創造人×話

人を笑顔に、笑わせることをしたいという想いが役者の道へと繋がりました。

濱津 隆之さん俳優

今回は、俳優の濱津隆之さんをご紹介します。低予算のインディーズ映画ながら、公開されるとじわじわと人気に火が付き、驚異的な大ヒットとなった映画『カメラを止めるな!』の主演男優を務めた濱津さんは、同作が8部門で優秀賞を受賞した第42回日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞され、その後も数々のオファーが殺到し、映画やドラマ、舞台、CMなど様々な分野で活躍されています。

2018年度の流行語大賞にもノミネートされるなど、社会現象となった映画『カメラを止めるな!』に主演され、たちまち時の人となられた濱津さんですが、昔から俳優を志されていらしたのでしょうか。

私は小さな頃から、恥ずかしがり屋の反面、人を笑わせることが好きな子どもでした。人前に立つというより、仲間うちでの笑いでしたね。大学時代は4年間学園祭の運営を担当する学園祭運営局の企画班に所属し、司会進行を担当したりしていたのですが、それがとても楽しくて、「人を笑顔に、笑わせる仕事」に就きたいと思っていました。卒業後はお笑い芸人を目指し1年間お金を貯めて、東京のNSC(吉本総合芸能学院)に入学しました。養成所を卒業してコンビを組んでいたものの、2年程で辞めてしまい、昔から興味があった音楽に関わる道へ進もうと思い、30歳位までDJをしていました。

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール

でも、DJでは趣味より先へ行く力がないということに気づき、芸人時代にコントをやっていて楽しかった気持ちを思い出し、役者の道へと進路を転向したのです。ですから俳優としてのスタートは遅く、漠然と幼い頃から憧れていた「芸能」という世界に気が付いたら 足を踏み入れていたように思います。

お笑い芸人、DJとさまざまな経験をされてきた結果、俳優の道へと進まれたのですね。俳優としてのスタートはどのように踏み出されたのでしょうか?

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール

最初はもちろん、役者としての基本がわかっていなかったこともあり、映像の養成所に入って1年程学び、そこに所属しながらエキストラの仕事をしたりしていました。その時に事務所の先輩で舞台をやっている方がいらして、紹介を受け初めて舞台に出させていただく機会を得たのですが、役者にはテレビとか映画などの他に舞台という世界があるということに気づき、とても新鮮で面白かったことを覚えています。

それからは自分でもオーディションや舞台のワークショップをやっている劇団、役者を募集している劇団を探すようになり、色々な舞台で役をもらって経験を積むことが大切なのでは、と思い当時の事務所を辞めてフリーで活動を続けていました。

舞台で俳優としての活動を続けられていた濱津さんが、『カメラを止めるな!』の主演に抜擢されるまでの経緯をお教えください。

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール

やりたいことをしっかりとやっていきたい、という気持ちで役者を続けていく中で、活動の幅をひろげようと思い、あるオーディションに参加したことが転機となりました。俳優や映画監督の養成学校、ENBUゼミナールが主催するCINEMA PROJECTという企画があり、これは毎年注目の若手監督2人がオーディションで選ばれた俳優たちとワークショップを行いながらそれぞれの脚本を完成させ、オリジナル新作映画を制作して、映画館で一般公開するというプロジェクトなのですが、そのプロジェクト第7弾のオーディションに参加したのです。もともとはその前年の監督さんが知り合いで、好きな方だったので受けようとしたのですが日程が合わずに諦めて、翌年のプロジェクトのオーディションに参加しました。そして、上田慎一郎監督に出会い、『カメラを止めるな!』の主演・日暮隆之役に抜擢していただきました。もし前年に受けていたら翌年はオーディションを受けなかったかもしれませんし、本当に人生は何が起こるかわからないものだと思います。

最初は単館上映で始まったとお聞きしました。

CINEMA PROJECTで完成した映画は、新宿K's cinemaというミニシアターで6日間だけ1日1回のレイトショーで上映されることになっているのですが、SNS上の口コミなどで予想外の好評をいただき、翌年に劇場公開となりました。まさか結果的に全国340館以上に拡大するヒット作になるとは想像もしていませんでしたし、とても嬉しい驚きでした。この作品は海外でもイタリアやアメリカ、ドイツなどの映画祭で上映され、人気を集めて多くの賞を受賞し、2019年9月からはアメリカのニューヨークとロサンゼルスで英題『One Cut of the Dead』として上映を開始するなどブームが続いているようです。アメリカ人からのコメントを見たら「今までで一番面白いゾンビムービーだ!」と書き込まれていたりして、海外の方々にまで評価していただいていることも何だか嬉しかったです。