめに

近年,機器をインターネットに接続し,情報交換することにより相互に制御を行う「IoT(Internet of Things)」の考えが注目されている。さまざまな機器をインターネットに接続することにより,これまでにないサービスの提供や業務の効率化,省エネが実現できると期待されている。

そこで,照明機器においてもインターネットを経由して制御を行える「IoT照明制御システム」の開発を行った。

照明器具より先に,照明制御装置へIoTを導入した理由として,段階的なIoTの導入がある。IoTにより提供されるサービスの利便性は,インターネットに接続された機器(IoTデバイス)が多いほど高くなる。つまり,利便性を最大にしようとすれば,すべての照明器具をインターネットへ接続する必要がある。

しかし,既存の照明器具はインターネットへ接続されていない。また,さまざまなカテゴリーの照明器具すべてにIoTを導入するには時間がかかるため,段階的にIoTを導入していく必要がある。IoT照明制御システムは,複数の既存の照明器具を一括で制御できるため,多くの照明器具へIoT導入のメリットを与えることができる。IoT照明制御システムでは,スマートフォンやパソコンから遠隔で照明の点灯状態の確認・変更,故障の監視などが行える。

本稿では,今回開発した「IoT照明制御システム」について説明する。

2.IoTとAPI1)

本章ではIoTとAPI(Application Programming Interface)について説明する。

図1にIoT化社会のイメージを示す。IoTの定義はさまざまだが,総務省の報告書によれば,「IoTのコンセプトは,自動車,家電,ロボット,施設などあらゆるモノがインターネットにつながり,情報のやりとりをすることで,モノのデータ化やそれに基づく自動化などが進展し,新たな付加価値を生み出す」2)とされる。

図1 IoT化社会のイメージ

図2 GUIとAPI

このIoTの定義の中の「モノ同士が情報のやりとりをする」ための仕組みの一つに「API」がある。

IoTデバイスとの情報のやりとりにより,さまざまな“データ”や“機能”が利用可能になる。しかし,同じデータや機能であったとしても,業界団体などによって規格化されていない限り,IoTデバイスごとにデータ形式や機能の実行方法は異なるため,その詳細は開発メーカーしか知りえない。取得データ,機能を多くの人に利用してもらえるようにデータ形式,実行方法などを仕様化したものが「API」である。

APIと類似した言葉にGUI(Graphical User Interface)がある。図2にGUIとAPIの関係を示す。

GUIは,人(User)が視覚的(Graphical)に機能を実行しやすいように用意された窓口(Interface)を指す。一方,APIは,ソフトウェア(Application Program)が機能を実行しやすいように用意された窓口(Interface)を指す。

APIを利用することで,IoTデバイス同士の「情報のやりとり」を容易に行うことが可能となる。

3.システム構成

2章で述べたように,IoTデバイスが連携し,新しい付加価値を生み出すためにAPIは重要な役割を果たす。IoT照明制御システムでも,他のIoTデバイスと容易に連携をとれるようAPIを実装した。

本章では,「IoT照明制御システム」の概略について説明する。図3にIoT照明制御システムの構成を示す。本システムは,大別して「操作端末」,「クラウドサーバ」,「IoT制御装置」,「出力機器」から構成される。

図3 IoT照明制御システム構成

操作端末は,スマートフォンや種々のIoTデバイスを指す。ユーザーは操作端末から出力機器を操作したり,現状の制御状態を確認できる。

IoT制御装置は,照明制御信号(DMX)出力による照明制御や音声出力,センサデータの取得を行う。どのタイミングで,どの照明器具を点灯するかなどの照明パターンやスケジュールの設定ファイルは,IoT制御装置内に保存されている。操作端末からの指示や,あらかじめ設定されたスケジュール,センサデータにより,照明パターンに沿った制御信号を出力する。

操作端末,IoT制御装置は,いずれもインターネットに接続されており,クラウドサーバを経由して情報のやりとりを行う。

クラウドサーバには,データベースとサーバプログラムが配置されている。データベースには,操作端末やIoT制御装置の情報が保存されている。サーバプログラムは,操作端末からの指示をIoT制御装置へ送信する。また,サーバプログラムは,操作端末と容易に情報のやりとりを行えるよう専用のAPIを備えている。

