施設報告

台山・水野谷町線道路改良工事(高欄照明)

国内営業部 仙台営業所 技術課

キーワード

台山・水野谷町線,省エネ,LED,景観性

1.はじめに

都市計画道路台山・水野谷町線は,平成9年度~平成22年度の予定で,福島県いわき市常磐湯本町台山~常磐水野町竜ヶ沢間を幅員20m,延長1530mにて道路整備する事業である。この度,同路線上の上浅貝大橋の歩道高欄照明が新設された。

本歩道部照明は,ポールが乱立した印象を避けるため,一般的なポール照明方式ではなく,誘導性,昼間の景観性に優れ,維持管理の容易な高欄照明方式が採用され,橋梁本体構造と一体となった景観を形成している(平成23年3月竣工)。

2.照明設計

2.1 設計コンセプト

本施設の照明計画にあたっては,以下のようなコンセプトにて計画を行った。

  1. 光源は,基本設計時に検討したHf蛍光ランプよりも省エネで長寿命となる光源を選定すること。
  2. 光源色は,清涼感のある白色光源とすること。
  3. 照明器具の配置は,規則性をもたせ,夜間における誘導性を考慮すること。

2.2 設計照度

本施設の設計照度は,道路照明施設設置基準・同解説(平成19年10月;社団法人日本道路協会)より,平均路面照度5ℓx以上に設定した。

2.3 照度分布図および照明設備一覧表

図1に照度分布図,表1に本施設の照明設備一覧表を示す。

表1 照明設備一覧表
器具 特注高欄照明器具
ランプ LED 5W×4
灯高 0.8m
数量 16台
照度分布図

※図中の曲線上の数値は、維持水平面照度を示す。(単位:ℓx)

凡例
記号
照明器具高欄用LED器具
ランプLED 5W×4
保守率0.7
灯高(m)0.8
灯数(台)16
平均照度及び照明範囲
照明器具 歩道部内
維持平均照度 6ℓx

図1 照度分布図

3.設備概要

3.1 設備の全体概要

緑豊かで開放感のある空間に,なだらかで美しい道路線形である「上浅貝大橋」が整備され,車道両側に広い幅員を有する歩道であるため,地域住民にとっては単なる歩道ではなく,景観を楽しみながら,散歩やジョギングにも適した施設となっている。

「上浅貝大橋」近くには,いわき市健康・福祉プラザ「いわき ゆったり館」もあり,運動後の温泉入浴も利用可能であるため,今後の交通の要所となるだけでなく,憩いのエリアとしても発展する可能性をもった施設である。

3.2 照明設備の概要

前述の設計コンセプトと設計照度を考慮し,光源はHf蛍光ランプ32Wと比較して,33%省エネで,ランプ寿命40000時間の白色LED 5W×4を内蔵した特注高欄照明器具を採用し,ランプ交換費用や電気料金を含めた年間の維持費を77%低減させた。また器具前面グローブは,透過率と夜間点灯時のグレアのバランスを考慮し,全光線透過率91%のアクリルパネルを採用し,器具内部の同一プレート上にLEDユニットとLED電源を配置することにより,将来的にランプ交換が容易な構造とした。

照明器具の配置は,規則性,夜間の誘導性および経済性に配慮し,車道に対して6m間隔となる千鳥配列にて計画し,歩道部平均路面維持照度は,6ℓxを確保した。

図2に照明器具図を示す。また,図3に高欄照明器具設置状況写真,図4に高欄照明全景写真を,さらに,図5に高欄照明夜間点灯写真,図6に高欄照明全景夜間点灯写真を,それぞれ示す。

図2 照明器具図

  • LEDユニットは,同等のユニットとも交換可とする。
  • 仕様
    仕上げ:白色アクリル樹脂焼付塗装
  • ※全面パネルは三菱レイヨン製アクリルライトのファインマットクリア(色調No.K3 001)と同等品とする。

図3 高欄照明器具設置状況写真

図4 高欄照明全景写真

図5 高欄照明夜間点灯写真

図6 高欄照明全景夜間点灯写真

3.3 照明効果

照明設備設置後に,現地にて照度測定を実施し,所要の照度が得られていることを確認し,夜間時における誘導性,歩行者および通行車両に対する不快なグレア等の問題が無いことも確認した。また,隣接する交差点等の局部照明は,高圧ナトリウムランプが採用されており,危険箇所での通行車両に対する光色の差異による注意喚起にも配慮されている。

4.おわりに

2011年3月11日に発生した東日本大震災から半年が過ぎ,この震災で亡くなられた方々に対して,追悼の意を表しますとともに,被災された皆様に対しても,心からお見舞いを申し上げます。今回の震災においては,大地震,大津波だけでなく原子力災害も発生したため,エネルギー分野においてあらためて電気・機械設備の省エネ化,節電の必要性を再認識させられました。本照明設備の所在地である「いわき市」は,「がんばっぺ いわき」をスローガンに懸命に復旧および復興に取り組んでおり,被災地域だけでなく国民全員の末永い支援,問題の共有が求められています。1日も早く,震災以前の地域活力を取り戻し,更なる発展を望んでやみません。

最後に本照明設備の完成にあたり,御指導,御協力頂いた関係各位に感謝と共に,心より御礼申し上げます。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第25号掲載記事に基づいて作成しました。
(2011年10月19日入稿)


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