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技術資料

植物工場の照明システム

技術本部 新技術開発部 光応用技術開発課

キーワード

植物工場,人工光源,照明機器,植物育成,環境制御,LED

本資料は2014年2月5日に開催された公益社団法人 日本冷凍空調学会技術セミナー(西日本地区)「植物工場の最新動向と環境制御技術」の配布資料を一部追記修正したものである。

1.はじめに

植物育成への人工照明の応用は,エジソンの白熱電球の発明(1879)から,約40年後(1920)に光周性が発見されたのが端緒とされている。わが国では1937年にキクの電照栽培が試みられ,その普及は愛知・渥美で1950年ごろとされている。一方,植物工場の研究は1974年(高辻)より始められ,現在では平成21年度よりの植物工場推進補助事業(農水省・経産省)により大小併せ,国内150カ所以上で稼働中である。植物工場とは天候に左右されず植物を周年生産できる施設で,葉菜類では約30日間で1作,日産数百から数万株の安定生産出荷が可能である。ここで使用される照明について,一般の工場用照明と大きく異なる点は,「光」が人間の眼の視覚支援用では無く,植物の成育のため,主に光合成のエネルギー源となることである。従って,受光感度も単位も異なり要求光強度も全く異なることとなる。また,植物生産に必要な要素技術としては,人工光源による照明制御技術,コンピュータ利用による温湿度などの空調制御技術,水耕栽培などの栽培技術,その他,密植をさけるための移動栽培,種子の自動播種や収穫装置など,種々の技術を集合した総合技術により成り立っている。特に照明制御技術は光合成に関与して重要な技術として認知され,「植物工場の定義」は人工照明設備の有無ともされている。以下に植物育成に関する基本事項と植物工場に使用される光源・照明システムなどを紹介する。

2.植物育成の基本事項

2.1 植物に有効な放射の波長域

太陽放射は,地球上に直達するまでに種々の散乱や吸収を受け,波長約300~3,000nmの範囲が直達光放射と言われている。この放射は,大きく3つに分類され,紫外放射,可視放射,赤外放射と呼ばれている。人間の視覚に必要な可視放射の範囲は380~780nmで視感度(明所視)のピークは555nmにある。植物にも同様に生理的に必要とされる放射の範囲がある。一方,植物に有効な放射には,生理的有効放射(Physiologically Active Radiation)と光合成有効放射(Photosynthetically Active Radiation:PAR)と呼ばれるものがある(図1参照)。生理的有効放射は波長約300~800nmの帯域で,光合成や色素の生合成,光周性,屈光性,形態形成等,生理的に何らかの効果があるとされている1)。生理的有効放射はその範囲を作用別に5帯域(300~400nmを近紫外光=UV,400~500nmを青色光=B,500~600nmを緑色光=G,600~700nmを赤色光=R,700~800nmを遠赤色光=FR(FarRed))に区分される。光合成有効放射(PAR)は,生理的有効放射の波長範囲内(400~700nm)にあって植物の成育のエネルギー源となるため強い光強度を必要とする。単位は,人間の眼と異なるため専門的には照度(ルクス)は使用されない。光化学反応を介しているため波長範囲内の総光量子束をもって表される。この場合,光源から放射されるエネルギーとして,光合成有効光量子束(Photosynthetic Photon Flux:PPF)と呼ばれる。一方,植物体が受光するエネルギーは光合成有効光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)と呼ばれ,SI単位系によりμmoℓ・m⁻²・sec⁻¹で表される。また関連するガス交換においてもmoℓ単位が使用されるため整合性があるとされている。

図1 植物育成に有効な波長の分類

図1 植物育成に有効な波長の分類

2.2 光合成作用曲線

図2 光合成作用曲線(4種平均値)

図2 光合成作用曲線(4種平均値)

