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技術資料

UV硬化装置と加工技術の動向

光応用事業部 光応用開発部 ソフトエンジニアリング課 木下 忍,坂井 和宏

キーワード

UV硬化装置,加工技術,樹脂,紫外線光源,照射器

1.はじめに

図1 UV照度計

図1 UV照度計

紫外線(以下,UVという。)による樹脂の硬化技術の工業化は,米国で1969年に多色オフセットカートン印刷機として成功したことを皮切りに木工製品の塗装も検討され,日本でも1979年頃から導入された。古くから太陽光を利用していた(古代のミイラの覆いの布に含浸させたシリアンアスファルトの硬化)ことから考えると,その工業的利用の歴史は浅く日本国内でもようやく一般的にUV硬化技術が知られるようになった。

特に,近年,無溶剤で樹脂の硬化が可能であることから,PRTR法,悪臭防止法およびISO14000などの環境に関する規制や管理に対して非常に有利(環境にやさしい処理)であり,さらに,迅速な処理,高度な製品品質,省エネルギーなどの多くの特長から幅広く利用されている。

このUV硬化処理は,UV硬化樹脂中に含まれる光重合開始剤の光吸収波長と照射する光の波長とが合致するかどうかで処理効率も左右されることから,樹脂の吸収特性とUV硬化装置の照射光の分光特性を知ることが非常に重要である。そこで本稿では,そのUV硬化装置について基礎から実際までを紹介する。

2.UVの基礎技術

UVとは,X線と可視光線に挟まれた100~380nm波長域の電磁波のことをいう。UVは波長範囲により,UV-A(315~380nm),UV-B(280~315nm),UV-C(100~280nm)の3つに分けられる。

このUVを利用して樹脂の硬化を行うが,そのUV量として次の用語(単位)が使用される。

  1. 照度:
    単位面積当たりに受ける照射強度で,W/m²またはW/cm²で表される。時にはランプ直下等で集光されて得られる最大の照度値をピーク照度と言う。この照度およびピーク照度は照度計(図1)が市販されているので,それを用いて計測できる。ただし,照度計には分光感度があり,測定したい波長領域の受光器を選定する必要がある。
    また,この照度計は各社から市販され,トレサビリティーもしっかりしているが,光の受光範囲(斜め入射の受光特性)の違いなどから同一の位置で計測しても,異なる照度値を示すことがあるので,計測器名も照度値と同時に表記する必要がある。
  2. 積算光量:
    単位面積当たりに受ける照射エネルギーで,その表面に到達する光量子(フォトン)の総量である。先の照度と時間との積でもある。J/m²またはJ/cm²で表される。これも,照度計で計測可能である。

3.UV硬化装置

UV硬化装置はランプ,照射器,電源装置および冷却装置,場合によってはさらにUV樹脂塗工装置や搬送装置などから構成される。特に前述した通り,ランプから放射されている光の波長(分光エネルギー分布)とどの位のエネルギーを照射物に与えられるかが装置選定の重要な要因である。さらに忘れてならないことは,UV以外に可視光線や赤外線(IR)も同時に放射されるので,基材の温度上昇による熱変化も十分注意する必要がある。

3.1 ランプ

UVを放射するランプの分類は各種文献に示されているので参照されたい。その中でも図2に示したランプが一般的に使用されている。これらのランプは,石英ガラス製の発光管の中に金属を封入して,外部エネルギーを加えて蒸気化して発光させる。ランプは発光させる金属やその蒸気圧によって種々の分光特性を示す。前述したように,この中から,樹脂の特性と合う光源を選定する必要がある。

また,外部エネルギーの加える方法により,有電極と無電極のランプに分けられる。それぞれのランプ形状例を図3に示した。ランプのパワーを示す単位として,単位発光長当たりの入力電力(W/cm)で表し,80W/cm~240W/cm(メタルハライドランプは320W/cmまで)の負荷のものが一般的に使用されている。

後者の無電極ランプはマイクロ波のエネルギーの制御でランプを発光させるもので,構造は図4の通りである1)。以下の記述は,筆者が取り扱っている関係から有電極ランプを搭載したUV照射装置の紹介となることを了承して頂きたい。

ここで,接着,貼り合わせ等に使用されている新しいタイプのランプを紹介したい。それはUVから可視光まで高照度の光を放射するパルスドキセノンランプである。このランプは,カメラのフラッシュと同じ様に瞬間(一回の発光の半値幅:数百マイクロ秒)に発光(図5の概念図参照)させることで,図6の分光エネルギー分布のとおり連続スペクトルでUVから可視光まで放射し,そのピーク照度も高圧水銀ランプで得られるmW/cm²に対してその千倍のW/cm²の照度が得られる。従って隠蔽度の高い塗膜や厚膜などに対して,非常に有用なランプである。また,1秒間に複数回のパルス発光であるため,短時間であれば基材の温度上昇も抑えられる特長もある。

以下の通り,ランプ(光源)の種類も多く用途に応じた最適なランプ選定がエネルギーの有効利用の面からも非常に重要と考えられる。

図2 ランプの種類
ランプ名 特徴 分光特性
高圧水銀ランプ 石英ガラス製の発光管の中に高純度の水銀(Hg)と少量の希ガスが封入されたもので,365nmを主波長とし,254nm,303nm,313nmの紫外線を効率よく放射する。他のランプよりも短波長紫外線の出力が高いのが特徴 高圧水銀ランプ 分光特性
超高圧水銀ランプ 高圧水銀ランプと同様に水銀と希ガスが封入(ガス圧約1気圧)されているがガス圧が10気圧以上で作動させるのでスペクトルが線でなく連続スペクトルとなる。 超高圧水銀ランプ 分光特性
メタルハライドランプ 発光管の中に,水銀に加えて金属をハロゲン化物の形で封入したもので,200~450nmまで広範囲にわたり紫外線スペクトルを放射している。
水銀ランプに比べ,300~450nmの長波長紫外線の出力が高いのが特徴
メタルハライドランプ 分光特性
ハイパワー
メタルハライドランプ
メタルハライドランプとは異なった金属ハロゲン化物を封入しており,400~450nmの出力が特に高いのが特徴。 ハイパワー メタルハライドランプ  分光特性
図3 有電極・無電極ランプ形状例

図3 有電極・無電極ランプ形状例

図4 無電極装置(240W/cm)の断面図例

図4 無電極装置(240W/cm)の断面図例1)

図5 パルス発光のモデル

図5 パルス発光のモデル

図6 パルス発光キセノンランプの分光分布(一例)

図6 パルス発光キセノンランプの分光分布(一例)

参考文献

  1. 尾 直行:ラドテック研究会,第9回表面加工入門講座(1999).

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