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光応用の知識

紫外線殺菌

2.紫外線による殺菌・不活化

前述したとおり紫外線による殺菌の構造については、古くから研究されその報告も多数あります。しかし、まだ解明されない部分も多く、現在では一般に次の説明がなされています。

細菌はその細胞の中に核を持ち、遺伝情報をつかさどるDNA(デオキシリボ核酸)がその中に存在しています。このDNAの光の吸収スペクトルは図-2のように、260nm波長付近に吸収帯を持っています。また、紫外線の菌類への殺菌効果の波長特性は図-3に示すとおりですが、この2つの図を比較するとわかるように、DNAの吸収スペクトルと殺菌効果の波長特性は、非常に近似しています。

そこで、紫外線を細菌に照射すれば、細菌細胞内のDNAに作用して、水和現象、ダイマー形成、分解などの光化学反応をひき起こし、その結果、菌類が死滅に至るものと考えられています。なかでもDNAのチミンのダイマー形成が一般的な説となされ、図-3に示すように、260nm付近の波長をもつ紫外線の殺菌効果が最も高いとされています。

一方、人工的に紫外線を発生させる低圧水銀ランプについてはそのエネルギー分布を図-4に示しました。石英製ランプは、殺菌灯ガラスに比べて短波長域をよく透過し、また、殺菌効果の高い260nm付近の254nm光を効率良く発光していることから、この低圧水銀ランプが殺菌ランプとも呼ばれることが理解できます。

図-2 DNAの吸収特性


図-3 殺菌作用の分光特性

以上で述べたように、紫外線による殺菌は、すべての菌類に対して有効ですが、菌の種類(大きさ、形状他)や環境などにより紫外線に対する菌の感受性は大幅に違ってきます。例として、代表的な菌を99.9%殺菌するために必要な照射線量を表-2に紹介します。また、紫外線照射による菌類の生存率は、一般に次の式により求めることができます。

S=P/P₀=e-Et/Q

S
菌類の生存率
P₀
紫外線照射前の菌数
P
紫外線照射後の菌数
E
有効な紫外線照度(mW/cm²)
t
照射時間(秒)
Q
生存率Sを1/e=36.8%とするために必要な紫外線照射線量

図-4 低圧水銀ランプの分光分布

表-2 各種の微生物を死滅させるために必要な紫外線照射量

微生物 99.9%不活化に必要な紫外線照射量 文献

No. 学名 和名 検体 (mJ/cm²)
グラム陰性菌(Gram-negative strains) 1 Proteus vulgaris Hau. 変形菌 培地 3.8 1
2 Shigella dysenteriae 赤痢菌(志賀菌) 培地 4.3 1
3 Shigella paradysenteriae 赤痢菌(駒込BⅢ菌) 培地 4.4 1
4 Escherichia coli communis 大腸菌 培地 5.4 1
5 Escherichia coli NBRC 3972 大腸菌 培地 9.8 10
6 Vibrio cholerae コレラ菌
10.2 4
7 Legionella pneumophila レジオネラ属菌
7.5 4
8 Pseudomonas aeruginosa 緑膿菌
16.5 4
9 Salmonella typhi チフス菌
7.5 4
10 Salmonella paratyphi パラチフス菌
9.6 4
11 Salmonella typhimurium ネズミチフス菌
24 4
グラム陽性菌(Gram-positive strains) 12 Streptococcus hemolyticus (Group A-Gr.13) 溶血連鎖球菌(A群) 培地 7.5 1
13 Streptococcus hemolyticus (Group D, C-6-D) 溶血連鎖球菌(D群) 培地 10.6 1
14 Streptococcus faecalis R. 腸球菌 培地 14.9 1
15 Staphylococcus albus 白色ブドウ球菌 培地 9.1 1
16 Staphylococcus aureus 黄色ブドウ球菌 培地 9.3 1
17 Staphylococcus aureus NBRC 12732 黄色ブドウ球菌 培地 9.4 10
18 Bacillus mesentericus fuscus 馬鈴薯菌 培地 18 1
19 Bacillus mesentericus fuscus (spores) 馬鈴薯菌(芽胞) 培地 28.1 1
20 Bacillus subtilis Sawamura 枯草菌 培地 21.6 1
21 Bacillus subtilis Sawamura (spores) 枯草菌(芽胞) 培地 33.3 1
22 Bacillus subtilis (spores) 枯草菌(芽胞)
36 4
23 Bacillus subtilis (spores) NBRC 3134 枯草菌(芽胞) 培地 20.3 9
24 Bacillus anthracis 炭疽菌
13.5 4
25 Bacillus anthracis (spores) 炭疽菌(芽胞)
163.5 4
26 Mycobacterium tuberculosis 結核菌
18 4
酵母 (Yeasts) 27 Saccharomyces cerevisiae untergar. Munchen ビール酵母 培地 18.9 1
28 Saccharomyces Sake 日本酒酵母 培地 19.6 1
29 Zygosaccharomyces Barkeri 生姜酒モロミ酵母 培地 21.1 1
30 Willia anomala ウイリア属酵母 培地 37.8 1
31 Pichia miyagi ピチア属酵母 培地 38.4 1
ウイルス(Virus) 32 Adenovirus 40 アデノウイルス 蒸留水 90 7
33 Poliovirus 1 ポリオウイルス 蒸留水 12 7
34 Rotavirus SA-11 ロタウイルス
24 7
35 Hepatitis A A型肝炎ウイルス
11 7
36 Feline calicivirus ネコカリシウイルス 地下水 21 7
37 Coxsackievirus A-9 コクサッキーウイルス 海水 36 7
38 Bacteriophage Qβ (E.coli phage) ファージQβ PBS 54 7
39 Bacteriophage MS2 (E.coli phage) ファージMS2 蒸留水 42 7
40 Influenza インフルエンザウイルス
6.6 3
原生動物(Protozoa) 41 Cryptosporidium parvum 原虫 クリプトスポリジウム
12 7
42 Giardia lamblia 原虫 ジアルジア
11 7
43 Microcystis aeruginosa PCC 7006 アオコ
120-180(増殖抑制) 6
44 Nematoda 線虫
232.9(99%) 5
かび(Mold stores)
学名 胞子の色 主な繁殖場所