出力機器には,光出力と音声出力の二つがある。光出力はDMX制御対応の任意の照明器具とする。音声出力は照明パターンに合わせてスピーカーから音声を出力する。

次章では,開発したIoT制御装置「Link-Core®」,およびサーバプログラムについて説明する。

4.システムの特長

本章では,本システムの特長的な機能と主な仕様(制御仕様・画面仕様)について説明する。

4.1 機能

表1にIoT照明制御システムの主な機能一覧を示す。主な機能としては,Link-Core®が持つ「照明パターン再生機能」とクラウドサーバと連携して実現される「オンライン管理」機能がある。オンライン管理機能は,ブラウザから専用のウェブページにアクセスすることで利用できる。ウェブページの操作については,4.2.2にて説明する。

IoT照明制御システムは,一般的な照明制御装置が持つ「スケジュール管理」,「外部接点の入出力」や,IoTデバイス特有の「死活管理」,「設定変更」のほか,取得したセンサの値やインターネット上の情報によって再生する照明シーン(何時にどの照明パターンを再生するかスケジュール設定したもの)を決定する「分岐再生」や,APIを用いて外部の操作端末から制御を受ける「API連携」機能がある。

以降では,本システムの特長である「分岐再生」,「API連携」の機能について順に説明する。

表1 IoT照明制御システム機能一覧
分類 機能名称 備考
照明シーン再生 スケジュール再生 カレンダー,曜日などで照明シーンを登録
分岐再生 センサやウェブ情報から,再生する照明シーンを決定
電圧接点によるパターン再生 外部接点により任意の照明パターンを再生
(人感センサなど)
オンライン管理 設定変更 専用ウェブページからスケジュールや分岐条件を変更
照明パターンの変更 専用ウェブページから照明パターンを変更
死活監視 異常時に通知メールを送信
APIによる制御 他のIoTデバイスと連携可能
ファームウェア更新 -
4.1.1 照明シーンの分岐再生機能

一般的な照明制御装置では,スケジュール機能により照明制御装置に保存されている照明パターンを,任意の期間に再生できる。例えば,夏と冬で異なる照明パターンを再生(日付制御)したり,日没とともに照明パターンを再生(時間制御)したりなどの管理ができる。

本システムでは,Link-Core®に地域設定や,温度・人感センサを接続することで,これらの情報を分岐条件として加えることができる。

例えば,“晴天の平日”,“雨天の平日”,“雨天の休日”それぞれの日に異なる照明シーンを再生することができる(図4にイメージを示す)。また,天気予報を取得すれば,翌日の天気によって異なる照明シーンを再生するとことが可能となる。

図4 天気・センサデータによって照明シーンを変更

4.1.2 API連携機能

先にも述べたように,IoTデバイス同士が連携し,新しい付加価値を生み出すためにAPIという仕組みは重要な役割を果たしている。本システムでもAPIを実装し,他のIoTデバイスとの連携を容易にしている。このAPIを用いて,他のデバイスと連携することで,従来の照明制御装置ではできなかった照明制御が可能になる。

表2に本システムで実装しているAPI機能の一覧を示す。

表2 API機能一覧
カテゴリ API名 概要
端末設定 照明パターン再生 照明パターンを指定して,再生を実行する。
※照明パターンの終了,もしくは,スケジュール復帰APIが実行されるまではスケジュール再生に復帰しない。
指定値再生 DMXのチャンネルとレベルを指定して再生する。
※スケジュール復帰APIが実行されるまではスケジュール再生に復帰しない。
スケジュール復帰 照明パターン再生,指定値再生中の端末の状態をスケジュール再生に復帰する。
接点出力 接点を出力する。
照明シーン・パターンの設定送信 照明シーン・パターンの設定ファイルをアップロードする。
端末情報取得 照明シーン・パターンの設定取得 照明シーン・パターンの設定ファイルをダウンロードする。
照明パターン一覧取得 端末で利用可能な照明パターンの一覧を取得する。
再生情報取得 現在の再生情報を取得する。
センサ情報取得 端末のセンサ情報を取得する。
死活取得 端末の死活ステータスを取得する。
※端末が切断されてから60分間はALIVEが返却される。

照明パターン再生や照明シーン・パターンの設定更新など,IoT照明制御システムのほとんどの機能を,APIを利用して実行できる。

API連携の利用例として,SNSやスマートスピーカーとの連携が考えられる。例えば,SNSへ特定のワードが投稿された際に,本システムのAPIを実行し,照明パターンを再生するという利用方法が考えられる。