植物が光合成を行う場合,400~700nmの波長範囲の中で同じ効率で光合成を行っているわけではない。人間の眼に視感度があるように,植物にも同様な幅広い感度曲線があり,白色光から有効な波長を選択利用している。図2は,Inada(1976)(草本26種,木本7種作物)2)とMcCree(1972)3)(チャンバー20種,圃場8種作物)による4つの光合成作用曲線を平均化したもので,赤色光部に約675nmと625nmに小さな2つのピークをもつ大きなピークを示し,青色光部440~450nmに小さなピークのあることを示している。赤色光の作用が高く,青色光の作用が低いことを示唆している。光源の光組成バランスにおける評価としては光源の分光エネルギー分布に上記作用曲線を乗じたものを育成放射効率とし,表5の代表的光源の特性表に表記した。さらに,育成放射効率のみの評価では赤色光に偏った光源が優位になるため,表1には各作用曲線の100nmごとの光組成バランスと平均した作用曲線の光組成バランスを示す。この光組成バランスは標準的な植物の育成用で,植物工場などの生産現場で生育促進を目的とする場合には赤色光を増やし,内成分増強や丈夫に育成する場合は青色光を増やすなどの調整が必要となる。

表1 各作用曲線の光組成バランス
  青色光(%)
(400~500nm)
緑色光(%)
(500~600nm)
赤色光(%)
(600~700nm)
R/B比 備考
光量子感度 27.3 33.3 39.4 1.44
光合成
作用
曲線
Inada 1 26.1 31.5 42.4 2.22 草本類
26種
平均
Inada 2 19.3 33.5 47.2 3.49 木本類7種
平均
McCree 1 25.0 31.2 43.8 2.52 チャンバー
20種平均
McCree 2 23.5 31.5 45.0 2.74 圃場8種
平均
平均作用曲線 23.5 32.0 44.5 2.71

2.3 光形態形成反応

光放射は,植物の種類や生育段階によって異なるが,発芽や開花,茎の伸長,葉の展開作用等の形態形成にも刺激源または情報源として作用している。作用を与える光質として一般的にはUV-A,青色光,赤色光,遠赤色光が制御している。中でも,種子の発芽においては光受容体であるフィトクロムの弱光反応がよく知られている。赤色光(660nm)照射で発芽が促進され,遠赤色光(730nm)照射によって促進効果が打ち消される反応で,赤色光,遠赤色光を交互に照射した場合,最後の光の効果が現れる。節間の伸長作用では,強光下では青色光が抑制効果を,弱光下では赤色光の抑制効果が高い。混合光照射時には遠赤色光が必要とされ,赤色光/遠赤色光比のバランスで伸長成長が左右されることが知られている4)。また,陽葉の形成は青色光または強光で,陰葉の形成は赤色光または弱光で促される。花芽の形成においては日長が制御(光周性)している。一般的には日長時間12時間を境に以下を短日植物,以上を長日植物,その他特定の日長で花芽分化を起こす中日植物に分類される。ここでの光は花芽形成の刺激源として作用し,植物の種類によって異なるが,赤色光,遠赤色光,青色光が効果的とされている。青色光とUV-Aの光受容体としてはクリプトクロム,フォトトロピンが知られており,屈光性や気孔の開閉に作用している。形態形成における光源の評価として,表5では各種光源の赤色光/青色光(R/B)比を示した。平均光合成作用曲線ではR/B比2.71で赤色光成分の若干多いことが効果的なことを示している。しかしながら,効率的な植物生産の意味では,Inadaら5)のレタス,ハツカダイコンの試験ではR/B比10またはそれ以上が成育に効果的とし,高辻ら6)のLEDによるサラダナの試験でも,R/B比10が効果的なことを示している。概して,赤色光に青色光を10~20%混光することが効果的とされている。また,幼苗などの伸長成長を制御する赤色光/遠赤色光(R/FR)比についても同表に表記した。R/FR比の評価は数値の大きい方が抑制成長側を示し,小さい方が伸長成長側に指向することを示す。Inadaら5)のレタス,ハツカダイコンの試験では,R/FR比は1~2が成育に効果的としている。また,洞口ら7)のレタスとヒマワリの試験では,3波長形蛍光ランプにFR光を付加した数種の4波長形蛍光ランプを使用し,R/FR比0.78程度が効果的としている。

