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技術資料

レーザー投光器「LAXIS」

新技術開発部 応用技術開発課

キーワード

LAXIS,ラクシス,レーザー,超狭角投光器,レーザー照明ガイドライン,照明技術開発賞受賞

1.はじめに

LED照明器具は蛍光灯やHIDといった従来光源と比較して発光素子が小さいため,配光制御がしやすく照明率が優れているといった特長がある。一方でLEDは,所望の光学特性(光量)を得るためには,照明器具の中に多数のLED素子を並べる必要があり,出力の大きな照明器具になるほど配光制御が難しくなり,エネルギー損失が大きくなるといった課題がある。そのため,大出力のサーチライトのような超狭角投光器では,いまだにキセノンランプなど,高輝度点光源を有する放電灯が使われているのが現状である。

そこで本開発では,レーザー光を蛍光体に集光することで,固体光源を用いた高輝度点光源を実現し,一般照明用途として,キセノンスポットライト代替品となる超狭角のレーザー投光器の商品化を実現した。

本稿では,その概要,従来技術と比較した技術的な特長などについて述べる。

2.商品概要

図1 外観図

照明用の光源として,青色半導体レーザーと蛍光体を用いた高輝度の白色点光源を実現し,屋外常設に耐えうる,耐震性,耐衝撃性,耐雷サージ性能,防水性能などを有した軸光度が高く,遠方に光を届けることができる超狭角投光器を開発した。

外観図を図1に,配光性能を図2に,外形寸法図を図3にそれぞれ示す。

図2 配光性能

図3 外形寸法図

軸光度1800万cdを有するため,1km先を18ℓxで照らすことができ,1ℓx到達距離は4.2kmとなる。器具外部に出射される光は,青色レーザー光を蛍光体で白色光に変換することでレーザー光を含まない自然光(インコヒーレント光)に変換することで後述の安全性に関する認証をクリアしている。

3.レーザー光源ならびに狭角投光器の技術動向と本開発品の特長

3.1 レーザー光源の先行技術

青色半導体レーザーを用いて蛍光体を励起する点光源技術については,主にプロジェクター分野で実用化が広がっている。従来の放電ランプから上記点光源技術に移行することで,プロジェクターの寿命が大幅に改善し,低消費電力化も実現した。

しかしながら,レーザープロジェクターの光源は,蛍光体冷却用の回転ホイールなどの駆動部材から構成されており,屋外における長期的な風圧荷重や振動に光学系が耐えられず,耐衝撃性も低い。また,屋外相当の防水性と雷サージ対策もされていないため,長期的な屋外設置は不可能であった。

3.2 狭角投光器の現状

従来,遠方スポット照明としてキセノンスポットライトが,モニュメント照明や,陸橋などの大規模施設の照明,イベントの演出照明や,スタジアムなどにおけるヒーローインタビュー,災害時用の監視照明,船舶照明などの分野で使用されている。

LEDの技術革新が進んではいるが,キセノンランプと同等の高輝度な点光源は実現できていない。そのため,現在でもLEDを用いた狭角投光器では,軸光度が100万cd程度であり,1000万cdを超えるキセノンスポットライトへの置き換えは実現できていない。

3.3 本開発品の従来技術との差異

3.3.1 キセノンスポットライトとの比較

本開発品(以下,レーザー投光器)と,キセノンスポットライトの特性比較を表1に示す。

表1 特性比較
( )内は従来比
レーザー投光器 LAXIS
(開発品)
キセノンスポットライト
(従来品)
軸光度 1800万cd(同等) 1800万cd
1/10ビームの開き 2.1°(同等)
光源消費電力 220W(78%減) 1000W
器具消費電力 236W(85%減) 1500W
重量 27kg(72%減)
灯具 15.5kg,電源 5.2kg
75kg
灯具 55kg,電源 20kg
灯具寸法 551×296×160mm(50%減) 300×300×600mm
光源寿命
(光束維持率70%)
10000時間(16.7倍) 600時間
冷却方式 自然空冷 ファンによる強制空冷

レーザー投光器は固体光源を用いることで,キセノンスポットライトと同等の軸光度およびビームの開きを1/5の消費電力で実現した。また,キセノンスポットライトは光源寿命が600時間と短く,頻繁なランプ交換が必要だったが,レーザー投光器の光源寿命は従来の10倍以上である10000時間となることで,省メンテナンス性を実現した。

さらに,キセノンランプはサイズが大きく,点灯電源も高圧パルスおよび直流高電圧が必要になるため,灯具,電源ともに大形で重くなる。一方,レーザー投光器では,光源部が小さく,LED照明器具と同等の電源で点灯できることから,灯具,電源ともに,小形,軽量化を実現した。

3.3.2 光源の光束密度と配光の広がり

LED光源では,高輝度なものでも素子 1mm²あたりの光束は28ℓm/mm²である。そのため,大光束を実現しようとすると光源サイズを大きくしなければならず,光学効率が低下し,狭角LED投光器では図4(左図)のように配光が広がってしまう。

他方,レーザー投光器では,レーザー特有の集光性を利用し,707ℓm/mm²と,LEDの25倍の光束密度の点光源を生成し,精度の高い配光制御を実現することで,図4(右図)のようなシャープな配光を実現することができた。

図4 配光比較

3.4 技術開発の概要

3.4.1 独自光学系ならびに安全機構の開発

青色半導体レーザーの出射光は,ビームの開きが横方向と縦方向で大幅に異なる特長がある。そのため,一般的な非球面レンズで蛍光体に集光すると,円形状に集光されずに投光面も歪となる。そこで本開発品では,ビームの開きに合わせた特殊レンズを設計し採用したことで,蛍光体面で集光された光を円形状とすることができた。

また,耐熱性が高く色むらがない特殊な蛍光体を採用し,放熱構造を最適化して駆動部材のない独自の自然冷却構造を実現することで,長期的な器具の信頼性と静音性を確保している。

そのほか故障時の安全対策としては,青色レーザー光が外部に直接出射されないように,光学部材の二重固定や遮光板の設置など,多重フェールセーフ構造としている。

上記の構造的な対策に加え,器具内のセンサで白色光を常時監視し,レーザー光が外部に漏れるといった異常が発生した際にレーザー出力を遮断する安全機構を具備している。

3.4.2 規格及びガイドラインの策定

レーザー光源を用いたプロジェクターについては,安全性に関するガイドラインが存在していたが,レーザー光源を用いた照明器具についての安全ガイドラインは存在しなかった。そのため,119団体からなる業界団体である,可視光半導体レーザー応用コンソーシアムにおいてタスクフォースを立ち上げ,レーザー照明に関する安全ガイドライン(図5)を策定し,準拠する構成とした。また,レーザー商品としての評価は,国際規格IEC60825および,IEC62471の内容にて外部機関の認証を得た。

図5 レーザー照明のガイドライン(一部抜粋)

4.おわりに

本稿では,レーザー光源を用いた投光器について概説した。今後,寿命やサイズの問題からキセノンランプでは展開が難しかった一般照明においても本開発技術を用いて,必要な場所に必要なだけ照明する商品を開発し,よりよい照明環境の実現に貢献したい。

謝辞

商品の開発にあたり,大阪大学レーザー科学研究所の山本和久教授,ガイドライン作成にあたっては,同,木下順一招聘教授に多大なご協力,ご支援いただきましたこと,感謝いたします。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第41号掲載記事に基づいて作成しました。
(2020年5月22日入稿)


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