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創造人×話

変形する前と後、その両方のかたちを楽しんでいただける可変金物の世界を追求しています。

坪島 悠貴さん可変金物作家

「可変ツルッパ」2017年原型制作 素材:銀、真鍮、ガラス
〈写真提供:Gallery花影抄〉

お聞きしているだけで複雑な工程だということだけは理解できるのですが、特に気をつかっていらっしゃる点やこだわりはございますか。

デザインを決める際には、なるべくモチーフとなる生き物に忠実であることが好ましいのですが、変形させることを前提に考えることが必要となるため、それを踏まえた上で、たとえば犬なら犬の特徴を上手く残しながらもデフォルメしなければならず、その辺の塩梅が難しいです。

制作する上でのこだわりとしては、パーツひとつひとつが3Dプリントされた後の製造工程でも無理のない形状であることを重視しています。特に型取りの難しい形状ですと無理に型から取り出そうとして歪みが発生するので、引っ掛かりができないよう非常に気を使います。

型取り、組み立てが容易でありつつ、かたちとしても面白いものを設計するということ自体が私の創作におけるこだわりであるとも言えます。その結果として、悩んだ末に作った原型が無事金属になって業者さんから帰ってきたときにはとてもうれしいですし、設計したものが作品として正しく機能することを確認できた瞬間はそれまでの苦労が報われた気持ちになります。

「可変ツルッパ」制作スケッチ

坪島さんは、中国の玩具メーカーとのコラボ作品も制作されていらっしゃると伺いました。どんな作品なのかお聞かせください。

会社員だったころからのご縁で、業界を牽引するフィギュアメーカーであるグッドスマイルカンパニーさまに独立後も原型制作のお仕事などでお世話になっていて、そちらのご厚意で2019年に上海で行われたWonder Festival に作品を展示させていただく機会に恵まれました。その作品が中国の玩具メーカー52TOYSのプロデューサーの方の目に留まり、MEGABOXというシリーズで製品の制作を担当させていただくことになったのです。

BEASTBOXという箱から動物に変形するトイシリーズから派生したMEGABOXシリーズのコラボアイテムの一つとして、「CHINESE DRAGON青龍」の設計を手掛けました。龍がキューブボックスに変形するというコンセプトを効果的に魅せるため、龍の有機的なかたちからいかにしてキューブ状の四隅の角や平面を作り出すか工夫を凝らしました。自分がデザインした製品が世界の市場で売られ、多くの人々に使ってもらえることはとても光栄で嬉しく思っています。

「可変メメントモス」​2019年原型制作 素材:銀、真鍮
〈写真提供:Gallery花影抄〉

最近の創作活動について、また将来への展望について少しお聞かせください。

「絡繰餌乞雛」2016年原型制作 素材:銀、燐青銅、真鍮、シトリン

小さい頃から変形する玩具が好きで慣れ親しんでいたので、かたちが変わるという概念が自然に自分の中にあり、それが今の創作活動に繋がって作品に生かされていると思っています。可変金物作家として、これまで培ってきた経験や設計技術を基に、誰も見たことのない、まったく新しい楽しみ方ができる作品をつくることを目指しながら、創作活動を続けています。最近はメーカーからの依頼を受けて玩具の原型を設計する仕事やギミック作りに携わる仕事も多くなってきていて、金属作品というかたちだけでなくさまざまな方面から、皆さんに楽しんでいただける“変形する作品”をつくる機会に恵まれています。ですが、「可変金物」の制作は私のライフワークとして、生涯にわたって続けていきたいと思っています。

また、いつかロボットをつくってみたいとも思っていて、まずは簡単な電子工作キットで遊んでみようと道具を揃えたりしています。自動変形のユニットをつくって、スイッチ一つで変形する作品が出来たら面白いかもしれません。私のような玩具好きな人達にとって、それらは単なる子どものおもちゃとして卒業すべきものではなく、人生を豊かにする大切な要素の一つです。工業製品として積み重ねられた技術は一つの文化としても非常に大きな価値を持っています。「可変金物」もそういった文化から影響を受けたものの一つとして、歴史の片隅にでも記憶してもらえたらいいなと密かに願っています。

坪島 悠貴(つぼしま ゆうき)

1987年 東京都に生まれる
2013年 武蔵野美術大学大学院修士課程工芸工業デザインコース修了
在学中は金工を専攻。打ち出しという彫金技法を応用し銅や真鍮、銀を加工した金属造形作品を制作。
現在では彫金技法に加え3D CADや3Dプリンターを利用し活動の幅を広げる。変形機構やカラクリ仕掛けを持つ”可変金物”と名付けた作品シリーズを展開している。
近年は3D CADによる設計技術を生かし玩具のデザインや原型制作にも携わる。

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