施設報告

富山駅南北接続軌道施設工事 - 光る門型架線柱 -

国内営業本部 営業技術部 LCS
国内営業本部 北陸営業所 富山事務所
国内営業本部 社会システム部 広域開発営業課

キーワード

富山駅,路面電車,LEDラインユニット,LED小形スポットライト

1.はじめに

富山市は,従来から路面電車が運行し,市民の重要な移動手段として親しまれている。2015年3月に開業した北陸新幹線を契機とした富山駅周辺整備事業の一つとして,富山駅が新しく生まれ変わり,北陸新幹線の高架下に路面電車の停留場「富山駅」が新設された。富山市は駅南北の路面電車路線を接続する南北接続事業を進めていて,今回新幹線高架下から南口駅前広場まで,第1期区間として路面電車の軌道を約160m延伸して乗り入れを開始した。この停留場は,新幹線・在来線改札口やバス・タクシー乗り場に近接し,乗り換えの利便性がとても高い交通拠点となっている。

路面電車に必要な架線柱や信号等を景観形成に必要な要素と捉え,門型の架線柱として多目的な用途に活用できるようデザインされている。連続する門型架線柱は,駅舎の内部にも設置され,南北の軸性を強調するとともに路面電車空間を象徴的に示している。夜間には光る門型架線柱として計画され,シンボリックな景観を創出している(図1)。

図1 光る門型架線柱

2.照明設計

2.1 照明コンセプト

多目的用途で計画された架線柱に照明器具を設置し,必要な明るさを確保しつつ,極力照明器具の存在を消し,景観をスッキリと見せる計画となっている。照明器具としてはその計画の要求に合わせ,限られた空間や条件で設置が可能となる器具形状,構造,配光のものを設計している。

2.2 照明手法

2.2.1 門型架線柱

図2 LED防水ユニット

重要なデザイン要素である「光る門型架線柱」となるよう,門型架線柱自体が光っている印象を創り出すという要望に対して照明器具の検討を行った。

門型架線柱内部にLEDラインユニットを取り付け,門柱内側をラインで光るよう配置している。照明器具の光源部は直接見せず,架線柱内部の反射板による間接光により軌道空間内の安全な明るさを確保している。また,架線柱内部の限られた空間に設置できるような器具形状,構造,配光の照明器具を設計している(図1,図2)。

多目的柱として架線やサイン,スピーカー等が合わせて設置されているため,3種類の長さのLEDラインユニットを組み合わせ,外部から光がラインに見えるよう間隔を調整し,設置している(図3)。

図3 門型架線柱 照明機器配置図

2.2.2 ホーム照明

富山駅停留所ホーム部では,乗降者の安全に配慮し,門型架線柱内部に小形スポットライトを配置し,ホームに必要な明るさを確保している。架線柱のラインや壁面などのホーム空間を生かすため,漏れ光を極力抑制し,ホーム床面のみを重点的に照明するよう設計している。ホーム形状に合わせ配光を横長配光とするため,小形スポットライトにスプレットレンズを設置し,光ムラの少ないホーム空間を創り出している(図4,図5)。

図4 ホーム照明

図5 スプレットレンズ

2.2.3 道路・交差点照明

駅前広場部の門型架線柱から一般道へ続き,架線柱が設置されている。一般道のため道路照明が必要であり,道路部においても架線柱,信号等の多目的柱の考えが適応され,照明も共架している(図6)。

照明器具は,駅前から続くデザインイメージに合わせ,シンプルで先進的なデザインの特注LED道路灯を製作した。LEDioc ROAD™ (標準LED道路灯)と同じLEDユニットを使用し,道路で必要な明るさを確保している(図7)。

図6 多目的柱

図7 道路・交差点照明(点灯)

3.おわりに

今施設では,照明器具単体として景観の中には存在せず,景観を構成するモノと合わさることで,違和感のない空間を創り出している。それが逆に特色となり夜間においてはシンボリックな空間となっていると感じる。景観照明として今後このような事例が増えてくると考えられるため,照明器具として,フレキシブルに対応できるLEDユニットの開発が必要であると感じる。

最後に,軌道空間をデザインされた株式会社ジイケイ設計様,架線柱設計製造のヨシモトポール株式会社様,一連の業務で意見を下さった皆様,器具製作に関わっていただいた関係各所の皆様に感謝を申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第34号掲載記事に基づいて作成しました。
(2016年5月24日入稿)


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