技術資料

LED投光器 LEDioc FLOOD SPOLART™高温対応形

株式会社アイ・ライティング・システム 技術部 第一技術課

キーワード

LED,投光器,LEDioc FLOOD SPOLART™,高温対応,長寿命

1.はじめに

本商品は,2014年に発売されたLED投光器LEDioc FLOOD SPOLARTの高温対応形であり,温度が高い環境に最適なLED投光器として2016年に発売され,好評を得ている。

LED投光器においては,市場への普及とともに,高温環境など特殊環境で使用できる照明器具の要求が高まっている。

本商品は,LEDioc FLOOD SPOLARTの優れた配光特性と電源の組合わせを最適化しており,高温対応できるLED照明器具を実現している。

本稿では,LEDioc FLOOD SPOLARTシリーズの高温対応形の商品概要を紹介する。

2.商品概要

本商品は,従来形である一般仕様形LEDioc FLOOD SPOLART投光器の160W,130W,65Wの3タイプが高温環境に対応したものとなっており,高ワット用の器具灯体と低ワット用の電源を組合わせることにより高温環境での使用を実現した商品である。

本商品は,下記3項目の組合わせにより18品種をラインアップした。

  1. タイプ:160W,130W,65W
  2. 相関色温度:5000K,3000K
  3. 配光:狭角,中角,広角

表1に外観図と外形図を,表2に品種一覧を,表3に商品仕様を示す。なお,表1の外観図は,相関色温度5000Kタイプの機種を代表で示している。

一般仕様形の投光器の使用温度範囲は-5℃~+35℃であるが,本商品の使用温度範囲は,160Wタイプが-5℃~+50℃まで,130Wタイプと65Wタイプが-5℃~+60℃まで使用可能となっている。なお,高温対応形の形式は,一般仕様形の形式末尾に「/H」を付したものとなっている。

表1 外観図と外形図
タイプ 配光 外形寸法
狭角 中角・広角
160Wタイプ
130Wタイプ
65Wタイプ
表2 品種一覧
160Wタイプ(水銀ランプ 700W相当)
5000K相当(昼白色タイプ)
平均演色評価数(Ra) 70
配光 狭角 中角 広角
形式 E30403N/NSAN8/H E30403M/NSAN8/H E30403W/NSAN8/H
本体形式 E30404N/N/H E30404M/N/H E30404W/N/H
電源形式 LE148115HS1/2.4-A1
光束(ℓm) 17700 19100 19100
質量(kg) 7.3 6.5
消費電力(W) 165(100V) 161(200V)(242V)
3000K相当(電球色タイプ)
平均演色評価数(Ra) 80
配光 狭角 中角 広角
形式 E30403N/LSAN8/H E30403M/LSAN8/H E30403W/LSAN8/H
本体形式 E30404N/L/H E30404M/L/H E30404W/L/H
電源形式 LE148115HS1/2.4-A1
光束(ℓm) 14300 15100 15100
質量(kg) 7.3 6.5
消費電力(W) 165(100V) 161(200V)(242V)
130Wタイプ(水銀ランプ 400W相当)
5000K相当(昼白色タイプ)
平均演色評価数 (Ra) 70
配光 狭角 中角 広角
形式 E30402N/NSAN8/H E30402M/NSAN8/H E30402W/NSAN8/H
本体形式 E30404N/N/H E30404M/N/H E30404W/N/H
電源形式 LE119090HS1/2.4-A1
光束 (ℓm) 14100 15300 15300
質量 (kg) 7.3 6.5
消費電力 (W) 128.5(100V) 127(200V) 126(242V)
3000K相当(電球色タイプ)
平均演色評価数 (Ra) 80
配光 狭角 中角 広角
形式 E30402N/LSAN8/H E30402M/LSAN8/H E30402W/LSAN8/H
本体形式 E30404N/L/H E30404M/L/H E30404W/L/H
電源形式 LE119090HS1/2.4-A1
光束 (ℓm) 11600 12400 12400
質量 (kg) 7.3 6.5
消費電力 (W) 128.5(100V) 127(200V) 126(242V)
65Wタイプ(水銀ランプ 250W相当)
5000K相当(昼白色タイプ)
平均演色評価数 (Ra) 70
配光 狭角 中角 広角
形式 E30401N/NSAN8/H E30401M/NSAN8/H E30401W/NSAN8/H
本体形式 E30401N/N/H E30401M/N/H E30401W/N/H
電源形式 LE56044HS1/2.4-A1
光束 (ℓm) 7100 7700 7700
質量 (kg) 6.5 5.7
消費電力 (W) 65(100V) 63(200V)(242V)
3000K相当(電球色タイプ)
平均演色評価数 (Ra) 80
配光 狭角 中角 広角
形式 E30401N/LSAN8/H E30401M/LSAN8/H E30401W/LSAN8/H
本体形式 E30401N/L/H E30401M/L/H E30401W/L/H
電源形式 LE56044HS1/2.4-A1
光束 (ℓm) 5750 6230 6230
質量 (kg) 6.5 5.7
消費電力 (W) 65(100V) 63(200V)(242V)
表3 商品仕様
タイプ 160W 130W,65W
材質 前面カバー 強化ガラス
保護カバー ポリカーボネート
反射鏡 アルミニウム(内外面シリカガラス処理)
放熱部 アルミニウム,銅
支持枠 アルミダイカスト(ポリエステル塗装)
アーム 鋼板(溶融亜鉛めっき)
仕上色 グレイ(近似マンセルN6)
定格寿命 60000時間
耐雷サージ 15kV(コモンモード)
保護等級 IP43
使用温度範囲 器具 -5℃~+50℃ -5℃~+60℃
電源ユニット -20℃~+40℃ -25℃~+40℃

