技術資料

画像処理による油膜検知に関する基礎的研究(その2)
- 河川における油膜検知システムについて -

技術開発室 技術部 技術開発グループ

キーワード

画像処理システム,水質汚濁,油膜,検知,河川,干渉縞,CIE色度図

3.油膜検知システムの概要

図8は,提案する油膜検知システムの処理の流れを示している。はじめに,撮影された映像は,同図に示すように画像処理部へいくものと,処理をせずモニタに出力されるものとに分かれる。そのため,油膜の有無に関わらず河川状況を常時モニタリングできるようになる。次に,画像処理部では,前述の画像処理方法により水面上の油膜の有無の判別を行なう。さらに,油膜が検知された場合にはアラームが出力される。なお,処理画像は油膜の有無に関わらずモニタに出力される。

図9は,油膜検知処理結果の一例を示したものである。同図より,画像処理前後の画像をモニタ表示することにより,油膜の有無がより明確になることがわかる。

図8 油膜検知システムの処理の流れ

図9 油膜検知処理結果

4.油膜検知システムの設置要件および設置例

4.1 設置要件

図10は,油膜検知システムの基本的な設置図を示している。以下に本システムの設置要件を示す。

図10 油膜検知システム設置図

図11 水と油の反射率の差

  1. 設置場所
    本システムの設置場所としては日中,外乱による影響が少ない場所,すなわち導水路や排水機口などの暗渠が推奨される。これは,画像処理により油膜を検知するためには比較的安定した光環境が必要なためである。
  2. 光源
    光源は,水面上にほぼ均一な輝度の映り込みを生成するように照射する必要がある。図では蛍光灯と透過性を有する乳白色アクリル板などを水面上に設置し,水面に均一な輝度の映りこみを生成している。
  3. 撮影角度
    CCDカメラは,水面上の光源の映りこみを撮影するため,光源に対し正反射方向に配置される。このとき,撮影角度は水と油の反射率の差がなるべく大きくなるように配置しなければならない。図11は,水と油の撮影角度に対する反射率(p偏光)の差を示したものである。同図より,撮影角度が約50°以上で,水の方が油より反射率が高くなっていることが分かる。また撮影角度が約30°以下では,水と油の反射率の差は大きいが,光源とカメラの位置がほぼ水面真上になり,設置が困難となる。このことから本研究では,光源の入射角度,CCDカメラの撮影角度をそれぞれ40°とした。

4.2 設置例

図10では,提案する油膜検知システムの基本的な設置例について示した。しかしながら,このような場合では,新たに光源やカメラを設置しなければならず導入コストが大きくなってしまう。また,実際に河川管理事務所などに聞き取り調査を行なったところ,「既存の監視カメラを用いて検知出来ないか」といった意見が多かった。そこで,油膜検知が可能な既存の監視カメラの設置場所について検討を行なった。

図12は,油膜検知が可能だと考えられる,既存の監視カメラの設置場所を示している。

同図の監視カメラは橋梁下や排水機口の近傍に設置され,河川側壁の水位計を監視しているものである。この場合,橋梁下や水路内を撮影するため外乱光の影響が少なくなる。また,光源としては,河川側壁の水面への映りこみを代用できる。

さらに,水位計を同時に撮影することで,水位監視と油膜検知を同時に行なえるといった利点がある。ただし,夜間時などは,壁面を均一に投光する照明が必要になる。

このようにして,提案する油膜検知システムでは,基本的な設置要件を満たすことで,光源とCCDカメラといった比較的簡単な構成で油膜検知が行なえると考えられる。

図12 油膜検知システムの設置例

5.おわりに

本研究では,環境情報の一つである河川上の油膜を画像処理により検出するシステムの検討を行なった。その結果,均等色差空間を表すLab表色系を用いて色の分布状態を評価することで水面上の油膜が抽出できることが明らかになった。さらに,提案する油膜検知システムの実施には,現在設置されている監視カメラの中で,本システムの設置要件に当てはまるものを選択することで,既存の監視カメラを用いた油膜検知が可能になるものと考えられる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第16号掲載記事に基づいて作成しました。
(2007年3月28日入稿)


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