2.4 光合成の光強度

図3 光合成速度と光強度

図3 光合成速度と光強度

図3は,光合成の光受容能力を表すもので,光合成時の炭酸ガスの収支を計測する。光量が低い場合は,植物自身の呼吸による炭酸ガスの放出量が,光合成の原料として吸収される量より多く,見かけ上の炭酸ガスが放出される。光量を高くしていくと,ある点(A点)で炭酸ガスの出入りが平行し,見かけ上の放出はなくなる。この点を,光補償点と言う。さらに,光量を高くしていくと吸収量が飽和する点(B点)がある。この点を光飽和点と言い,植物育成に適切な光量はその目的により,この両点の間で値を決定する。一方,弱光条件下で成育する植物(レタス,ミツバ,ハーブ等葉菜類)は,光飽和点の強度が低く,光補償点の強度も低いため,人工光照射による生産や補光,及び成育維持を行うのは比較的容易である。表2は主要作物の光飽和点,光補償点4)を示す。

表2 主要作物の光飽和点と光補償点
  光飽和点(kℓx) 光補償点(kℓx) 備考
イネ 40~50(672~840) 0.5~1.0(8~17) 村田 1961
ダイズ 20~25(336~420) 1~1.5(17~25) Böhning & Burnside 1956
トマト 70(1176) 巽・堀 1969
ナス 40(672) 2(34) 巽・堀 1969
キュウリ 55(924) 巽・堀 1969
メロン 55(924) 0.4(7) 巽・堀 1969
エンドウ 40(672) 2(34) 巽・堀 1969
セルリー 45(756) 2(34) 巽・堀 1969
レタス 25(420) 1.5~2(25~34) 巽・堀 1969
ミツバ 20(336) 1(17) 巽・堀 1969
  • *( )内の数値は,各照度に自然昼光6500K時のPPFDの換算値
    (16.8μmoℓ・m⁻²・sec⁻¹/1kℓx)を乗じた時のPPFDの参考値。

3.植物工場の照明

植物生産に必要な要素技術としては,表3に示す如く大きく地上系と地下系に分かれる。地上系では太陽光に変わる人工光源による光環境制御技術(照明),コンピュータ利用による温湿度などの気象環境制御技術(空調),地下系では水耕栽培などによる施肥,冠水の自動制御技術(栽培),その他,種子の自動播種,密植をさけるための移動栽培装置,収穫装置など,種々の技術を集合した総合技術である。時間ごとに変わる植物の成育をコンピュータにより集中管理することで,周年安定栽培を行う複合環境制御技術である。従って,照明のみならず他の要素技術を理解し照明計画を進めることが重要である。表4にはレタスなどの葉菜類の基本的な育成環境制御値の目安を,図4には完全閉鎖型システム,図5には太陽光併用型システムの構成例を示す。

表3 植物育成の要素技術と植物工場
  地上系 地下系 植物工場
要素
技術
人工光源による光環境制御,コンピュータによる温度,湿度などの気象環境制御 水耕栽培などによる施肥,冠水の自動制御 コンピュータによる集中管理,周年,安定数量,同品質,省力化による栽培実現
因子 光・温度・湿度・風・CO₂ 水・養分・植物支持体 照明・空調設備・栽培機材
表4 葉菜類の育成環境制御値の目安
  環境制御値の目安 備考
光強度 15,000~25,000ℓx 成育段階で調整
温度 20~25℃ 昼夜格差(5~10℃)
湿度 70~80% 相対で50~90%
CO₂濃度 1,000~15,00ppm 成育段階で調整
風速 0.3~0.4m/sec 幼苗0.1~0.15
養液温度 20~25℃ 昼夜格差
PH 5.5~6.5  
EC 1.2~2.4mS/cm 成育温度で調整
溶存酸素 5mg/ℓ 飽和の50~60%以上
養液循環量 25ℓ/ベット 湛液式基本
図4 完全閉鎖型システム構成例