図5に,本システムとIoTデバイスを連携させた場合のシステムイメージを示す。

図5 API活用例「IoTデバイスと連携した照明制御」

図中①のSNSと連携させる場合の処理の流れを以下に示す。なお,図中には示していないが,クラウドサーバ上にSNSの投稿をチェックするサーバプログラムが必要となる。

  1. SNSへ特定のワードを含んだメッセージを投稿。
  2. サーバプログラムがSNSの投稿を解析,再生する照明パターンを決定。
  3. サーバプログラムが照明パターン再生APIを実行。
  4. Link-Core®が照明パターンを再生。

上記のようなシステムを構築すれば,ライトアップやイルミネーションなどで,観賞する人が照明演出に参加できる。結果,集客力アップなどの効果が期待される。

また,図中の操作手段①「SNS」の部分を,②「スマートスピーカー」に変えれば,スマートスピーカーに話しかけることで,照明パターンを変化できる。

以上のように,APIを利用することでさまざまなIoTデバイスを照明パターン再生のトリガーとして使用できるようになる(図中③)。

4.2 仕様

本節では,本システムの具体的な仕様を説明する。4.2.1では,Link-Core®の制御仕様,4.2.2では,サーバプログラムからオンライン管理を行う場合のウェブページの画面仕様を説明する。

4.2.1 IoT制御装置「Link-Core®」の制御仕様

Link-Core®の主な制御仕様を表3に,Link-Core®の入出力端子を図6に示す。

図6 Link-Core®の入出力端子

表3 IoT照明制御装置の主な制御仕様
照明制御方式 DMX512-A
無線 モバイルデータ通信 3G/LTE
制御チャンネル数 512ch(RGBフルカラー照明最大170台)
人感センサ 電圧接点
温度センサ I²C
外部出力信号 無電圧接点

照明制御方式は「DMX512-A」,インターネット接続は,モバイルデータ通信の「3G/LTE」,センサ接続は「電圧接点」および「I²C」とした。また,APIには,HTTP通信のメソッドとした。

4.2.2 管理ウェブページ仕様

図7 ウェブページ1(死活管理)

図7~図9にオンライン管理ウェブページの画面を示す。図7は,死活管理画面,図8は,分岐再生条件の設定画面,図9は,照明パターンの変更画面を示す。

図7の死活管理画面では,登録されたLink-Core®の一覧が表示され,「ステータス」項目に状態が表示される。Link-Core®がクラウドサーバと正常に通信できている場合,「ALIVE」,通信が行えていない場合「LOST」と表示される。また,表示画面とは別に,「LOST」状態になった場合,一定時間経過後,指定の連絡先に通知メールが送信される。

図8の分岐条件設定画面では,照明シーンごとに条件となる「天気」と「気温」を設定できる。天気は,画面右下の天気エリアで指定した地域の天気を取得する。

図9の照明シーン・パターンの変更画面では,画面下部に現在登録されている照明シーンと,設定された分岐条件の一覧が表示される。画面上部に,ColorController3)で作成したファイルをドラッグすることで,照明シーン・パターンを変更する。

図8 ウェブページ2(分岐条件の変更)

図9 ウェブページ3(照明パターンの変更)

5.まとめ

本報告では,IoT照明制御システムの概要と特長・機能を紹介した。本システムの特長は,センサの値やインターネット上の情報により照明シーンを分岐することができる「分岐再生」と他のIoTデバイスと連携を容易に行うことができる「API連携」である。これらの機能を活用することで,これまでは行えなかったさまざまな照明制御が行えるようになると考えられる。

また,API仕様を公開することにより,第三者がシステムに照明制御を容易に取り入れることができるようになる。こうした第三者を巻き込んだオープンイノベーション効果により新たな価値を生み出すシステムの検討,開発を行う。

参考文献

  1. REGENESIS.com:APIって何?非エンジニア向け用語説明 2018年5月14日アクセス
  2. 総務省:平成27年版情報通信白書,第5章 産業の未来とICT 第4節ICT化の進展がもたらす経済構造の変化,p292(2015)
  3. 岩崎電気株式会社(2017):ColorController 取扱説明書 2018年5月17日アクセス

※『Link-Core』は岩崎電気株式会社の登録商標。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第38号掲載記事に基づいて作成しました。
(2017年5月18日入稿)


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