45 Oospora lactis クリーム, バター
10.2 2
46 Mucor racemosus 灰白
34.2 2
47 Penicillium roqueforti チーズ
26.4 2
48 Penicillium expansum オリーブ リンゴ, 果物
22.2 2
49 Penicillium digitatum オリーブ ミカン
88.2 2
50 Rhizopus nigricans 果物, 野菜
222 2
51 Aspergillus glaucus 青緑 土, 穀物, 乾草
88.2 2
52 Aspergillus flavus 黄緑 土, 穀物
120 2
53 Aspergillus niger 全食品
264 2
54 Aspergillus brasiliensis NBRC 9455 全食品 分散液 417 8
55 Aspergillus niger NBRC 10649 全食品 分散液 261 8
  • [文献]
  • 1.河端俊治, 原田常雄, 殺菌灯による水の消毒, 照明学会誌, 36(3), pp.89-96, 1952
  • 2.河本康太郎, 紫外線による空気殺菌法とその効果, 食品工業, pp.33-40, 1970
  • 3.Kaufman, J.E, IES Lighting Handbook 5th Ed., 1972
  • 4.Water Environment Federation, Wastewater Disinfection. Manual of Practice FD-10, 1996
  • 5.N.Masamoto, et al., Removal Methods of Nematoda contained in the effluent of activated carbon, 2001W.W.C. of Int.Wat.Assoc., 2001
  • 6.酒井宏治ら, 紫外線によるMicrocystis aeruginosaの増殖抑制及びミクロキスティンの放出抑制, 日本水環境学会シンポジウム, 2007
  • 7.平田強編, 紫外線照射-水の消毒への適応性, 技報堂出版, pp.101-116, 2008
  • 8.吉野潔, 黒カビ(Aspergillus niger)を光照射の指標微生物として使用する際の条件の検討, IWASAKI技報No.21, pp.14-19, 2009
  • 9.吉野潔, 坂井徳浩, 岩崎達行, 芽胞形成菌の紫外線感受性, IWASAKI技報No.22, pp.9-12, 2010
  • 10.吉野潔, 紫外線殺菌における指標微生物の紫外線感受性(その3), IWASAKI技報No.26, pp.8-14, 2012
  • [本表取り扱い上の注意]
  • 1) 本表中の値は、様々な試験条件下で実施していますので厳密な相互比較は困難であることはご了承ください。
  • 2) 本表掲載の紫外線照射量は、出典記載の値から計算して出した値もあります。

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