図4 完全閉鎖型システム構成例

図5 太陽光併用型システム構成例

図5 太陽光併用型システム構成例

3.1 植物工場の種類と照明方式

植物工場の種類は,設備方式により大きく2つに大別される(図6参照)。太陽光を完全に遮蔽した「完全閉鎖型」と太陽光を利用しながら不足光量を人工光源で補光する「太陽光併用型」である。さらに,具体的には植物の栽培方式により被照明面は大きく3つに分類される。平面移動式,トライアングル式,多段式である。平面移動式は成育段階で密植による成育不良を避けるため株間を広げる移動を行う方式,トライアングル式は栽培面積を増加させるため栽培パネルを三角錐形に立体的にした方式,多段式は5~10段の棚式で栽培面積を立体的に増加させる方式である。それぞれの栽培方式により照明方式も異なる。平面移動式については通常の高輝度放電(HID)ランプと反射笠(広照型)で,トライアングル式ではHIDランプによる特殊双照型照明器具で,多段式においては照射距離が短いため蛍光ランプ(FL)や発光ダイオード(LED)による近接照射が行われている。

図6 植物工場の種類と照明方式

図6 植物工場の種類と照明方式

3.2 育成照度レベル

育成照度レベルは,成育段階により2つに分かれる(図7参照)。播種時については,通常1~2日間の暗黒下で発芽させる。発芽後,「育苗1」として,FL・LEDやHIDランプによる10000~15000ℓx(150~200μmoℓ・m⁻²・sec⁻¹)の照度下で1週間程度照射され,その後「育苗2」として20000~25000ℓx(250~350μmoℓ・m⁻²・sec⁻¹)で約2週間栽培される。「育苗2」の後,株間調整を行い「育成」で2週間程度経過後,収穫される。育苗から収穫までの期間は,栽培品種によっても異なるが30~35日間とされている。

図7 成育段階と照度レベル

図7 成育段階と照度レベル

3.3 育成用光源と照明例

植物工場で実際使用されている光源は,蛍光ランプ(FL),メタルハライドランプ(MHL),高圧ナトリウムランプ(HPSL),発光ダイオード(LED)の4種類である。FLは育苗用から育成用に近接照射で使用されており,光色は3波長昼白色形が主に使用されている。図8はFLによる多段式の照明例を示す。MHLは海外での使用が多く,主に葉色の発現用にHPSLと混光照射で利用されている。図9は遺伝子組換体試験用閉鎖型植物工場で育成放射効率の高いセラミック発光管を使用したMHL照明例を示す。HPSLは,最も育成放射効率が高いため,設備方式に限らず育成用に古くから利用されている。図10は完全閉鎖型トライアングル式栽培方法を,図11は太陽光併用型の実施例を示す。図12は玉川大学によるLED照明,図13はコープフーズ社の手巻き鮨用レタス生産のLED照明例を示す。LEDの植物育成への応用については,安価な白色型LED(青色ベース)を利用する方法と赤色(660nm)や青色(460nm)など有色光の単独や組合せ利用する方法がある。白色型については,HPSLの高効率(150ℓm/W)を目標に開発競争が行われており,蛍光体の改善や赤色光素子の追加により演色性も改善され,電球型6.5Wでは光合成作用曲線に比較的類似した分光分布を有すものも開発されている(図14参照)8)。表5には代表的光源の特性を示す。特性表中,PARエネルギーはランプ光束当たりのPAR放射束を,PPF効率はPPF総放射束をランプ入力で除したもの,換算値は照度当たりの光量子束密度を表している。育成放射効率,PARエネルギー,PPF効率は,いずれも数値の高い方が植物育成効果の高いことを示している。表6は各種光源のエネルギー配分例を示す。表7は市販品LEDø5mmの砲弾形の特性例(実測値)を,表8には白色LEDの照度・光量子束密度換算値を,表9には有色光LEDの照度・光量子束密度の換算値を示すので参考願いたい。

