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技術資料

LED街路灯 氷柱実験報告

国内営業部 札幌営業所 赤坂 人司(※注),能戸 康彦,山本 直哉

  • ※注:本原稿入稿時(2010年11月29日)の所属。現所属は電通設備株式会社。

キーワード

LED街路灯,氷柱,実験報告,天部形状

1.はじめに

本氷柱実験は,「冬季の札幌市民が,安全に安心して歩行出来る歩道及び車道環境整備」を目的に,冬場にLED街路灯の天部縁辺から垂下する氷柱の発生と同街路灯の天部形状・角度との関係を,低温室内という人口環境にて予測実験を行い検証したものである。

2.実験概要

2.1 実験目的

  1. 低温時における氷柱特性の調査・把握。
  2. LED街路灯の天部形状・角度と氷柱の発生頻度・成長度合いとの関係の検証。
  3. LED街路灯の氷柱発生対策品と標準品(従来品)による氷柱発生状況の比較検証。

2.2 実験要件

実験日
2010年9月15日(水曜)~9月17日(金曜)
実験期間
3日間
  1.  15日:実験機器の搬入・設置+試験実験 0.5日
  2.  16日:本実験 1日(LED点灯状態/環境変化)
  3.  17日:本実験予備/撤収:0.5日/0.5日
実験時間
8:30~18:30

2.3 実験場所

氷柱実験は,道立総合研究機構 産業技術研究本部 工業試験場(札幌市北区 北19条西11丁目)内にある低温実験室にて「最低温室/中低温室」の条件で室内環境実験を行った。

3.実験条件

3.1 実験対象器具並びに環境条件

本実験で対象とするLED街路灯氷柱対策品の外観写真を写真1に,器具図面を図1にそれぞれ示す。また,LED街路灯標準品の外観は写真2中に示す。

氷柱実験における実験環境条件を表1に示す。同表で「屋根」とは,LED街路灯本体とは別に本体天部に取付けられた氷柱抑制用の付帯的な“屋根”を指す。氷柱対策品の“屋根”は,4つの斜面が概略四角錐を形成し,その斜面の勾配がすべて凡そ60°に設定した。これに対して,標準品の“屋根”部の縁辺部の傾斜は20°程度にとどまっている。

写真1 LED街路灯氷柱対策品外観写真

写真1 LED街路灯氷柱対策品外観写真

表1 実験環境条件
  LED街路灯<氷柱対策品> LED街路灯<標準品>
屋根取付位置
  • “屋根”は器具本体に直に接触しないよう,金具を用い,本体の縁の天面から20mm~30mm上に離して取り付け。(※注)
屋根角度 A:≒60度 C:≒20度
実験環境
  • 実験室内気温:-10(℃)前後(中低温室)
  • 実験室内気温:-20(℃)前後(最低温室)
  • 降雪量に換算:2~3(cm/h)8時間継続
  • 安息角:45(度)
備考
  • LED街路灯は,連続点灯状態にて実験。
  • 室内環境気温は温度データロガー/デジタル温湿度計で計測。
  • 氷柱の成長計測と経時変化を画像記録。
  • ※注:器具本体からの熱の影響を避けるのが目的。

3.2 実験内容

3.2.1 降雪量
  • 降雪としては,2~3(cm/h)の降雪を仮定し,圧密(※注)は考慮しないものとする。
  • 雪粒子の付着力を表す安息角は45(度)とする。
  • 降雪量は,照明器具の屋根に付着した雪が変質過程を経て融けて,融雪水に換算した量にて水霧散布実験をする。
  • ※注:地上に落下した雪が,人が踏みしめるなど,外部応力を受けずに,そのまま降り積もった状態。
3.2.2 降雪継続時間

降雪継続時間は,北海道内の月間降水量(mm)を基に,2~3(cm/h)の降雪が連続12時間続いたと仮定する。

なお,仮定の根拠は,理科年表(国立天文台)より,北海道内の過去平均降水量と降雨日数を元に算出する。

3.2.3 降雪環境

降雪は,冬期における真冬日(日最高気温が0℃未満)を想定して,-10(℃)から-20(℃)にて実験する。

3.2.4 降雪換算

降雪密度(g/cm³)は,環境外気温に応じて降雪粒子の結晶形や大きさにより充填密度は異なるが,本実験では平均的な降雪密度0.07(g/cm³)を採用する。降雪に換算する水霧量は,雪の変質過程を経て融けた融雪水の量から計算する。

3.2.5 氷柱実験

氷柱実験は,下記に示す手順により実施する。

  1. 低温時における氷柱特性に関して,事前に資料等で調査する。
  2. 試験体のLED街路灯の屋根(対策/標準品)に,降雪密度0.07(g/cm³)に相当する水霧を,単位時間計測を基本にして,分単位の水噴霧をする。
  3. 氷柱発生頻度と成長程度の記録は,15分間隔での氷柱成長の計測と画像記録により行う。
  4. 項目(3.)を試験体別に繰り返し実施する。
3.2.6 実験用測定器・器材

写真2から写真4に測定器ならびに実験用具を示す。

写真2 氷柱対策品(左側)・デジタル温湿度計(中央)・標準品(右側)
写真2
氷柱対策品(左側)・デジタル温湿度計(中央)・標準品(右側)
写真3 デジタル温湿度計・ノギス・デジタル照度計
写真3
デジタル温湿度計・ノギス・デジタル照度計
写真4 噴霧器

