テクニカルインフォメーション
電子線(EB)で脱プライマー！ 環境負荷低減に貢献
5Gで使われるギガヘルツ帯の高周波に対応するには低誘電率・低誘電正接の基板材料が求められています。
その分野で脚光を浴びている樹脂として液晶ポリマーやフッ素樹脂が挙げられるが表面処理や加工性に課題があります。
そこで、今回は電子線照射によるフッ素樹脂の表面親水化とその接着性の事例を紹介します。
ETFEへの電子線HEMAグラフトによる親水化(電子線同時グラフト)
試験方法
- ETFE(エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体)フィルムにHEMA(2-ヒドロキシエチルメタアクリレート)を塗布する。このままでは弾くので、薄く均一になじませるためにOPP(ポリプロピレン)フィルムを被せて均した。
- OPP側から電子線を照射し、OPPフィルムを剥がし、未グラフト成分を洗浄してサンプルを得た。
電子線同時グラフトの工程
接触角測定結果
| 平均接触角(°) | ||
|---|---|---|
| 試験当日 | 1か月後 | |
| ETFE未処理品 | 100.4 | 99.8 |
| ETFEグラフト品 | 52.6 | 58.1 |
※表面をアルコールを浸した紙タオルで軽く拭き取った後、乾燥させてから測定
1か月経過しても接触角を維持している
【参考】PP素材でも同じ効果が得られる
| 平均接触角(°) | |
|---|---|
| 試験当日 | |
| PP未処理品 | 100.1 |
| PPグラフト品 | 66.1 |
接着試験結果
- 市販の接着剤(セメダイン社PPXセット)を用い、ETFEフィルムの接着を試験した。
- 接着面積は25mm×20mmとし、バネばかりにて引張剪断強度を評価した。
- HEMAグラフトを行ったものは3か月経過しても接着強度を保っていた。
- EB表面処理(80kV，200kGy，窒素雰囲気)でも照射後に軽く払拭洗浄することで同等の効果が得られた。
- PPXプライマーは接着面がはがれず基材破壊(フィルムが伸び切れる)が起こった。
EBによる表面処理はPPXプライマーには及ばないものの、高い効果が得られることが分かった。
岩崎電気グループのEB照射装置は、現行のロールtoロール印刷設備への取付けや、オフラインでのコーティングの硬化など、さまざまな方式へ対応いたします。
また、受託生産についても相談を承っております。装置の仕様はもちろんのこと、設備に関する法規制などについても、お気軽にご相談ください。
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参考文献
- グラフト重合のおいしいレシピ 斎藤恭一・須郷高信 著 丸善株式会社
- ポリエステル繊維のフィルムシール方式による電子線グラフト重合 繊維学会誌、2000, 56, No.3, p.126-134