図8 多段式植物工場(安全野菜社・山形)

図8 多段式植物工場(安全野菜社・山形)

図9 遺伝子組換え用植物工場(北海道産総研)

図9 遺伝子組換え用植物工場(北海道産総研)

図10 完全閉鎖型植物工場(キユーピー社)(福島県白河市)

図10 完全閉鎖型植物工場(キユーピー社)
(福島県白河市)

図11 太陽光併用型植物工場(グリーンズプラント中越)(新潟県長岡市)

図11 太陽光併用型植物工場
(グリーンズプラント中越)(新潟県長岡市)

図12 LED菜園(玉川大学農学部)

図12 LED菜園(玉川大学農学部)

図13 LED照明(コープフーズ兵庫)(中村謙治,2013)

図13 LED照明(コープフーズ兵庫)
(中村謙治,2013)

図14 白色電球型LEDの分光分布

図14 白色電球型LEDの分光分布

表5 植物工場に使用される代表的光源の特性
ランプ
種類
大きさ(W) 光色 ランプ
効率
(ℓm/W)
育成放射効率(%) PAR
エネルギー
(mW/ℓm)
R/B 比 R/FR 比 PPF 効率 換算値
(μmoℓ/ℓx)
備考
蛍光
ランプ
40 白色 77.5 15.1 2.8 0.74 15.71 0.98 0.0127  
40 3波長昼白 89 18.5 3.1 0.71 12.32 1.23 0.0138  
40 植物用 33.3 7.6 3.1 1.40 44.39 2.42 0.0727  
32 3波長昼白 100 18.5 3.1 0.71 12.32 1.38 0.0138 Hf形
110 白色 81.5 15.1 2.8 0.74 15.71 1.03 0.0127  
110 3波長昼白 83.8 18.5 3.1 0.71 12.32 1.16 0.0138  
メタル
ハライド
ランプ
400 一般形 100 19.5 2.9 0.56 6.86 1.32 0.0132  
400 5波長形 95 20.9 3.2 0.70 7.75 1.46 0.0146  
400 白色 95 23.7 3.5 1.20 3.45 1.55 0.0163 セラミック形
360 白色 105.6 24.4 3.2 1.38 3.96 1.57 0.0149 セラミック形
高圧
ナトリウム
ランプ
360 一般形 138.9 28.7 2.6 4.46 4.59 1.74 0.0126  
430 植物用 117.9 24.1 2.5 4.03 6.27 1.46 0.0124  
660 一般形 152 28.7 2.5 4.46 4.59 1.90 0.0126  
940 一般形 157 28.7 2.5 4.46 4.59 1.98 0.0126  
表6 各種光源のエネルギー配分(河本,2009)
  紫外放射(%) 可視放射(%) 赤外放射(%) 対流・伝導損(%)
太陽光 2~5 40~50 50~55
白熱電球 0~0.2 8~14 80~85 5~8
蛍光ランプ 0.5~1 25 30 44
高圧水銀ランプ 2~4 13~16 60 16~22
メタルハライドランプ 2~7 20~40 50~67 7~20
高圧ナトリウムランプ 0.3 27~30 47~63 10~23
白色LED(青ベース) 0 12~20 0~0.2 80~88
表7 LEDの特性(市販品実測例)
光色 形式 ランプ電力(W) 全光束(ℓm) ランプ効率(ℓm/W) 光度(cd) ピーク波長(nm)
赤色 KR5004X 0.04 0.28 7.9 1.3 660
緑色 NSPG510S 0.07 3.39 47.3 7.5 525
青色 NSPB510S 0.07 0.82 12.4 3.2 470
白色 NSPW510BS 0.07 2.23 32.7 2.9 470
表8 白色LEDの照度・光量子束密度換算値
  蛍光ランプHf32W
(5000K)
蛍光ランプ式LED
(5000K)
LED
(6000K)
LED
(3200K)
光量子束密度/1kℓx 13.15 14.14 14.13 13.52
光量子束密度/1kℓx
(計算値)
13.28 14.96 14.31 14.96
  • 単位:μmoℓ・m⁻²・sec⁻¹
表9 有色光LEDの照度・光量子束密度換算値
  青色光(460nm) 緑色光(525nm) 赤色光(660nm) 備考
光量子束密度/1kℓx 46.47 7.90 120.89 実測値,
ミノルタT-10
ライカーLI-250
光量子束密度/1kℓx
(計算値)
50.26 8.42 121.10 分光分布より
計算
  • 単位:μmoℓ・m⁻²・sec⁻¹