写真4 噴霧器

4.実験

氷柱実験の時間変化の過程を,実験開始当初と終盤の状況により表2,表3に示す。

表2 氷柱実験の時間変化一覧表 <実験日時:9月16日(木曜日)>

表2 氷柱実験の時間変化一覧表 <実験日時:9月16日(木曜日)>

表3 氷柱実験の時間変化一覧表 <実験日時:9月17日(金曜日)>

表3 氷柱実験の時間変化一覧表 <実験日時:9月17日(金曜日)>

5.実験結果

氷柱発生実験は,最初の4時間は概ね-20℃の環境下において実験を行った。氷柱実験経時変化は表2,表3中の写真を参照のこと。

写真5 実験状況

写真5 実験状況

氷柱実験対象器具は,下記の写真5に示す様に,同一取付金具(仰角20度)に平行に取付けて,取付け位置の相違による環境変化の影響の無い設置方法とした。

低温環境下での時間変化による氷柱発生の状況は,-20℃環境下では顕著な氷柱成長は認められなかった。その後一時的に,9月16日10時30分の前後に環境変化:温度-13℃,湿度85%程度の時に初めて標準品に氷柱成長が始まったが,対策品は変化無しであった。

なお氷柱実験経時変化を表2及び表3に示す。

本実験において氷柱成長が促進された環境条件は,温度-6~8℃,湿度80~90%(13時以降の環境)で変動する環境下であった。

下記の写真6及び写真7は,低温環境下に8時間経過後の氷柱の発生状況を器具正面側から撮影したものである。

対策品は長さ3mm程度の氷柱一つが発生した。一方,標準品は,長い氷柱(15mm程度)3本と短い氷柱(5mm程度)3本の発生が認められた。

対策品は実験期間を通して氷柱の成長は5mm程度に抑えられた。標準品の氷柱は,温度-6~8℃,湿度80~90%環境下では時間経過と共に成長していく傾向のあることが判った。氷柱実験の時間変化を表2及び表3に示す。

対策品を観察した結果では,融雪水が氷柱となり成長する前に,対策屋根の勾配により,雫となって落下する為,氷柱の発生が抑制された。これに対して標準品では,器具取付けアーム側に滞る為,融雪水が氷柱となり,時間経過と共に成長した。

写真6 標準品(正面方向より)

写真6 標準品(正面方向より)

写真7 対策品(正面方向より)

写真7 対策品(正面方向より)

下記の写真8及び写真9は,約8時間経過した時点での外観であるが,標準品では氷柱の発生状況が顕著である。

なお時間経過状況は,表2及び表3を参照とする。

写真8 対策品(側面方向より)

写真8 対策品(側面方向より)

写真9 標準品(側面方向より)

写真9 標準品(側面方向より)

下記の写真10から写真13は,概ね15時間経過後の標準品と対策品の外観写真である。

下記に示す写真10及び写真11は,標準品の天面の氷発生状況であるが,最初は器具天面に氷の膜が発生する。その後,時間経過と共に,その氷の膜が,器具の傾きに応じて低い側にて徐々に氷が成長し,器具側面を伝って垂れ下がり鉛直方向に氷柱となり成長する。

下記に示す写真12及び写真13は,概ね15時間経過後の対策品の外観写真である。

対策品は,実験の全期間を通して,顕著な氷柱の発生は認められなかった。

写真10 標準品(天面状況)

写真10 標準品(天面状況)

写真11 標準品(天面状況)

写真11 標準品(天面状況)

写真12 対策品(天面状況)

写真12 対策品(天面状況)

写真13 対策品(天面状況)

写真13 対策品(天面状況)

6.まとめ

本実験より判明した結果を,下記1から3に示す。

  1. 氷柱は-20℃程度/湿度70%の(氷点下)環境では,氷柱成長の元である融雪水の発生が抑制される為に,極端な成長は標準品/対策品共に認められなかった。
  2. -5℃~-10℃(一般的に水の融点は0℃)で湿度80~90%程度の過飽和環境下では,氷柱成長の元である融雪水の発生が抑制されないが,その場合,融雪水が雫となって地上に容易に落下せず器具天面に留まる様なフラットな形状を有する構造の器具(標準品)においては,氷柱の成長が認められ,時間経過と共にその成長は進行した。
  3. 本実験の条件下では,器具天部に60°程度の急峻な勾配を有する斜面で構成された付属屋根を備える対策品においては,5mm程度の氷柱発生に留まり,その後の成長も認められなかった。

氷柱の発生は,一般的に,下記に示す3条件下にて発生すると言われている。

  1. 氷点下であること。
  2. 氷晶核が存在していること。
  3. 大気の水蒸気が過飽和状態にあること。

本氷柱実験の環境は,上記の3条件を満たすように設定したが,実験に使用したLED照明器具(1W×20個)の点灯による発熱では「氷柱の顕著な成長は,氷点下であっても極端な厳寒環境(-20℃以下)ならば起こらない」ことが判った。

標準品の器具は,本実験結果より,冬場に予想される環境条件(温度-5℃~-10℃,湿度80~90%程度の過飽和環境下)においては多数の氷柱発生があり,その後も氷柱成長が顕著であった。

一方,氷柱対策品の器具は,5mm程度の氷柱発生に留まり,その後の成長もあまり認められなかった。

7.課題

本実験条件下では,氷柱対策を施した器具での氷柱発生は上述の結果となったが,冬期に実フィールド環境にて再検証することが課題といえる。

8.総括

比較的人口の密集した場所に設置されるLED街路灯は,「冬から春先における氷柱落下による万一の事故を未然に防止する為に」,器具天面が60°程度の急峻な勾配を有する氷柱対策品を採用することが適切である。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第24号掲載記事に基づいて作成しました。
(2010年11月29日入稿)


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