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技術資料

写真測光による等価光幕輝度測定
- 魚眼レンズを用いた等価光幕輝度の算出方法(その2) -

国内営業本部 営業技術部 照明研究課 大嶋 航介,山田 哲司

キーワード

光環境評価,等価光幕輝度,グレア,魚眼レンズ,立体角,射影

1.はじめに

近年,LED照明の普及が急速に進んでいる。LED素子の価格の低下に加え,2011年の震災以来続く供給電力の不足により,省エネ化を図れるLED照明の需要が急増している。しかし一方でLED照明はグレア(眩しさ)について言及されることがある。

屋外施設のグレア評価には,TI値(視機能低下グレア)やGR(不快グレア)が使用されるが,これらはいずれも等価光幕輝度1),2)を測定することで評価できる。

図1に観測者とグレア源となる光源(以降,グレア光源と記す)の幾何学的な位置関係を示す。

図1 観測者とグレア光源の位置関係

図1 観測者とグレア光源の位置関係

この時,グレア光源からの直接光による等価光幕輝度Lvl はHolladayにより次式で算出されることが示されている3),4)

ここで,θはグレア光源と視線軸がなす鉛直角[rad],Eはグレア光源によって生じる視線方向の法線照度を示す。式より光源が視線軸に近い(鉛直角θが小さい)ほど,等価光幕輝度が大きくなることが読み取れる。つまり,視線方向と光源の位置関係はグレアを決定する大きな要因であることがわかる。このため,グレア評価を行う場合には評価する視線方向を考慮する必要がある。

次に野球場などの運動競技場でグレア評価を行う場合を考えると,競技者の視線方向は一定でない。想定される競技者の視線方向すべてに対してグレア評価を行うことが望ましいが,少なくとも各照明塔の方向に対しグレア評価を行うことが定められている5),6)

先に筆者らは,写真測光により等価光幕輝度を算出する方法を示した7)。しかし,写真測光による等価光幕輝度の測定には,グレア評価を行う視線方向ごとに画像を撮影する必要がある。そのため,運動競技場のような評価する視線方向が複数の場合には撮影に時間を要する。

そこで筆者らは,一方向の撮影画像から複数の視線方向のグレア評価を行う方法について検討を行ったので報告する。

2.写真測光による等価光幕輝度の算出

2.1節では,まず写真測光による等価光幕輝度の算出方法の概要を,2.2節では,一方向の撮影画像から複数の視線方向のグレア評価を行う方法について説明する。続く3章でその具体的な算出方法について報告する。

2.1 写真測光によるグレア評価の課題

写真測光により得られる輝度分布を用いて等価光幕輝度は式(2)のように表される。

ここで,L(x,y)は各画素の輝度値,Δω(x,y)は各画素の単位立体角,θ(x,y)は各画素に入射する光の鉛直角[rad]を表す。

各画素の単位立体角Δω(x,y),入射光の鉛直角θ(x,y)の詳細な算出方法については先の報告7)を参照していただきたいが,これらは画像中心からの距離によって値が異なる変数である。

そこで,写真測光で等価光幕輝度を算出するためには撮影画像の中心を基準として計算を行う。そのため,評価する視線方向ごとに画像を撮影する手間が必要となる。

2.2 視線方向の異なるグレア評価

本節では,評価する視線方向ごとの撮影の手間を軽減する方法について述べる。例として,視線方向が水平の場合と視線方向が水平より上向きの場合のグレア評価について考える。

図2に全周魚眼レンズを用いた体育館の撮影画像を示す。(a)は,水平方向を撮影した場合,(b)は水平方向から上へ30°(仰角30°)傾けて撮影した場合の画像を示す。図中,丸印は水平方向時の撮影中心,十字は仰角30°方向時の撮影中心を示す。

図2 撮影画像(全周魚眼レンズ)

図2 撮影画像(全周魚眼レンズ)

(a),(b)の破線で示されるバスケットゴールを見ると,(a)では横長な楕円形に歪んでいるのに対し,(b)では円形に近い形となっていることが確認できる。式(2)に示したように写真測光による等価光幕輝度の算出には,各画素の輝度より算出される値の合計を用いる。そのため,(a)中の十字を中心として等価光幕輝度を算出した場合,(b)より算出される等価光幕輝度の値と一致しない。つまり,一方向の撮影画像をそのまま用いても,別の視線方向の等価光幕輝度を算出することはできない。

図3に,全周魚眼レンズの撮影範囲の概略を示す。(a)は,撮影方向が水平の場合の撮影範囲,(b)は撮影方向が仰角30°の場合の撮影範囲,(c)はそれぞれの撮影範囲の重複部分を示す。

図3 画像の撮影範囲(全周魚眼レンズ)

図3 画像の撮影範囲(全周魚眼レンズ)

(a),(b)のように,全周魚眼レンズを用いて画像を撮影した場合,視線方向と垂直な半球状(立体角2π)の範囲を撮影することができる。

いま,水平方向のみ画像を撮影したとする。この場合,仰角30°方向のグレア評価を行うことはできない。しかし,水平方向と仰角30°方向の撮影範囲には,重複する部分((c)中の緑色部分)が存在する。そのため,水平方向の撮影画像から光の情報を取得することで,仰角30°方向の重複部分の画像を再現(以降,視線軸変換と記す)することができると考えられる。

この視線軸変換により得られる画像の輝度分布をもとに,等価光幕輝度を算出することで,一方向の撮影画像から複数の視線方向のグレア評価を行うことができると考えられる。

参考文献

  1. CIE:CIE COLLECTION on GLARE, CIE 146:2002, (2002).
  2. 猪野原 : 視覚研究の展望―周辺視野輝度分布と知覚閾値の関係について―,照明学会雑誌,第60巻,第11号,pp.38-41(1976).
  3. L.L.Holladay : The fundamentals of glare and visibility, Journal of the Optical Society of America and Review of Scientific Instruments, Vol.12, No.4, pp.271-319 (1926).
  4. L.L.Holladay : Action of a light-source in the field of view in lowering visibility, Journal of the Optical Society of America and Review of Scientific Instruments, Vol.14, No.1, pp.1-15 (1927).
  5. CIE : Glare Evaluation System for Use within Outdoor Sports and Area Lighting, CIE TECHNICAL REPORT, 112-1994,(1994).
  6. 日本工業標準調査会:日本工業規格,JIS Z 9127:2011,pp.4-5(2011).
  7. 大嶋航介・山田哲司:写真測光による等価光幕輝度測定-魚眼レンズを用いた等価光幕輝度の算出方法(その1)-, IWASAKI技報, No.25, pp.13-19 (2011).

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