3.特長・機能

3.1 高温対応の手法

表4に,LEDioc FLOOD SPOLARTの一般仕様形と高温対応形のTc温度上昇値(ケース温度上昇値)を比較したものを示す。また,図1に示すように,器具の灯体は2種類あり,タイプに応じて使い分けている。

図1 灯体の大きさ比較

160Wタイプにおいて,一般仕様形の灯体は図1左の灯体長333mmの灯体(小)を使用しており,Tc温度上昇値は63.0℃となる。高温対応形の灯体は,図1右の灯体長420mmの灯体(大)を採用したことでTc温度上昇値は51.0℃となり,温度上昇を約12℃を低減させることができた。

また,130Wタイプについても前述の160Wタイプと同様に灯体(大)を採用することで,温度上昇を約20℃低減させることができた。

なお,65Wタイプについては,許容されるTc温度上昇値に余裕があるため,灯体の変更は行っていない。ただし,ケーブルや保護カバーを高温に対応させる必要があるため,3.3節で説明する変更を行っている。

表4 灯体仕様とTc温度上昇値の比較
タイプ 一般仕様形 高温対応形
使用灯体 Tc温度上昇値(℃) 使用灯体 Tc温度上昇値(℃)
160W 灯体(小) 63.0 灯体(大) 51.0
130W 灯体(小) 62.3 灯体(大) 41.8
65W 灯体(小) 35.0 灯体(小) 35.0

試験条件
点灯姿勢:上向80°
LED Tc規格値:105℃

3.2 灯体変更の効果

灯体を変更したことで得られたダウンドライブの効果により,表5に示すように一般仕様形に比べ高温対応形は光束がアップしている。160Wタイプは光束が約4%アップし,130Wタイプは光束が約17%アップした。130Wタイプは放熱性に加えLEDの発光効率も向上しているため,光束増加の割合が160Wタイプと比べて大きい。

なお,灯体を変更していない65Wタイプについては,一般仕様形と同等の光束となっている。

表5 光束比較
タイプ 相関色温度(K) 平均演色評価数(Ra) 配光 光束(ℓm)
一般仕様形 高温対応形
160Wタイプ 5000 70 狭角 17000 17700
中角 18300 19100
広角 18300 19100
3000 80 狭角 13770 14300
中角 14520 15100
広角 14520 15100
130Wタイプ 5000 70 狭角 12000 14100
中角 13000 15300
広角 13000 15300
3000 80 狭角 9720 11600
中角 10530 12400
広角 10530 12400
65Wタイプ 5000 70 狭角 7100 7100
中角 7700 7700
広角 7700 7700
3000 80 狭角 5750 5750
中角 6230 6230
広角 6230 6230

3.3 材質の変更

LEDioc FLOOD SPOLART高温対応形は,3種類のタイプとも高温環境に適応させるために口出線と保護カバーの材質をグレードアップしている。

一般仕様形で使用されている口出線は,耐熱温度が80℃のクロロプレンゴムキャップタイヤ電線であり,周囲環境温度を60℃とした場合,許容温度上昇値は20℃しか裕度がない。これを耐熱温度が180℃のシリコンゴムキャップタイヤ電線に変更することで,許容温度上昇値に裕度を持たせ,周囲温度が60℃の環境で連続使用できるようにした。

また,一般仕様形における放熱フィンの保護カバーは,アクリルを使用している。アクリルの連続使用温度は,社内の温度規格で70℃を上限と定めており,同様に周囲環境温度を60℃とした場合,許容温度上昇値に裕度がないため,耐熱性が良いポリカーボネートに変更した。ポリカーボネートの社内温度規格は110℃を上限としており,周囲温度が60℃の環境で連続使用することができる。

4.おわりに

従来のHID器具では,器具のランプ電力を低ワット(調光)にして高温対応することは難度が高かったが,LED器具においては,ダウンドライブを有効利用することで高温環境での使用を可能にできる。

今後は,LEDioc FLOOD CUBE™投光器シリーズ等も同様の手法で高温対応形の商品開発を進め,さらなる市場拡大を目指していきたいと考える。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第35号掲載記事に基づいて作成しました。
(2016年10月25日入稿)


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