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技術資料

レーザー誘起蛍光法によるOHラジカル密度計測

技術本部 研究開発部 光応用研究課 松本 裕之
東京大学 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 小野 亮

キーワード

レーザー誘起蛍光(Laser Induced Fluorescence),活性酸素,ヒドロキシラジカル(OHラジカル)

3.結果および考察

まずランプボックス内におけるUV照度測定結果,オゾン濃度測定結果を図6および図7にそれぞれ示す。いずれもランプ点灯後5分時点でのデータを示しており,UV照度は相対湿度45%(一定)下で測定,オゾン濃度はランプからの距離25mm位置でサンプリングした。ランプからの距離10mm位置において185nm照度は1.78mW/cm²,254nm照度は9.34mW/cm²であった。オゾン濃度についてみると,相対湿度5%で約430ppm生成されているが,湿度増加とともに急激に減少し,相対湿度26%で約110ppm,それ以上の湿度雰囲気ではほぼ生成濃度が飽和している。

図6 試作UVランプの照度測定結果

図6 試作UVランプの照度測定結果

図7 雰囲気相対湿度に対するオゾン生成濃度

図7 雰囲気相対湿度に対するオゾン生成濃度

各相対湿度,ランプ距離におけるOH密度の計測結果を図8に示す。ランプからの距離5mm位置において,OHラジカルは空間密度10¹⁵~10¹⁶/m³のオーダーで生成されているという結果が得られた。また,相対湿度の低下すなわち空間中のH₂O分子の減少,およびランプ距離の増加に伴いOH密度は緩やかに減少する傾向が得られた。

図8 OHラジカル密度の計測結果

図8 OHラジカル密度の計測結果

理想気体の粒子数6.02×10²³個/22.4Litterより,22℃における単位体積(1m³)あたりの粒子数は,

式(13)の数値から,ランプ周辺のオゾン生成濃度110ppm(1.1×10⁻⁴atm)を空間密度に換算すると約2.7×10²¹/m³となり,UVランププロセス下のOHラジカル空間密度(10¹⁵~10¹⁶/m³)はオゾン密度の5~6桁も低い値となる。本計測結果の妥当性については今後検証予定である。

各種有機物に対する反応速度定数,すなわち酸化力を比較すると,OHラジカルはオゾンよりも6桁程高い値を有しているが,仮に空間中でOHラジカルが生成したとしても,大気圧下の気相反応によって,これらが処理対象(被処理物)まで到達することは考えにくく,被処理物表面近傍でOHを生成させ,反応させることが必要ということが分かる。

参考までに,大気圧下のストリーマ放電中ではOHラジカル10²⁰~10²¹/m³と,UVランプよりも5~6桁高い生成密度という報告があり8),大気圧プラズマでは活性種による表面処理が支配的であるという可能性が示唆されている。

4.おわりに

今回,LIF計測により,相対湿度を変化させた低圧水銀ランププロセス下におけるOHラジカル空間密度の直接計測を行い,10¹⁵~10¹⁶/m³のオーダーでOHラジカルが生成しているという知見が得られた。

冒頭でも述べたとおり,OHラジカルは微生物の殺菌に有効な因子とされており,その生成量,作用量を増加させることは,活性酸素種を利用する殺菌プロセスにとって非常に重要である。今後,OHラジカル作用量の定量化について,検討を行う予定である。

参考文献

  1. R. Ono and T. Oda:J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 41, 035204(2008).

謝辞

本報告のLIF計測は,東京大学,工学研究科,小田小野研究室に実施,データ提供頂いたものである。同研究室の小野准教授,博士課程の中川氏に謝意を表する。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第26号掲載記事に基づいて作成しました。
(2012年6月1日入稿)


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