施設報告

鹿児島放送電波塔ライトアップ

国内営業本部 福岡営業所 技術課
国内営業本部 鹿児島事務所
国内営業本部 営業技術部 LCS

キーワード

鹿児島放送,電波塔,ライトアップ,照明演出,投光器,フルカラーLED

1.はじめに

株式会社鹿児島放送は,1982年10月にテレビ朝日系列の11番目の局として放送を開始した民間テレビ局である(図1,図2)。1985年3月から本社屋上の電波塔に「KKB」(鹿児島放送の略称)のネオンを設置し,2006年12月にロゴマークのシンボルカラーを現在のものに変更するにあたり,ネオンカラーの更新を実施した。その後,2015年11月にネオンを撤去したことにより,電波塔を使い周辺地域への情報発信に利用できないか模索するなかで,電波塔のライトアップを行った。

本稿では,2016年7月に竣工した鹿児島放送電波塔の照明設備について紹介する。

図1 鹿児島放送本社・電波塔(昼景)

図2 鹿児島放送本社・電波塔(夜景)

2.照明設計

2.1 照明コンセプト

本施設のライトアップにあたっては,鹿児島放送様より挙げられた以下のコンセプトに基づいて,照明器具および点灯プログラムの提案を行った。

  1. 天気予報をカラーで表現する。
  2. 点灯スイッチを用いて簡易にカラー表示(天気予報)が行える。
  3. 電波塔に障害が出ない構造・施工とする。
  4. 電波塔が浮かび上がるような照明手法とする。

2.2 演出プログラム

演出は,条件に合った天気予報(晴・曇・雨・降灰)の4つと「KKB」の基調カラー,イベント・祭事用,消灯の合計8パターンのプログラムを作成した(表1)。桜島のある鹿児島では天気予報に降灰情報も含まれており,当演出にも反映されている。なお,ライトアップは20:00~24:00の間で行っている。

表1 点灯プログラム
ボタン 点灯色 点灯カラー 点灯時間
シャイニングオレンジ/黄色(30分毎に1分間点灯) 20:00~24:00
パープル/黄色(30分毎に1分間点灯) 20:00~24:00
オーシャンブルー/黄色(30分毎に1分間点灯) 20:00~24:00
ホワイト/黄色(30分毎に1分間点灯) 20:00~24:00
KKB KKBカラー(オレンジ/ブルー)を5分間隔で点灯 20:00~24:00
予備 クリスマスカラー(赤/緑)を30分間隔で点灯/黄色(30分毎に1分間点灯) 20:00~24:00
予備 薩摩切子の4色(紅/藍/紫/緑)を15分間隔で点灯 20:00~24:00
OFF 消灯(ブラック) 00:00~24:00

2.3 電波塔への考慮

照明器具や配線を電波塔に直接設置するとノイズ障害が起こる恐れがあり,安全を考慮して電波塔から離して設置した。制御線の配線ケーブルは,電波塔と照明器具の両方のノイズ障害を防ぐため,弱電計装ケーブル(KPEV-S)を採用している。

2.4 照明手法

図3 フルカラーLED投光器設置状況

電波塔の高さは約40mで,塔の基礎に近い位置での器具設置であったため,「高出力」で「シャープな配光」の投光器が必要であった。また,トラス構造の4面体であるため鋼材の背面に陰ができないように,投光器は正面配置ではなく四隅に配置した。電波塔の上部に光のピークを持っていき,下部を暗くして中段から上部をライトアップすることで,電波塔を浮かび上がらせる手法とした。

フルカラーLED投光器設置状況(図3)および照明器具配置図(図4)を示す。

図4 照明器具配置図

3.設備概要

3.1 照明器具

投光器はLEDioc FLOOD BLITZ フルカラー(200Wタイプ・狭角配光)を採用している(図5)。フルカラーLEDは,光の三原色RGB(赤・緑・青)の各色を256階調することで1670万色を表現可能(理論値)となり,多彩なカラー表現が可能である。RGBのフルカラーLEDは,最小パッケージによってカラーが混ざり合うことで,器具から出力された光がむらなくきれいに発光できる(図6)。

図5 フルカラーLED投光器

図6 LEDパッケージ(RGB)

3.2 照明演出制御

図7 DMXコントローラ

本施設の照明演出制御はLEDioc Color Controller(DMXコントローラ)を採用している(図7)。

専用ソフトウェアにより作成した照明演出プログラムをDMXコントローラに入力し,フルカラーLED投光器を制御する。プログラムは年間スケジュールを再生することが可能であり,また,外部信号入力(無電圧接点8ポート)により年間スケジュール以外のプログラムを再生することもできる。

3.3 照明点灯状況

本施設は,毎日の天気予報を指定色でライトアップするため,DMXコントローラが収納されたフルカラー操作盤(図8,図9)の前面扉に外部信号入力用のボタンスイッチを配置し,8パターンのプログラムを手動で再生する設備とした。実際の運用方法は,当日に天気予報のプログラムが入力されているボタンスイッチを選択し点灯することで,翌日の天気予報を発信している。

図10に各々の点灯カラーでライトアップされた電波塔の写真を示す。

図8 フルカラー操作盤(前面扉)

図9 フルカラー操作盤(内部)

図10 夜間点灯状況

4.おわりに

フルカラーLED投光器を採用することで,電波塔を利用して日々変化する天気予報を周辺地域に情報発信することが可能となった。今後もフルカラーLEDよる演出・情報発信を提案する機会が増加することを期待する。

最後に,本施設照明設備の完成にあたり施主である株式会社鹿児島放送様をはじめ,ご指導,ご協力いただいたすべての方々に心より御礼申し上げる。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第35号掲載記事に基づいて作成しました。
(2016年10月20日入稿)


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