4.照明機器

植物工場で使用される照明器具は,基本的には低位置(HID:0.8~2.5m,FL,LED:0.3~0.4m)取付けによる近接照射である。植物生産の歩留まりを高めるため照度均斉度も重要であり,照明器具の配光は広照形で配光曲線はバットウイング形が効果的とされている。要求照度は10,000~30,000ℓxなど高照度となるため照明機器による植物への輻射熱影響が大きな課題となっている。植物育成用の環境制御装置では栽培室と照明室を熱線カットガラスで離隔し,送風冷却や古くは水フィルターで除熱しているが,設備費やランニングコストの高価格化により新たな除熱装置の採用は難しい状況である。海外では透明水冷ジャケット内に直接ランプを浸した水冷式の照明器具もある。現状の照明設備では反射笠400Wクラスで1~1.2m,700Wクラスで1.5mの取付け高さに設置されているものが多い。また,最近では太陽光併用型において,器具による遮光面積を少なくするため,栽培ベットの側上方よりのサイド照明方式も行われている。その他,植物工場内の周囲環境は温度的(20~25℃)には問題無いが,基本的には養液栽培のため高湿度,結露などの対策が必要となる。蛍光ランプやLEDによる近接照射では肥料成分の蒸発によるスケール付着などがあるため適切なる保守管理が必要である。また,蛍光ランプ式LEDでは一般型蛍光ランプに対して光束が30%減の設計(前方のみ後方はカット)となっており,反射板による反射光利用は僅かとなる。設置も専用ピン・専用器具方式が主流となるため既存器具への取付けについては注意が必要である。なお,具体的な照明設計については光源照明器具の個別配光曲線に由来するため,データを有す照明メーカーに相談されたい。

5.おわりに

植物工場は,我が国の食糧自給率や農業人口の低下,食の安心・安全性,安定供給問題などから作物生産(農学)と工学の融合技術として,果菜類などの種苗生産用(苗工場)やLEDを使用した施設が稼働し始め,国内外より注目を集めている。さらに,第2世代の植物工場として,経済産業省(産総研)指導による遺伝子組換え植物体における薬剤原料や高機能成分生産を目的とした研究では,昨年10月にイチゴによるイヌ歯周病用のインターフェロンが世界で初認可された。2004~2013年の長期研究(臨床174頭2年間を含む)の成果である。今後,利用対象植物の品種拡大・内成分の増加効果など,人工照明利用による新しい展開が期待される。

参考文献

  1. 稲田勝美編著:光と植物生育,養賢堂,pp.8-9 (1984).
  2. K. Inada:Plant Cell Physiol., 17, pp.355-365 (1976).
  3. McCree, K. J.:Agric. Meteorol., 9, pp.191-216 (1972).
  4. 田澤信二:照学誌,Vol.90, No.8B, p.543 (2006).
  5. K. Inada, Y. Yabumoto:Japan. Jour. Crop Sci., 58(4), pp.689-694 (1989).
  6. 高辻ら:植工学誌,7(3), pp.163-165 (1995).
  7. 洞口ら:National Technical Report, 38(6), pp.627-634 (1992).
  8. 田澤信二:農電誌,Vol.66, No.4, pp.22-23 (2013).

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第31号掲載記事に基づいて作成しました。
(2014年4月18日入稿)


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