技術資料

生物への光応用技術 光の殺菌・滅菌への利用

光応用事業部 光応用開発部

キーワード

紫外放射,殺菌,空気殺菌,表面殺菌,水殺菌,パルス光殺菌

6.表面殺菌への利用

高出力タイプの低圧水銀ランプが開発されてから,表面殺菌分野への利用が非常に多くなっている。この表面殺菌装置は,装置価格や処理スピードの関係から,UVが装置窓面の照度として,100,50,25mW/cm²になるように入力が異なる装置がラインナップされているので,予算や処理スピードなどから最適な装置を選択できる。

また,UV殺菌は効果の持続性がないので,2次汚染防止のためにできるだけ最終工程に近い場所での処理が有効である。例えば,食品関係では内容物を充填する前の容器を殺菌することに利用されている。現在では,充填装置などに組み込まれたものも多くみられるようになってきている。用途・システムに合わせた応用例を図5に紹介する。

さらに,UV殺菌でも処理時間を必要とするカビなどを1秒以内の短時間で,しかも殺菌レベルも高く,装置も小形にしたい希望に対応したランプが,表1中の高圧水銀ランプとパルス発光キセノンランプである。高圧水銀ランプは低圧水銀ランプにくらべエネルギーの利用効率は悪いが,高出力化が可能である。パルス発光キセノンランプは太陽光のように連続スペクトルが得られ,低圧水銀ランプの高出力タイプに対しても1000倍程度の高照度が得られる特長を持っている。また,処理対象物の温度上昇も少ないという特長もある。用途によりどちらも非常に有効なUV殺菌方法である。キセノンフラッシュランプ搭載の装置は,近年,医薬品の滅菌に利用されているので次に詳細に紹介する。

図5 表面殺菌処理応用例3)

7.パルスドキセノン殺菌装置

キセノンガスを封入した光源をパルス(瞬間的)点灯させて,その光で滅菌するのである。そこで,この装置のことを,ここではパルスドキセノン殺菌装置と呼ぶこととする。

本装置の特長として,

  1. 高レベルの殺菌能力である。
  2. ワーク(処理対象物)に熱を与えない。
  3. 殺菌に有効な紫外線を放射する。
  4. 瞬時点灯,瞬時安定でありシャッター機構が不要である。
  5. ランプは水銀などの金属が入っていないので,環境にやさしい。
  6. 連続処理が可能でインライン化できる。

などがあげられる。

装置は,光源・照射器・電源からなっている。また,医療関係では確実に滅菌に必要な光量が得られているかモニターする必要がある。ただし,その光量は殺菌効果のある波長範囲の光を受光する必要がある。なぜなら,キセノンフラッシュランプは,UVから可視光,赤外線まで発光しているので,UVが減光しても全体を測定してしまうと,その減光量は小さく見積もられ,実際の殺菌効果は落ちているのに,モニターの光量は低下してないということになるためである。

実際には,加熱により容器変形,薬剤の変質があり,加熱滅菌が利用できないプラスチック製バイアル瓶や,輸液バッグ中の薬液の滅菌に利用されている。図6にPE製バイアル瓶中の薬液の滅菌処理で稼動しているパルスドキセノン殺菌装置を紹介する。

図6 パルスドキセノン殺菌/滅菌装置3)

8.おわりに

光の微生物への作用で工業利用されている殺菌・滅菌分野について紹介を行なった。本文中でも述べたが,近年,われわれは微生物による危害を多く受けているので,その危害対策が求められている。しかもその対策は,環境負荷を考えた環境にやさしい処理方法である必要がある。その処理方法の1つに,今回紹介した光による方法が非常に有効であるといえよう。

しかし,光が照射されないと殺菌されない,持続性がないなどの欠点もあるので,今後も特徴を理解した上でのさらなる利用拡大が期待される。

参考文献

  1. 岩崎電気(株):カタログ
  • 注)本稿は,照明学会誌,第91巻,第4号,pp.210-215(2007)に掲載された記事を一部改変して掲載するものである。

この記事は弊社発行「IWASAKI技報」第16号掲載記事に基づいて作成しました。
(2007年4月2日入稿)


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