害虫防除用ランプによるソバの害虫防除と増収技術

2005年1月28日

埼玉県農林総合研究センター
岩崎電気株式会社

黄色照明で害虫を防ぎ、明るさ効果で収穫量も倍増

埼玉県農林総合研究センター(埼玉県熊谷市久保島1372 所長:北岡美明)と岩崎電気株式会社(本社:東京都港区芝3-12-4 代表取締役社長:田﨑昭夫)は、このほど行った埼玉県のソバ栽培の試験において、農業害虫防除用の「エコイエロー(黄色高圧ナトリウムランプ)」 の照明効果でソバ収穫量に1.7~2倍以上の増収効果のあることを実証しました。

健康食品として知られるソバの栽培では数種のヤガ類により、幼虫が集団で花芽を食い荒らす等の害虫被害で安定栽培が阻まれています。埼玉県では難防除害虫とされるヤガ類の一種のハスモンヨトウ※1 が年次によって多発して著しい被害を与えていました。
ソバに対する日本での登録殺虫剤は、ハスモンヨトウを対象に平成15年3月以降数剤が認可されていますが、ソバは約60日間と短期間に生育するため、効率的な防除技術が求められていました。そこで、「エコイエロー」を用いたヤガ類防除の試験を、平成15年度より行い、平成16年度では照明効果による収量への影響解析を行いました。

平成15年度試験では、8月下旬播種(はしゅ:種まき)において、8月30日~11月5日の間(発芽から収穫までの期間)に、夜間「エコイエロー」で照射を行った結果、ハスモンヨトウの発生が抑制できた。しかしながらソバは短日性※2 のため照明の明るさで長日化されてしまい、花芽分化(後に成長して花となる部分の形成)の抑制と収量低下を引き起こす結果となった。

そこで、平成16年度は収穫時までの連続照射ではなく、成育期のみの照射を試行した。8月下旬と9月上旬に播種し、9月13~30日の間(成育前半期)に期間を短縮して「エコイエロー」の照射を行ったところ、約3~7ルクスの低照度(鉛直面照度)で1.7~2倍以上の子実の増収効果が認められた。

この増収効果は、栄養成長(株の成長)時期に、照明による長日効果で花芽の形成が遅れ、葉芽形成が優先されたため、株自体が成長し栄養を蓄える結果となり、その後、消灯したことで短日化され、生殖成長(開花などの受粉に向けた成長)期に変換されたことで、花芽分化して花房数が増加したためと推定している。さらに、害虫防除対策としては10月以降の消灯によって、ハスモンヨトウが産卵したとしても、低温により加害活動が低下するため大きな問題にならないとしている。

埼玉県農林総合研究センターと岩崎電気株式会社では、農作物への農薬に変わる新しい害虫防除方法として「エコイエロー」の研究に努めてきたが、照明による増収効果は画期的なことから転作や水田収穫後などの増収栽培方法として、この技術を普及していきたいとしている。

収量実績値

平成16年度 電照効果による収穫量への影響調査(品種:常陸秋そば)
8月25日播種 1.7倍の収量
播種:8月25日 収穫:11月5日
無照射区:「69kg/10a」(2区平均)
照射区(鉛直面照度4.0~7.1ルクス):「119kg/10a」(2区平均)
9月9日播種 2.3倍の収量
播種:9月9日 収穫:11月16日
無照射区:「58kg/10a」(2区平均)
照射区(鉛直面照度3.5~7.1ルクス):「134kg/10a」(2区平均)

※1 ハスモンヨトウ(鱗翅目ヤガ科)

<被害と虫の特徴>

ハスモンヨトウは野菜・豆・牧草の茎葉を食害する主要な害虫であり、従来は南関東から西日本までの地域で顕著な被害が発生していた。しかし、近年は北関東から東北地域でも大発生して問題化している。

幼虫が集団で葉や果実を食い荒らす。若い幼虫は緑色を帯びているが、しだいに黒褐色になる。
発生は暖地ほど多く、寒冷地に行くにしたがって少なくなる典型的な秋季増加型の南方系の害虫である。
九州以北での自然条件での野外越冬記録は無い。関東南端などの温暖地域での越冬説、或いは海外飛来説などがある。越冬場所としてビニールハウス等の施設も注目されている。

本種は著しい雑食性害虫であり、被害の著しい作物としてレタス、アズキ、サトイモ、ナス、ピーマン、トマト、キャベツ、ハクサイ、ブロッコリー、アスパラガス、ハスなどがあげられる。また、様々な薬剤に対する感受性が低下しており、殺虫剤の効きが悪い難防除害虫となっている。

※2 短日性

秋季に日が短くなることで花芽が分化する性質 ⇔ 長日性:春季 

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